人は汝らを追放せん(BWV44)

 復活祭後第6主日に聞くカンタータは、1724.5.21ライプツィヒで初演さライプツィヒでのカンタータ第1年巻の最後を締めくくる作品です。この日のためのカンタータは2曲しか残されいないので、再度取り上げました。

 

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 この日に朗読された福音書の章句は、ヨハネによる福音書の「使徒たちが受ける迫害の予言」です。カンタータはまずこの予言から出発し、そこに述べられた迫害と苦難を描いた後に、神を信ずることによってこれに耐えるように勧めています。

 

 前回はフリップ・ヘレヴェッヘと鈴木雅明の演奏を取り上げたので、今回はトン・コープマンの演奏で聴いてみたいと思います。歌手はキャロライン・スタム(S)、マイケル・チャンス(CT)、ポール・アグニュー(T)、クラウス・メルテンス (B)です。

 Youtubeは、BWV 42, 43, 44, 45 &46の連続動画なので、BWV44は

1:00:10迄です。

 

https://youtu.be/a9gVUHQwED4?t=2634

 

 

人は汝らを追放せん(BWV44)

1.アリア(テノール、バス) 
Sie werden euch in den Bann tun.

「人々はあなたがたを会堂から追放するだろう」
2.合唱 
Es kömmt aber die Zeit, dass, wer euch tötet,

しかも、あなたがたを殺す者が皆、

wird meinen, er tue Gott einen Dienst daran.

自分は神に奉仕していると考える時が来る。
3.アリア(アルト) 
Christen müssen auf der Erden

キリスト者は地上では

Christi wahre Jünger sein.

キリストのまことの弟子でなくてはならない。

Auf sie warten alle Stunden,

すべての時が彼らを待っている、

Bis sie selig überwunden,

彼らが至福のうちに

Marter, Bann und schwere Pein.

拷問と追放と辛い責め苦に打ち勝つまで。

4.コラール(テノール) 
Ach Gott, wie manches Herzeleid

ああ神よ、なんと多くの心の悩みが、

Begegnet mir zu dieser Zeit.

いまわたしを襲っていることか。

Der schmale Weg ist trübsalvoll,

狭い道は苦難に満ちている、

Den ich zum Himmel wandern soll.

わたしが天国に到るまで歩まねばならぬその道は。

5.レシタティーヴォ(バス) 
Es sucht der Antichrist,

アンチ・キリストが探している、

Das große Ungeheuer,

あの大きな怪物が、

Mit Schwert und Feuer

剣と火をてにして、

Die Glieder Christi zu verfolgen,

キリストの肢々たちを迫害しようとして、

Weil ihre Lehre ihm zuwider ist.

彼らの教えが彼には不快だから。

Er bildet sich dabei wohl ein,

おそらく彼は思い込んでいる、

Es müsse sein Tun Gott gefällig sein.

彼のすることが神の意に叶うにちがいないと。

Allein, es gleichen Christen denen Palmenzweigen,

とはいえキリスト者たちは、さながらかれらの棕櫚の枝が、

Die durch die Last nur desto höher steigen.

重荷によってさらに高く伸びるのににている。

6.アリア(ソプラノ) 
Es ist und bleibt der Christen Trost,

キリスト者の変わることない慰めとは、

Dass Gott vor seine Kirche wacht.

神がその協会を見守っていてくださること。

Denn wenn sich gleich die Wetter türmen,

なぜならたとえ嵐が次々とやってきても、

So hat doch nach den Trübsalstürmen

苦しみの嵐の後には

Die Freudensonne bald gelacht.

やがて喜びの太陽が笑顔を見せるのだから。

7.合唱 
So sei nun, Seele, deine

だから魂よ、おまえのそのままでいなさい。

Und traue dem alleine,

そしておまえをお創りくださったかただけに

Der dich erschaffen hat.

