2017年は観測史上2番目の暑さになることがほぼ確実

 地球全体の気象観測データから、2017年はこれまでの記録の中で2番目に平均気温が高い一年になることが確実視されています。さらに、その変化には単なる「気温の上昇」だけではない、気象の極端化という特徴が明らかになってきています。

 2017年7月17日にアメリカ海洋大気庁(NOAA)が発表した最新のデータによると、2017年の6月は観測史上で3番目に暑い6月だったことが明らかになっています。また、2017年1月からの6カ月間における平均気温を20世紀全体の平均データと比較した際に生じる温度偏差は「セ氏プラス0.9度」となっており、以下のグラフのように、最も暑かった2016年に次いで、2017年は2番目に暑い半年間であったことも明らかにされています。

 また、世界各地の平均気温の状況は以下の図のとおり。色が赤いほど20世紀全体の平均データよりも気温が高かったことを示しているのですが、ほぼ地球全土において気温が平均を上回っていたことがわかります。特に、赤く示されている部分は記録を更新するほどの平均気温に達していたことを示しています。

 2017年は2016年の暑さを超えることはないと考えられていますが、それはエル・ニーニョ現象が発生していないという事実から推測されているとのこと。南米・ペルー沖の東太平洋で海水温が上昇するこの現象は、世界各地で異常気象が発生することとの関連があると考えられているのですが、地球の平均気温にも影響を及ぼす傾向があると見られており、2017年はこの発生が見られないことから、2016年ほどは気温が上昇しないと予測されています。

 とはいえ、長い目で見ると地球の平均気温は明確な上昇を示していることも紛れもない事実といえます。1990年を基準とした時の年間平均気温は以下のようなグラフになり、おおむね右肩上がりで地球が暑くなっている傾向がわかります。


 しかし注目すべきは、単に「地球が暑くなっている」ということでなく、異常気象の発生頻度や規模が増している点にあるとのこと。その一例が、特に北半球で頻発するようになった大雨や、それに起因する洪水により、多くの人が被害を受けています。また、海水温の上昇によりサンゴが死んで白化する「白化現象」が各地で確認されており、世界的に有名なオーストラリアの「グレート・バリア・リーフ」でも2年連続で大規模なサンゴの白化現象が確認されています。

 さらに、南極と北極の氷が減少していることも気候変動に関わりがあると見られています。北極では、冬の時期に氷が発生する規模が小さくなっているほか、南極では総重量1兆トンで九州の半分ほどの大きさがある「ラーセンC棚氷」が南極の棚氷から分離するという出来事があったばかり。これにともない、さらなる棚氷の減少も予測されており、地球の環境は急激な変化の途中であることはほぼ疑いようのない状態であると言えそうです。

(Popular Science―Gigazineより)

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救いは我らに来たれり(BWV9)

 今日は三位一体主日後第6主日です。BACHはライプツィヒの第2年目にコラール・カンタータを集中的に作曲しましたが、完全な年巻を完成できなかったため、後年これを補う作業が行われました。1932年にBWV9が補われ、1732.7.20、ライプツィヒで初演されたのが、このコラール・カンタータです。


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 この日の福音書の章句は「殺すなかれ、人を殺したものは裁きを受ける」という律法の再解釈です。イエスは、自分は律法を廃棄するためではなく、それを満たすために来たと述べ、殺人の禁止を、すべての怒りや争いへの戒めとして解釈し直します。

 この曲はパウル・スペラートゥス作詞の同名コラールを基にしています。


 シギスヴァルト・クイケン指揮、 ラ・プティット・バンド 、鈴木美登里(S)、マグダレナ・コジェナー(MS)、クヌート・ショッホ(テノール)、ヤン・ファン・デア・クラッベン(B)の演奏でお聴きください。





救いは我らに来たれり(BWV9)

1.コラール(合唱)

Es ist das Heil uns kommen her

救いが私たちにもたらされた

von Gnad' und lauter Güte;

恵みとただ慈しみの御心によって。

die Werk' die helfen nimmermehr,

人の行いは何の役にもたたない、

sie mögen nicht behüten;

それは私たちの守りにはならない。

der Glaub' sieht Jesum Christum an,

だが信仰はイエス・キリストを見つめる、

der hat g'nug für uns all getan,

私たちすべてのために十分なことを為してくださった方を、

er ist der Mittler worden.

