男性ホルモンが減ると、うつ病になりやすい!

 ここ数年、男性ホルモンに対する関心が高まっています。男性ホルモンと聞くと“下半身”の話を連想する方が多いかもしれませんが、それだけでなく、男性ホルモンにはさまざまな働きがあることが分かってきました。

 例えば、全身の筋肉を増やし、体脂肪を減らす作用もあります。男性ホルモンが減るとメタボリックシンドロームになるリスクが高くなり、寿命が短くなることも分かっています。さらに、男性ホルモンの「精神面」への影響も近年の研究で明らかになってきました。

男性ホルモンが作用する体の部位

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 主要な男性ホルモンであるテストステロンは社会性のホルモンでもあり、男性ホルモンが多い人は精力的で元気が良くなり、外に出て、積極的に他人とかかわろうという意欲を起こさせます。また、リスクを恐れない冒険心も強くなるといいます。これに対して、家にひきこもって人と会わない生活をしている人は、男性ホルモンの分泌が少なくなることが知られています。


男性更年期外来患者の47.8%がうつ病だったという報告も

 テストステロンの数値が極端に低くなった状態を男性更年期障害やLOH症候群(加齢男性性腺機能低下症候群)と呼びますが、その「診療の手引き」には主な症状として「抑うつ」が挙げられています。2015年の米国内分泌学会の第97回年次会議(ENDO 2015)でも、「男性ホルモンとうつ」の関係が報告されました。テストステロンが標準よりも低い20~77歳の男性200人のうち、実に56%にうつ症状が見られ、25%は抗うつ薬を使っていたそうです。

 日本でも男性更年期外来の受診患者のうち47.8%がうつ病だったという報告があります。男性更年では80.0%にうつ症状が見られました。

 テストステロンが低くなると、なぜうつ病になりやすくなるのでしょうか。まだ正確なメカニズムは分かっていませんが、もともとテストステロンは「外に出て人と会おう」という意欲を高める社会性のホルモン。減ると行動するのがおっくうになり、人とかかわりたくなくなるのは納得できます。

 また、脳の扁桃体(へんとうたい)が関係しているという説もあります。扁桃体とは感情の処理や記憶を担う部位で、普段思い出したくない恐怖の記憶がため込まれている部分。テストステロンはこれにフタをする働きがあり、テストステロンが少なくなるとフタがゆるみ、抑えられていた恐怖の記憶がよみがえるため、不安感や恐怖感が強くなるというわけです。

 逆にうつ病の患者にテストステロンを投与すると改善する人が多い、という研究もあります。最近、やる気がしない、人と会いたくなくなった、という人は男性ホルモンが減っているのかもしれません。


人と会って、ストレスを解消しよう

 このほか、最近では、男性ホルモンと認知機能の関係も注目されています。テストステロンの投与によって、認知症が改善したという報告は国内にも海外にもあります。

 テストステロンの分泌量は、ちょっとしたことで大きく変わります。勝負に勝つと上がり、負けると下がります。また、運動で筋肉に刺激を与えると分泌が高まることも知られています(ただし、マラソンのようなハードなスポーツをすると逆に下がります)。睡眠、食事、運動も大切ですが、人と会うことも効果があります。テストステロンは社会性のホルモンなので、人と会うだけでも分泌が増えるといいます。

 テストステロンを下げるのはストレスです。規則正しい生活を心がけるとともに、オフタイムは積極的に友人と会い、上手にストレスを解消しましょう。

(日経Goodayより)

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「全固体蓄電池」2年後に実用化へ

 携帯機器や電気自動車などに使う次世代蓄電池の開発が加速しています。現在のリチウムイオン電池より安全で高性能な新技術の研究が活発化しており、本命視される「全固体電池」は2年後にも実用化される見通しです。

 小型で高出力のリチウムイオン電池は1991年、ソニーが世界で初めて発売。充電して繰り返し使える蓄電池に革命を起こし、スマートフォンや電気自動車を実現させるなど社会を大きく変えました。課題は安全性と性能の向上です。可燃性の電解液を使うため液漏れや発熱などに伴い発火する恐れがあり、昨年は韓国サムスン電子製のスマホで発火事故が多発しました。性能面でも、蓄える電気の量を増やすことなどが求められています。