信頼を寄せるのです。

Es gehe, wie es gehe,

ことが進むようにことが進むもの、

Dein Vater in der Höhe,

いと高きところのおまえの父は、

Der weiß zu allen Sachen Rat.

いかなることにも良き知恵を知っておられます。

                       対訳:磯山 雅

ヨハネによる福音書 15章 26、16章 1-4

わたしが父のもとからあなたがたに遣わそうとしている弁護者、すなわち、父のもとから出る真理の霊が来るとき、その方がわたしについて証しをなさるはずである。あなたがたも、初めからわたしと一緒にいたのだから、証しをするのである。これらのことを話したのは、あなたがたをつまずかせないためである。人々はあなたがたを会堂から追放するだろう。しかも、あなたがたを殺す者が皆、自分は神に奉仕していると考える時が来る。彼らがこういうことをするのは、父をもわたしをも知らないからである。しかし、これらのことを話したのは、その時が来たときに、わたしが語ったということをあなたがたに思い出させるためである。」


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歓呼のうちに神は昇天したもう(BWV43)

 今日は昇天祭です。キリストの昇天を記念する日で、復活したキリストが40日にわたって弟子たちにの前に姿をあらわし、復活後40日目に昇天したと伝えられ、復活祭と連動する移動祭日で、復活祭後六週目の木曜日に祝います。

 今日聞くカンタータは1726.5.30の昇天祭のために作曲され、ライプツィヒで初演されました。

 

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 この作品の歌詞は、ルードルシュタット詩華撰から取れれており、旧約聖書と新約聖書の引用を中心に構成され、第2部からは7行からなる詩節の連続で、最後をコラールで締めくくっています。

 

 フィリップ・ヘレヴェッヘ指揮、コレギウム・ヴォカーレ・ゲント&管弦楽団、ドロテー・ミールズ(S)、ダミアン·ギヨン(CT)、トマス・ホッブズ(T)、ペーター・コーイ(B)の演奏会録画でお聴きください。マルセル・ポンセール(第1オーボエ)の横で北里孝浩も演奏しています。なおこの動画はBWV6、BWV11他が続きます。

 


 

 

歓呼のうちに神は昇天したもう(BWV43)

第1部

1 .合唱

Gott fähret auf mit Jauchzen

神は歓呼の中を昇られ、

und der Herr mit heller Posaunen. Lobsinget,

主は角笛の響きと共に昇られる。

lobsinget Gott, lobsinget,

歌え、神に向かって歌え。

lobsinget unserm Könige.

歌え、我らの王に向かって歌え。

2 .レチタティーヴォ(テノール)

Es will der Höchste sich ein Siegsgepräng bereiten,

至高者は勝利の凱旋を用意され、

Da die Gefängnisse er selbst gefangen führt.

みずから捕らわれ人を連れて行かれる。

Wer jauchzt ihm zu?

主に歓呼の声を上げるのはだれだ。

Wer ists, der die Posaunen rührt?

角笛を吹き鳴らすのはだれだ。

Wer gehet ihm zur Seiten?

主のかたわらを歩むのはだれだ。

Ist es nicht Gottes Heer,

それは主の軍勢ではないか、

Das seines Namens Ehr,

主の御名の栄光と、

Heil, Preis, Reich, Kraft und Macht mit lauter Stimme singet

救いと賛美と御国と御力と権能とを声高に歌い

Und ihm nun ewiglich ein Halleluja bringet.

主に永久にハレルヤを捧げるのは。

3 .アリア(テノール)

Ja tausend mal tausend begleiten den Wagen,

まことに千の千倍もの人々 が神の御車に従い、

Dem König der Kön'ge lobsingend zu sagen,

王の中の王に賛美の歌をうたう、

Dass Erde und Himmel sich unter ihm schmiegt

天と地が主の御下に従い

Und was er bezwungen, nun gänzlich erliegt.