彼こそが神と人との仲介者となられたのだ。

2.レチタティーボ(バス)

Gott gab uns ein Gesetz, doch waren wir zu schwach,

神は私たちに律法を与えられたが、私たちはあまりに弱く

daß wir es hätten halten können.

それを守ることなど及びも付かなかった。

Wir gingen nur den Sünden nach,

私たちはただ罪の道に従い、

kein Mensch war fromm zu nennen;

正しい者と呼ばれるべき人は一人もいなかった。

der Geist blieb an dem Fleische kleben

霊は肉にへばりついたままで

und wagte nicht zu widerstreben.

罪にあらがおうとさえしなかったのだ。

Wir sollten in Gesetze gehn

私たちは律法の道を歩み

und dort als wie in einem Spiegel sehn,

そこでまるで鏡に映すようにして、

wie unsere Natur unartig sei:

私たちの本性がいかによこしまなものか知るほかになかった。

Und dennoch blieben wir dabei.

それなのに私たちはその罪にとどまるばかりだった。

Aus eigner Kraft war niemand fähig,

自分の力では誰一人として

der Sünden Unart zu verlassen,

罪のよこしまから逃れることはできない、

er mocht’ auch alle Kraft zusammenfassen.

たとえ自分の全ての力を呼び起こしたとしても。

3.アリア(テノール)

Wir waren schon zu tief gesunken,

私たちはもはやあまりにも深く沈み込み、

der Abgrund schluckt uns völlig ein,

深淵が私たちを飲み込もうとしている、

die Tiefe drohte schon den Tod,

奈落はまさに死の恐怖を突きつけ、

und dennoch konnt in solcher Not

そのような窮地にもかかわらず、

uns keine Hand behülflich sein.

私たちにさしのべられる手はどこにもない。

4.レチタティーボ(バス)

Doch mußte das Gesetz erfüllet werden;

けれども律法は成就されなければならない。

deswegen kam das Heil der Erden,

それゆえにこの世の救いが現れた、

des Höchsten Sohn, der hat es selbst erfüllt

いと高き神の子の救いが、彼は律法を自ら成就し

und seines Vaters Zorn gestillt.

そして父なる神の怒りを鎮められた。

Durch sein unschuldig Sterben

彼の罪なき死を通して

ließ er uns Hülf’ erwerben;

私たちに救いを得させてくださった。

wer nun demselben traut,

今や彼を信じ、

wer auf sein Leiden baut,

彼の受難に依り頼むならば、

der gehet nicht verloren.

その人は滅びることがない。

Der Himmel ist vor den erkoren,

神の国はあなたがた選ばれた者の前にある。

der wahren Glauben mit sich bringt

真の信仰を抱き

und fest um Jesu Armen schlingt.

イエスに固くすがりつく者の前に。

5.アリア 二重唱(ソプラノとアルト)

Herr, du siehst statt guter Werke

主よ、あなたは善い行いには目を留めず、

auf des Herzens Glaubensstärke,

その心の信仰の強さに目を留められます

nur den Glauben nimmst du an.

あなたが嘉せられるのはただ信仰のみです。

Nur der Glaube macht gerecht,

ただ信仰だけが人を義とし、

alles andre scheint zu schlecht,

その他の全てのものは、

als daß es uns helfen kann.

私たちを救うためには無益なのです。

6.レチタティーヴォ(バス)

Wenn wir die Sünd’ aus dem Gesetz erkennen,

私たちが律法によって罪に気がつくならば、

so schlägt es das Gewissen nieder;

それによって良心は打ちのめされる。

doch ist das unser Trost zu nennen,

けれども私たちの慰めと言うべきなのは

daß wir im Evangelio

私たちが福音においては

gleich wieder froh

すぐに再び晴れやかに

und freudig werden:

喜びに満ちることだ。

dies, dies stärket unsern Glauben wieder.

まさにこのことが、また私たちの信仰を強めてくれる。

Drauf hoffen wir der Zeit,

このことによって私たちは

die Gottes Gütigkeit

神が慈愛をもって私たちに

uns zugesaget hat,

約束された時を待ち望む。

doch aber auch aus weisem Rat

しかしまた神は深い配慮から

die Stunde uns verschwiegen.

その時を私たちに隠された。

Jedoch, wir lassen uns begnügen;

けれども、私たちはそのことに満足する。

er weiß es, wenn es nötig ist,

神はそれが必要な時を知り給い、

und brauchet keine List

そして私たちに対しては何の策略も

an uns: Wir dürfen auf ihn bauen

必要とされないのだから。私たちは神を信頼し

und ihm allein vertrauen.