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延びる走行距離

 そこで注目されているのが電解液を固体に変えた全固体電池です。固体は電気を運ぶリチウムイオンの移動が困難とされてきましたが、東京工業大の菅野了次教授が昨年、新たな素材を開発して解決しました。硫黄とリチウムなどの化合物が格子状に並ぶ結晶構造が特徴で、その隙間をリチウムイオンが従来の2倍の超高速で動きます。蓄電量は2倍で充電も速く、液漏れの心配もなく100度の高温にも耐えるといいます。リチウムイオン電池は、電解液を正極側と負極側に隔てるセパレーターという部品を使っているますが、これが不要になり、構造が単純で作りやすいのも利点です。

 電気自動車が1回の充電で走行できる距離は、2020年ごろに350キロで頭打ちになるとみられます。ガソリン車の給油1回の走行距離500キロに劣りますが、全固体電池なら距離を大幅に延ばせます。ロボットや小型無人機ドローンに使えば行動範囲が拡大。風力発電などの電力を貯蔵する施設も大型化できそうです。ただ、硫黄を含むため、空気中の水分と反応し有毒な硫化水素が発生する可能性があり、密閉性の強化や生じたガスを吸着するなどの対策が必要になります。


空気も電極に

 次世代の候補はまだあります。リチウムイオン電池は正極にリチウム化合物、負極に炭素を使うのに対し、正極に硫黄、負極に金属リチウムを使うのが「リチウム硫黄電池」です。硫黄は安価なため大型化が容易で、家庭用の電力貯蔵への利用が期待されます。

 放電時に硫黄が電解液に溶け耐久性が低いのが欠でしたが、横浜国立大の渡辺正義教授が11年、硫黄が溶けない電解液を開発。寿命を10倍に延ばすことに成功しました。

 空気を利用する「リチウム空気電池」もあります。正極の炭素材料に多くの隙間があり、ここに含まれる空気中の酸素とリチウムイオンが放電時に結び付きます。酸素は無尽蔵に供給されるため、蓄電量はリチウムイオン電池の3~5倍に達し、飛躍的に長時間の利用が可能になります。ただ、負極に使う金属リチウムは空気中の水分に触れると発火する恐れがあり、表面に水分を通さない被膜を作るなどの解決方法を研究中です。

 科学技術振興機構で次世代蓄電池の開発プロジェクトを統括する首都大学東京の金村聖志教授は、実用化の時期を全固体電池が19年、リチウム硫黄は20年、リチウム空気は23年ごろとみています。


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「脱リチウム」

 さらに未来の蓄電池は別の金属を使うことになりそうです。リチウムは高価な希少金属で、日本は輸入に頼っているため、元素戦略上のリスクが大きいからです。

 蓄電池は充放電を繰り返すと、通電を阻害する物質が電極に付着して性能が落ちます。これを防ぐためセパレーターを使いますが、リチウム以外の金属では効果が不十分でした。

 金村教授は08年、微細な穴が無数に開いた新型セパレーターを開発。阻害物質が移動して付着するのを防ぎ、マグネシウムやカリウム、ナトリウムなどのありふれた金属で蓄電池を作る道を開きました。

 蓄電池の世界市場は20年に20兆円に達するといいます。次世代開発は日本が先行していますが、米国や中国も強化しており、特に米国は人工知能(AI)を駆使した材料開発に乗り出しました。金村教授は「日本も経験と勘だけでなくAIの活用を急ぐ必要がある」と危機感を募らせています。

(産経ニュース クローズアップ科学より)

大量飲酒が<命の回数券>を減らす!