主が征服されたものは今や全て屈服したと。

4 .レチタティーヴォ(ソプラノ)

Und der Herr, nachdem er mit ihnen geredet hatte,

ward er aufgehaben

主イエスは、弟子たちに話した後、

gen Himmel und sitzet zur rechten Hand Gottes.

天に上げられ、神の右の座に着かれた。

5 .アリア(ソプラノ)

Mein Jesus hat nunmehr

わたしイエスはいま

Das Heilandwerk vollendet

救いの御業を終えられ

Und nimmt die Wiederkehr

彼を遣わされた方のところへと

Zu dem, der ihn gesendet.

ふたたび還られた。

Er schließt der Erde Lauf,

彼は地上の活動を終えられた、

Ihr Himmel, öffnet euch

天よ、門を開き

Und nehmt ihn wieder auf!

彼をふたたび迎え入れよ。

第2部

6 .レチタティーヴォ(バス)

Es kommt der Helden Held,

勇者の中の勇者がやってくる、

Des Satans Fürst und Schrecken,

サ夕ンも恐れる王者は、

Der selbst den Tod gefällt,

死さえも打ち倒し、

Getilgt der Sünden Flecken,

罪のけがれも拭い去り、

Zerstreut der Feinde Hauf;

敵の群を蹴散らす。

Ihr Kräfte, eilt herbei

諸々 の力よ、急いで集まり

Und holt den Sieger auf.

勝利者を高く掲げなさい。

7 .アリア(バス)

Er ists, der ganz allein

彼こそは、ただひとり

Die Kelter hat getreten

酒ぶねを踏まれた人である。

Voll Schmerzen, Qual und Pein,

痛み、苦悩、苦痛を満身に受けられたのは、

Verlorne zu erretten

貴い価を払われて

Durch einen teuren Kauf.

堕落した者を救うため。

Ihr Thronen, mühet euch

諸々 の王座よ、力を尽くし

Und setzt ihm Kränze auf!

主に王冠を捧げなさい。

8 .レチタティーヴォ(アルト)

Der Vater hat ihm ja

御父はあの方に

Ein ewig Reich bestimmet:

永遠の御国を定められた。

Nun ist die Stunde nah,

いまその時は近づいた、

Da er die Krone nimmet

幾千の不幸に代えて

Vor tausend Ungemach.

王冠を被られるその時が。

Ich stehe hier am Weg

わたしはここの道ばたに立って

Und schau ihm freudig nach.

喜びつつあの方の御姿を追うのだ。

9 .アリア(アルト)

Ich sehe schon im Geist,

わたしはすでに霊において見ている、

Wie er zu Gottes Rechten

あの方が神の右に座り

Auf seine Feinde schmeißt,

敵どもを踏みつけ、

Zu helfen seinen Knechten

あの方の僕たちを

Aus Jammer, Not und Schmach.

悲惨と困苦と恥辱から救われるさまを。

Ich stehe hier am Weg

わたしはこの道ばたに立って

Und schau ihm sehnlich nach.

憧れつつあの方の御姿を追うのだ。

10.レチタティーヴォ(ソプラノ)

Er will mir neben sich

主は御自身のお隣に

Die Wohnung zubereiten,

わたしの住まいを用意される、

Damit ich ewiglich

わたしが永遠に

Ihm stehe an der Seiten,

深い悲しみから解き放たれて、

Befreit von Weh und Ach!

あの方の傍らに立っように。

Ich stehe hier am Weg

わたしはこの道ばたに立って

Und ruf ihm dankbar nach.

感謝してあの方に呼びかける。

11 .合唱

Du Lebensfürst, Herr Jesu Christ,

いのちの君、主イエス・キリスト、

Der du bist aufgenommen

あなたは天に挙げられた

Gen Himmel, da dein Vater ist

あなたの御父と

Und die Gemein der Frommen,

信ずるともがらがいます天に、

Wie soll ich deinen großen Sieg,

わたしはあなたの勝利をどのように讃えよう、

Den du durch einen schweren Krieg

あなたが辛い戦いによって

Erworben hast, recht preisen

得られた勝利を、

Und dir g'nug Ehr erweisen?