ただ神のみに依り頼めば良いのだ。

7.コラール(合唱)

Ob sich's anließ, als wollt' er nicht,

たとえ神には人を救うお気持ちなどなさそうに思えても、

laß dich es nicht erschrecken,

そのことにおびえるな。

denn wo er ist am besten mit,

というのは、神が最も近く共におられるときは

da will er's nicht entdecken;

神はそのことを明かそうとされないのだから。

sein Wort laß dir gewisser sein,

神の言葉にさらに確信を持ち、

und ob dein Herz spräch lauter Nein,

そしてもしあなたの心がただただ「否」と言うとしても

so lass doch dir nicht grauen.

それでもなお恐れるな。

                   対訳:葛の葉


マタイによる福音書 第5章 20-26

言っておくが、あなたがたの義が律法学者やファリサイ派の人々の義にまさっていなければ、あなたがたは決して天の国に入ることができない。

「あなたがたも聞いているとおり、昔の人は『殺すな。人を殺した者は裁きを受ける』と命じられている。

しかし、私は言っておく。兄弟に腹を立てる者はだれでも裁きを受ける。兄弟に『ばか』と言う者は、最高法院に引き渡され、『愚か者』と言う者は、火の地獄に投げ込まれる。

だから、あなたが祭壇に供え物を捧げようとし、兄弟が自分に反感を持っているのをそこで思い出したなら、

その供え物を祭壇の前に置き、まず行って兄弟と仲直りをし、それから帰って来て、供え物を捧げなさい。

あなたを訴える人と一緒に道を行く場合途中で早く和解しなさい。さもないと、その人はあなたを裁判官に引き渡し、裁判官は下役に引き渡し、あなたは牢に投げ込まれるに違いない。

はっきり言っておく。最後の一クァドランスを返すまで、決してそこから出ることはできない。」

父親が高齢であるほど息子はギークになる?

 人の性格を決定づける要因には先天性なものと、生活環境などの後天的な要因が作用していることが知られていますが、新たに発表された研究結果からは父親の年齢が高いほど息子は「ギーク」寄りな人物になるということが浮き彫りになっています。



 ロンドンにあるキングス・カレッジ・ロンドンとニューヨークのマウント・シナイ・アイカーン医科大学Seaver自閉症研究治療センターによる研究チームは、イギリスのTwins Early Development Study(TEDS:双生児の初期発達に関する研究)によって得られたイギリスに住む1万5000人の双子の研究結果から、行動面と認知面におけるデータを取得して分析を行いました。

 TEDSの研究では、双子が12歳に達した際に「非言語IQ」や関心のあることに対する強い集中、社会的孤立の度合いなどを調べるという「ギーク的」な内容に関するオンライン調査を実施しています。同時に、両親に対しては双子がそれぞれ相手からどのように受け止められているか、また、関心のあることに対して多くの時間を割く傾向があるかについての調査を行っています。そして研究チームはこれらのデータをもとに、対象となる子供たちの「ギーク指数」を算出しました。

 その結果、年齢の高い父親を持つ子どもたちは総じて高いギーク指数を示すことが明らかになっています。この結果は両親の社会的、経済的状況や、技能的状況、雇用環境などを踏まえたうえにおいても同じ内容が得られたとのこと。ちなみに、母親の年齢との関連性は特に認められなかった模様です。

 また、これら「ギーク」な子どもたちは、学校で行われる試験で良い結果を残す傾向があることもわかっています。さらに、成長すると、科学・技術・工学・数学のいわゆる「STEM (Science/Technology/Engneering/Mathematics)」の呼ばれる分野で良い成績を残していたことが判明しています。

 この結果について、キングス・カレッジ・ロンドンのMagdalena Janecka博士は「年配の父親を持つことによる恩恵が存在していることを示しています。年齢の高い両親を持つことに関してはマイナス面の影響がこれまでにもわかっていましたが、その一方で教育面、職業面において良い見込みがあることも示されています」と語っています。

 Janecka博士が述べているように、年配の両親を持つ子どもは自閉症や統合失調症など不利な結果(adverse outcomes)に至るリスクの存在が指摘されてきましたが、今回の研究結果は逆に利点と呼べる効果が現れていることも浮き彫りになっています。