誕生には15000だが30歳を過ぎると6000にまで減る「命の回数券」

 染色体の末端に尻尾のごとく付いている蛋白質のキャップのようなものが「テロメア」です。ところがこのオマケ的な末端構造が別名「命の回数券」と呼ばれるほど重要な存在で、わたしたちの「老化」と「全般的な健康」の指標とさえされています。

 テロメアは、細胞が分裂する毎に、少しづつ減ってゆく――平たくいえば、加齢に伴って短くなってゆくわけで、その正体は「塩基」と呼ばれる箇所。誕生時の長さ(=延期数)は1万5000あるのに、30歳を過ぎると6000に半減するといいます。

 人生の年輪を重ねるに伴い、性格が丸くなるのはいいことです。しかし、加齢に伴ってテロメアが徐々に失われ(=塩基数が減少し)、そのキャップ状が短くなるに従って染色体は保護機能を失い、分裂の安定性を損なうために細胞が「老化」します。そうなれば体全体の老化へと悪循環が始まるわけです。

アルコール依存症患者はテロメアがより短縮傾向に

 米コロラド州のデンバーで6月に開催された「アルコール依存症研究学会」で、神戸大学大学院医学研究科の山木愛久氏らが耳目を集めるテロメア関連の報告を行ないました。大量飲酒をくり返していると細胞の老化がより進み、心疾患や糖尿病、がんや認知症など「加齢に関連する健康問題のリスク」が高まる可能性が示唆されたのです。

 山木氏ら研究陣は、41~85歳のアルコール依存症患者134人と、同年齢幅の非アルコール依存症の被験者121人の協力を得て、全員のDNEサンプル(検体)を採取して比較検証を行ないました。その結果、アルコール依存症患者は、テロメアがより短縮傾向にあることが明らかになりました。学会発表された山木氏らの研究成果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは予備的なものとみなされます。

 「今回の研究を通して、アルコール依存症患者ではテロメアの長さがより短縮していることがわかった。これは大量飲酒が細胞レベルで生物的な老化を引き起こすことを示唆している」(山木氏)


NHKクローズアップ現代でも特集され話題に

 この学会発表と相前後して、NHKクローズアップ現代(5月16日放送分)でも『細胞から若返る秘策~生命の不思議〝テロメア〟健康長寿はのばせる!』という特集が放送され話題を呼びました。

 番組では「長寿研究」の第一人者にして「ノーベル賞」受賞者、近ごろ世界中のテロメア研究の集大成を一冊に編んだエリザベス・ブラックバーン博士が取材に応じ、「健康寿命はのばせる」という現時点での結論を語っていました。

 他にも、広島大学大学院の田原栄俊教授の協力を得て、アラフィフ男女10人の血液検証から「テロメアの長さ」に個人差がある点を比較紹介。

 米国の最新研究では「テロメアを短くするもの」の代表格として「心的ストレス」の影響が判明しており、若くして「親の介護」に明け暮れる人の例証などが紹介されていました。

 どうやら人一倍の心配性や、とかく悲観的な考えをするタイプの人も、その心的ストレスからテロメアを長さを短くしがち(=遺伝子変異が起きやすい=ガンに変異しやすい環境)だといいます。

 あるいはテロメアの短さが脳の萎縮、とりわけ記憶を司る海馬の萎縮を顕著にする傾向も示唆されており、認知症のリスク説を裏付けます。

 となれば、あくまでも陽気な美酒三昧でついつい毎夜呑み過ぎてしまうという向きはまだ、いいとしよう。問題は他人様にいえない悩み事を独りで抱え込み、いつも鬱々としながら深酒をやめられないような人々のテロメア事情だろう。

 世の酒飲みは全員、前出の山木氏が報告の最後を締めくくった、次の言葉を肝に命じるべきかもしれなません。

 「一般の人にとっても、大量飲酒はテロメアを短縮させるのだという事実を心に留めておくことが、健康に生きてゆくための助けになるだろう」

(Health Pressより)

強毒「ヒアリ」が日本上陸、ショック死に注意!

 強い毒を持ち攻撃性が高い外来種の「ヒアリ」が遂に日本上陸しました。「最凶の外来生物」「殺人アリ」などという衝撃的な言葉とともに、小さな侵入者のニュースが連日メディアに踊っています。


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1カ月強の間に全国で次々と

 先月に兵庫県尼崎市から始まった一連のヒアリ発見の経緯は次の通りです。

●6月9日:兵庫県尼崎市

 5月26日に中国・広州から神戸港に運ばれたコンテナの積み荷を取り出す際に、内部でアリの集団が見つかる。コンテナは神戸市内に移されて消毒。6月9日にヒアリと確認された。