そしてあなたに充分な尊敬をどのように示そう。

Zieh uns dir nach, so laufen wir,

われらはあなたが引き寄せるままに歩みます、

Gib uns des Glaubens Flügel!

われらに信仰の翼をお与えください。

Hilf, dass wir fliehen weit von hier

助けたまえ、われらがこの地から遠く逃れ

Auf Israelis Hügel!

イスラエルの丘に到るように。

Mein Gott! wenn fahr ich doch dahin,

わが神よ、いつわたしはかの地に行き、

Woselbst ich ewig fröhlich bin?

永遠の喜びを味わうのですか。

Wenn werd ich vor dir stehen,

いつわたしは御前に立ち、

Dein Angesicht zu sehen?

あなたの御顔を拝めるのですか。

訳詞:磯山 雅

 

マルコによる福音書 16章 14-20

 その後、十一人が食事をしているとき、イエスが現れ、その不信仰とかたくなな心をおとがめになった。復活されたイエスを見た人々の言うことを、信じなかったからである。それから、イエスは言われた。「全世界に行って、すべての造られたものに福音を宣べ伝えなさい。信じて洗礼を受ける者は救われるが、信じない者は滅びの宣告を受ける。信じる者には次のようなしるしが伴う。彼らはわたしの名によって悪霊を追い出し、新しい言葉を語る。手で蛇をつかみ、また、毒を飲んでも決して害を受けず、病人に手を置けば直る。」主イエスは、弟子たちに話した後、天に上げられ、神の右の座に着かれた。一方、弟子たちは出かけて行って、至るところで宣教した。主は彼らと共に働き、彼らの語る言葉が真実であることを、それに伴うしるしによってはっきりとお示しになった。


まことに、まことに汝らに告ぐ(BWV86)

 今日は復活祭後第5主日です。この日のためのカンタータもBWV86と87の2曲しか現存しません。BWV86は一昨年のブログでも取り上げましたが、再度聴くことにします。17124.5.14ライプツィヒで初演されています。


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 ヨハネ福音書によると受難を間近に控えたイエスは、弟子たちに長い決別の説教を行い、受難を通じての別れに、弟子たちを備えさせた。この日の福音書章句は、イエスは天上の父についても語り、父と弟子たちを、直接的な結びつきに置こうとします。合唱は最後の4声コラールだけで、小編成の落ち着いたカンタータです。


 トン・コープマン指揮、アムステルダム・バロック・オーケストラ&合唱団、シビラ・ルーベンス(S)、ベルンハルト・ランダウアー(CT)、クリストフ・プレガルディエン(T)、クラウス・メルテンス(B)の演奏でお聴きください。





まことに、まことにわれ汝らに告ぐ(BWV86)

1.アリオーソ(バス)

Wahrlich, wahrlich, ich sage euch,

本当に、本当にお前たちに言っておく。

so ihr den Vater etwas bitten werdet in meinem Namen,

お前たちが父に何かを私の名で願うならば、

so wird er's euch geben.

父はそれをお前たちに与えられるだろう。

2.アリア(アルト)

Ich will doch wohl Rosen brechen,

私はバラを手折ろう、

Wenn mich gleich die Dornen stechen.

刺が私を刺したとしても。

   Denn ich bin der Zuversicht,

 それは確信があるからだ、

   Dass mein Bitten und mein Flehen

 私の願いと祈願が

   Gott gewiss zu Herzen gehen,

 きっと神の心に届くという。

   weil es mir sein Wort verspricht.