 今回の研究では、家族の環境に対する直接的な調査は実施されていませんが、父親の年齢が高いことで、キャリア面でもより高いポジションに位置し、収入が比較的高くなるためにより良い教育を受けることができる、などの要因があるものとみられています。また、両親の年齢の高さと自閉症、統合失調症の症状と「ギーク」な子どもたちが典型的に持つ性格との関係性も暗に示されているとのこと。

 まだ仮説の段階ですが、研究チームはギークさと自閉症に関する遺伝子には共通する部分が存在しているとみており、これらの遺伝子は年齢を重ねた父親において出現する傾向にあると考えているとのこと。Janecka博士は「子どもたちがこれらの遺伝子を持って生まれたとき、彼らは学校で良い成績を収める可能性があります。しかし、これらの遺伝子の影響が強くなると、そしてリスク要因に作用するファクターが存在すると、自閉症の発症につながる可能性があります。これは、自閉症に関する遺伝子と高いIQに関する遺伝子は関連しているという近年の研究結果によって支持されるものです」と語っています。

(Gigazineより)

男性ホルモンが減ると、うつ病になりやすい!

 ここ数年、男性ホルモンに対する関心が高まっています。男性ホルモンと聞くと“下半身”の話を連想する方が多いかもしれませんが、それだけでなく、男性ホルモンにはさまざまな働きがあることが分かってきました。

 例えば、全身の筋肉を増やし、体脂肪を減らす作用もあります。男性ホルモンが減るとメタボリックシンドロームになるリスクが高くなり、寿命が短くなることも分かっています。さらに、男性ホルモンの「精神面」への影響も近年の研究で明らかになってきました。

男性ホルモンが作用する体の部位

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 主要な男性ホルモンであるテストステロンは社会性のホルモンでもあり、男性ホルモンが多い人は精力的で元気が良くなり、外に出て、積極的に他人とかかわろうという意欲を起こさせます。また、リスクを恐れない冒険心も強くなるといいます。これに対して、家にひきこもって人と会わない生活をしている人は、男性ホルモンの分泌が少なくなることが知られています。


男性更年期外来患者の47.8%がうつ病だったという報告も

 テストステロンの数値が極端に低くなった状態を男性更年期障害やLOH症候群(加齢男性性腺機能低下症候群)と呼びますが、その「診療の手引き」には主な症状として「抑うつ」が挙げられています。2015年の米国内分泌学会の第97回年次会議(ENDO 2015)でも、「男性ホルモンとうつ」の関係が報告されました。テストステロンが標準よりも低い20~77歳の男性200人のうち、実に56%にうつ症状が見られ、25%は抗うつ薬を使っていたそうです。

 日本でも男性更年期外来の受診患者のうち47.8%がうつ病だったという報告があります。男性更年では80.0%にうつ症状が見られました。

 テストステロンが低くなると、なぜうつ病になりやすくなるのでしょうか。まだ正確なメカニズムは分かっていませんが、もともとテストステロンは「外に出て人と会おう」という意欲を高める社会性のホルモン。減ると行動するのがおっくうになり、人とかかわりたくなくなるのは納得できます。

 また、脳の扁桃体(へんとうたい)が関係しているという説もあります。扁桃体とは感情の処理や記憶を担う部位で、普段思い出したくない恐怖の記憶がため込まれている部分。テストステロンはこれにフタをする働きがあり、テストステロンが少なくなるとフタがゆるみ、抑えられていた恐怖の記憶がよみがえるため、不安感や恐怖感が強くなるというわけです。

 逆にうつ病の患者にテストステロンを投与すると改善する人が多い、という研究もあります。最近、やる気がしない、人と会いたくなくなった、という人は男性ホルモンが減っているのかもしれません。


人と会って、ストレスを解消しよう

 このほか、最近では、男性ホルモンと認知機能の関係も注目されています。テストステロンの投与によって、認知症が改善したという報告は国内にも海外にもあります。

 テストステロンの分泌量は、ちょっとしたことで大きく変わります。勝負に勝つと上がり、負けると下がります。また、運動で筋肉に刺激を与えると分泌が高まることも知られています(ただし、マラソンのようなハードなスポーツをすると逆に下がります)。睡眠、食事、運動も大切ですが、人と会うことも効果があります。テストステロンは社会性のホルモンなので、人と会うだけでも分泌が増えるといいます。