●6月18日:兵庫県神戸市

 ヒアリのいたコンテナが保管されていた場所を調べたところ、舗装面の亀裂などで約100匹のヒアリを発見し緊急駆除。

●6月30日:愛知県弥富市

 名古屋港のコンテナ置き場で外来種と見られるアリ7匹が見つかり、殺虫剤で処分。港の管理会社から鑑定を依頼された環境省がヒアリと確認した。

●7月3日:大阪府大阪市

 6月30日に大阪港のコンテナ周辺の土で外来種のアリが見つかり、ヒアリとアカカミアリと判明。さらに同じ場所で50体のヒアリとみられる死骸が回収され、その中には女王アリ1個体が含まれていた。

●7月7日:東京都品川区

 6日に東京港の大井ふ頭に陸揚げされたコンテナからヒアリ1匹を発見。さらに環境省が緊急調査により100匹以上見つかったと発表した。卵を産む女王アリは今のところ見つかっておらず、全て殺虫剤で駆除。


「女王アリ」の初確認で日本に定着の恐れが拡大

 関係者に特に危機感を与えたのは、大阪港で「女王アリ」の死骸が見つかったことです。ヒアリは非常に繁殖力が強く、女王アリは1日に2000~3000個の卵を産むことで知られています。今回、見つかった個体のほかにも女王アリがすでに浸入している可能性もあり、専門家は「日本にヒアリが定着する可能性が高まった」と指摘しています。

 数万匹が棲息するコロニーが形成されるのにかかる期間は、半年から1年。そのうち新たな女王アリや雄アリが誕生すれば、港湾地域の外にも生息エリアが広がる恐れがあります。


総額1億7000万ドルもの費用をかけても撲滅は不可能

 南米原産のヒアリは、1930年代にアメリカのアラバマ州に浸入し、全域へ拡散。生息域は年に約10kmのペースで広がっていったと推測されています。

 アメリカでヒアリが繁殖したのは、南米にいた天敵がいなかったことも一因だといいます。同国では1950〜1980年代にかけて、総額1億7000万ドルもの費用をかけて殺蟻剤散布などの対策を講じましたが、ヒアリを撲滅することはできませんでした。結局アメリカでは、原産地よりも高密度のヒアリが生息するようになり、それが船の積み荷などに紛れて拡散。他国への侵入と定着を許すまでになってしまいました。

 今世紀に入ると、オーストラリア、ニュージーランド、台湾、中国、香港などでも相次いで確認されています。ニュージーランドでは、侵入後のいち速い対応で根絶に成功しましたが、巣の発見から根絶の確認までは約2年かかりました。

 日本はヒアリ保有国と活発に貿易をしており、ヒアリが輸入されるリスクに常にさらされてきました。周辺諸国への分布の拡大を考えれば、日本への侵入は時間の問題だったといえます。


危険なのはアナフィラキシーショック

 ヒアリが恐れられる理由は「どう猛」さと「毒性」、そして恐るべき「タフさ」です。ヒアリは「アルカロイド毒」を持ち、尻尾から突き出た針に刺されると激痛が走って患部が膿を持ち赤く腫れ上がります。1匹が1回に何度も指すので、同じ場所にいくつもの膿疱ができることもあります。

 通常は刺されても1週間ほどで回復しますが、まれに強いアレルギー反応のアナフィラキシーショックを起こし、最悪死に至る場合もあります。東京都環境局によると、北米でヒアリに刺される人は年間1500万人にのぼり、100人以上が死亡しているとのことです。

 環境省では、アリに刺された場合はまずは安静(20~30分程度)にし、動悸やめまいなどの症状が出て容体が急に変化することがあれば、最寄りの病院を受診することを呼びかけています。


電気に引きつけられる習性があるため漏電による火災などの被害が多発

 人的被害ばかりではありません。ヒアリは昆虫だけでなく植物も食べるため、畑の作物や果樹などの被害も心配です。さらに小動物を襲う習性もあり、ニワトリやウシなどの家畜の仔も危険にさらされます。

 さらに電気に引きつけられる習性があるため、アメリカでは漏電による火災や信号機故障などの被害が多発。さまざまなヒアリによる経済損失は年間で50〜60億ドルにも及ぶとされます。

 やっかいなのは、ヒアリは暗い森や山の中よりも、日当たりの良い開けた場所を好んでコロニーを作ることです。舗装道路脇や公園などの都市環境に適応してしまうため、いちど定着を許してしまえば、日本人の多くはヒアリの隣人として暮らさなければなりません。

 定着して繁殖が始まれば、駆除が難しいヒアリ。環境省などは侵入を水際で食い止めるべく、すでに調査済みの7港を含め、中国・広州市の南沙港からコンテナの定期輸送がある22港湾でも調査を進める方針だといいます。


決して死亡率は高くない。エスカレートした過剰反応は避けよう

 とはいえ私たちまで今から過剰に怖がる必要はないといいます。刺されて死亡した例があるとはいえ、単純に考えて北米での15万人に1人(0.001%以下)という死亡率は極めて低いものです。

 ちなみに日本でスズメバチに刺されて死亡する人は年間20名ほどいます。スズメバチに刺されると、大人の数%がアナフィラキシーショックを起こすと言われています。それと比較すれば危険度は低いといえます。

 アメリカでは、「ヒアリに対抗する在来アリの密度が高ければ、ヒアリがコロニーを定着させる率が下がる」という報告があります。味方になってくれる在来アリを駆逐したり、身近な自然を観察したりすることをやめれば、それが結果的にヒアリの浸入を許すことになると思われます。

 関係機関による監視の徹底とともに、私たちも冷静に足元に目を配って定着を阻止しましょう。まずはアリ見つけてもむやみに殺したり刺激したりしないこと。万一ヒアリの疑いがあれば生きている個体には触らず、自治体に連絡しましょう。ヒアリの浸入が心配なら正しい情報を集め、知識をつけたうえで「正しく恐れる」ことが大切です。

(Health Pressより)

究極の癒やし効果と称された「432Hz」音楽にまつわる9つの嘘と真実

 432Hzは究極の癒やしを得られる魔法の数字だといいます。これは宇宙の自然な周波数で、自然治癒力がアップし、音楽を一層魅力的なものにするとして話題となりました。 A(ラ)の音を一般的な440Hz(一般的な調律の際の音高の標準)から若干低めるだけで、宇宙の神秘を手にできるとまことしやかに囁かれています。

 とりあえずは440HZと432HZを先入観なしに聞き比べてみましょう。




1. チベット・ボウルやピタゴラス・モノコードなどの古代の楽器は432Hzを基準としていた

 Hzは1930年代に考案され、それ以前は”サイクル・パー・セカンド”と呼ばれ、正確に計測できるようになったのは、フェリックス・サヴァールがサヴァールの車輪を、ヨハン・シャイブラーがトノメーターを発明した1834年のことです。また、その測定が試みられるようになったのは16世紀に入ってからのことです。したがって古代の楽器が意図的に432Hzを選んで調律されたとは考えにくい。


2. ピタゴラス音律は432Hzだった

 ピタゴラス音律は比率に基づいており、絶対的というよりは基準ピッチに対して相対的なものです。ピタゴラスがHzを知っていたはずはありません。

 Cが1ならばAは27/16(すわなわち432/256)で、確かに432はCとAの比率の倍数ですが、これはどんな基本周波数にも当てはめることができ、特定のHzとは関係がありません。

 ピタゴラス音律は完全五度に基づきます。しかし五度を循環させても、どれかを半音下げない限りは循環が完成することはありません。

 つまりピタゴラス音律は各オクターブに一貫性を持たせるために、それぞれの調律を下げなければならない。こうすると平均律が均等でなくなり、複雑なハーモニーを奏でられなくなります。これがピタゴラス音律が現在利用されなくなった理由です。


3. モーツァルトはすべての楽曲に432Hzを用いた

 モーツァルトが実際に使用したという音を知る唯一の手がかりは、1780年の音叉で、これは21.6Hzでした。この音叉は当代一のピアノ職人ヨハン・アンドレアス・シュタインが使用してた音叉の音です。彼のピアノはモーツァルト以外にも、ハイドンやベートーベンも用いていました。したがって、彼らはA = 421.6Hzを使用してた可能性が高い。