 テストステロンを下げるのはストレスです。規則正しい生活を心がけるとともに、オフタイムは積極的に友人と会い、上手にストレスを解消しましょう。

(日経Goodayより)

「全固体蓄電池」2年後に実用化へ

 携帯機器や電気自動車などに使う次世代蓄電池の開発が加速しています。現在のリチウムイオン電池より安全で高性能な新技術の研究が活発化しており、本命視される「全固体電池」は2年後にも実用化される見通しです。

 小型で高出力のリチウムイオン電池は1991年、ソニーが世界で初めて発売。充電して繰り返し使える蓄電池に革命を起こし、スマートフォンや電気自動車を実現させるなど社会を大きく変えました。課題は安全性と性能の向上です。可燃性の電解液を使うため液漏れや発熱などに伴い発火する恐れがあり、昨年は韓国サムスン電子製のスマホで発火事故が多発しました。性能面でも、蓄える電気の量を増やすことなどが求められています。


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延びる走行距離

 そこで注目されているのが電解液を固体に変えた全固体電池です。固体は電気を運ぶリチウムイオンの移動が困難とされてきましたが、東京工業大の菅野了次教授が昨年、新たな素材を開発して解決しました。硫黄とリチウムなどの化合物が格子状に並ぶ結晶構造が特徴で、その隙間をリチウムイオンが従来の2倍の超高速で動きます。蓄電量は2倍で充電も速く、液漏れの心配もなく100度の高温にも耐えるといいます。リチウムイオン電池は、電解液を正極側と負極側に隔てるセパレーターという部品を使っているますが、これが不要になり、構造が単純で作りやすいのも利点です。

 電気自動車が1回の充電で走行できる距離は、2020年ごろに350キロで頭打ちになるとみられます。ガソリン車の給油1回の走行距離500キロに劣りますが、全固体電池なら距離を大幅に延ばせます。ロボットや小型無人機ドローンに使えば行動範囲が拡大。風力発電などの電力を貯蔵する施設も大型化できそうです。ただ、硫黄を含むため、空気中の水分と反応し有毒な硫化水素が発生する可能性があり、密閉性の強化や生じたガスを吸着するなどの対策が必要になります。


空気も電極に

 次世代の候補はまだあります。リチウムイオン電池は正極にリチウム化合物、負極に炭素を使うのに対し、正極に硫黄、負極に金属リチウムを使うのが「リチウム硫黄電池」です。硫黄は安価なため大型化が容易で、家庭用の電力貯蔵への利用が期待されます。

 放電時に硫黄が電解液に溶け耐久性が低いのが欠でしたが、横浜国立大の渡辺正義教授が11年、硫黄が溶けない電解液を開発。寿命を10倍に延ばすことに成功しました。

 空気を利用する「リチウム空気電池」もあります。正極の炭素材料に多くの隙間があり、ここに含まれる空気中の酸素とリチウムイオンが放電時に結び付きます。酸素は無尽蔵に供給されるため、蓄電量はリチウムイオン電池の3~5倍に達し、飛躍的に長時間の利用が可能になります。ただ、負極に使う金属リチウムは空気中の水分に触れると発火する恐れがあり、表面に水分を通さない被膜を作るなどの解決方法を研究中です。

 科学技術振興機構で次世代蓄電池の開発プロジェクトを統括する首都大学東京の金村聖志教授は、実用化の時期を全固体電池が19年、リチウム硫黄は20年、リチウム空気は23年ごろとみています。


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「脱リチウム」

 さらに未来の蓄電池は別の金属を使うことになりそうです。リチウムは高価な希少金属で、日本は輸入に頼っているため、元素戦略上のリスクが大きいからです。

 蓄電池は充放電を繰り返すと、通電を阻害する物質が電極に付着して性能が落ちます。これを防ぐためセパレーターを使いますが、リチウム以外の金属では効果が不十分でした。

 金村教授は08年、微細な穴が無数に開いた新型セパレーターを開発。阻害物質が移動して付着するのを防ぎ、マグネシウムやカリウム、ナトリウムなどのありふれた金属で蓄電池を作る道を開きました。

 蓄電池の世界市場は20年に20兆円に達するといいます。次世代開発は日本が先行していますが、米国や中国も強化しており、特に米国は人工知能(AI)を駆使した材料開発に乗り出しました。金村教授は「日本も経験と勘だけでなくAIの活用を急ぐ必要がある」と危機感を募らせています。

(産経ニュース クローズアップ科学より)