 それより30年前、イングランドでヘンデルが使用していた音叉は422.5Hzで、モーツァルトのものに近い。が、432Hzとはかなり違います。


4. ヴェルディはすべての楽曲に432Hzを用いた

 ヴェルディは生涯を通じていくつかの調律を用いました。当時、オーケストラに華やかさを与えるためにピッチ基準がインフレ状態でした。こうした状況について、彼はオペラ歌手が高音を歌えなくなるとして懸念していました。

 ヴェルディは自身が作曲したレクイエムに435Hz(1859年当時、フランスの標準調子)を用いるよう要請しましたが、後年になって432Hzが望ましい旨をほのめかしています。そういった意味では、ヴェルディは、432Hzに言及した唯一の作曲家です。


5. かつて432hzが一般的であったのに、我々は祖先の知恵を忘れてしまった

 音楽学者のアレキサンダー・ジョン・エリスは古代のパイプオルガンと音叉を調査し、その音程をグラフに書き留めました。

 そして発見したのが、432Hzについて言及があるのは、1880年のイタリア(ヴェルディによる)のみであったことです。彼の目的が演奏上の理由であったことはすでに述べましたが、基準ができるまで、Aの音は400Hzから460Hzまで変動しています。


6. 432Hzは心臓・脳・地球・太陽・水の周波数である



 臓の周波数は1~2.5Hzまで変動します。安定して432Hzの約数になることはありません。脳あるいは神経振動は1~70Hz。8Hzや他の432Hzの約数にはなりません。地球から発生する電磁振動をシューマン共鳴といいます。その1つは平均7.83Hzで共鳴しています。55でかければ = 430.65Hzになるが、ぴったりではありません。

 太陽からの超音波振動の計測結果は5.964ギガHzでした。偶然142Hz(144Hzではない)になるには周波数が42,000分の1にならなければならないし、それでもA = 426Hzにしかなりません。

 水の分子もまた振動していますが、それは赤外線スペクトル(90~11テラHz)に近い広帯域です。広すぎて、432Hzどころか、どの特定の周波数にも好まれません。


7. ゲッベルスとナチスは440Hzで世界征服を目論んだ

 「ナチ政権がどの周波数が最も恐怖と攻撃性を引き起こすかを研究し、その結果440Hzのピッチを国際標準に採用することを支持した」という陰謀論があります。しかし国際的に440Hzを基準として用いる合意がなされたのは、1939年、ロンドンで開催された国際会議です。つまり首謀者は英国規格協会です。


8. サイマティクス(物体の固有振動を可視化する研究)によって432Hzが水と宇宙の周波数であることが証明さた

 432Hz説の証拠とされる美しい動画やイメージがいくつか存在します。しかし、それは共鳴体(水や金属板)という、様々な周波数に共鳴するようチューニングできる代物によって作られました。

 すなわちバイオリンやギターが用いる440Hzに共鳴するようチューニングした共鳴体を用いれば、しいサイマティック形状が作られるということです。その幾何学的図形は定常波という現象によって作られたものです。


9. A = 432Hzにすると音楽はより美しくなる

 音楽の感性は人それぞれです。音楽家は基本周波数として440Hzの使用を強制されているわけではなく、世界各地のオーケストラが演奏に応じて様々なピッチを用いています。

 一般的には、バロック音楽ならA = 415Hz、古典や初期ロマン主義時代ならおよそ425Hz、それ以降なら440Hzといった具合です。


 結論を言うと、432Hzは調律基準の選択肢の1つであり特別な意味はないようです。特定の周波数に調律したからといって、宇宙のパワーが解き放たれることも、音楽が殊更美しくなることもありません。ただし、プラセボ効果的なものはあるようです。偽薬に健康効果があるように、432Hzの音楽が素晴らしいものだと実感できれば、それ相応の癒し効果も得られることでしょう。

 自分が何を信じ、どう感じるかで、その結果が変わるのはなにもこれに限ったことではありません。さらなる可能性を追求したいなら、楽曲や歴史的背景に応じてチューニングをいろいろ変えてみて、自分だけの癒しの周波数を探してみるのもいいかもしれません。

(ASK・AUDIO―カラパイアより)