 お言葉が私に、そう約束されたのだかから。

3.コラール(ソプラノ)

Und was der ewig gültig Gott

永遠に慈しみ深い愛が

In seinem Wort versprochen hat,

御言葉で約束されたことを、

Geschworn bei seinem Namen,

御名において誓われたことを

Das hält und gibt er gwiß fürwahr.

神は確かな真実として保ち、与えてくださる。

Der helf uns zu der Engel Schar

神が私たちを助け、天使の群れへと加えてくださいますように、

Durch Jesum Christum, amen.

イエス・キリストによって。アーメン!

4.レチタティーヴォ(テノール)

Gott macht es nicht gleichwie die Welt,

神のなさり方は、この世とは違う。

Die viel verspricht und wenig hält;

多くを約束し、守ること少ないこの世とは、

Denn was er zusagt, muss geschehen,

なぜなら、神の約束されたことは、必ずおこるからだ。

Dass man daran kann seine Lust und Freude sehen.

人はその成り行きに神の快と喜びを見る。

5.アリア(テノール)

Gott hilft gewiss;

神はしっかり助けてくださる。

Wird gleich die Hilfe aufgeschoben,

助けがたとえ先延ばしされたとしても、

Wird sie doch drum nicht aufgehoben.

それが放棄されることはない。

Denn Gottes Wort bezeiget dies:なぜなら、

神の御言葉はこう語るからだ:

Gott hilft gewiss!

神はしっかり助けてくださる!

6.コラール

Die Hoffnung wart' der rechten Zeit,

希望をもってしかるべき時を待ち望め、

Was Gottes Wort zusaget,

それこそ神の御言葉が約束されたこと。

Wenn das geschehen soll zur Freud,

いつそれが起こり喜びとなるか、

Setzt Gott kein g'wisse Tage.

神は確かな期日を定めておられない。

Er weiß wohl, wenn's am besten ist,

よく知っておられるからだ、いつが最良かを。

Und braucht an uns kein arge List;

そして私たちに、悪だくみをなさらない。

Des solln wir ihm vertrauen.

だから私たちは、神により頼むべきなのだ。

                         対訳:磯山 雅


ヨハネによる福音書 16章 23-30

その日には、あなたがたはもはや、わたしに何も尋ねない。はっきり言っておく。あなたがたはわたしの名によって何かを父に願うならば、父はお与えになる。

今までは、あなたがたはわたしの名によっては何も願わなかった。願いなさい。そうすれば与えられ、あなたがたは喜びで満たされる。」

「わたしはこれらのことを、たとえを用いて話してきた。もはやたとえによらず、はっきり父について知らせるときが来る。

その日には、あなたがたはわたしの名によって願うことになる。わたしがあなたがたのために父に願ってあげる、とは言わない。

父御自身が、あなたがたを愛しておられるのである。あなたがたが、わたしを愛し、わたしが神のもとから出て来たことを信じたからである。

わたしは父のもとから出て、世に来たが、今、世を去って、父のもとに行く。」

弟子たちは言った。「今は、はっきりとお話しになり、少しもたとえを用いられません。

あなたが何でもご存じで、だれもお尋ねする必要がないことが、今、分かりました。これによって、あなたが神のもとから来られたと、わたしたちは信じます。」

18のコラール集 1

 ヴァイマール時代の作品をもとに、ライプツィヒ時代に完成された「18のコラール」は、BACHのオルガン曲の傑作として、数少ない自筆楽譜で残されている貴重な作品群です。但し最後の3曲はBACHの自筆ではなく、さらに最後のBWV668が別個に記されているため、「17のコラール集」と呼ばれることもあります。

 YouTubeに投稿されている演奏動画を中心に、6曲づつ3回に分けて聴いていきたいと思います。


いざ来たれ、異邦人の救い主よ(BWV651)

 この聖霊降臨祭用コラールは、中世のラテン語のアンティフォナVeni sanctus spiritus から15世紀頃ドイツ語に翻訳され、ルターが第2-3節を加えたものです。

 冒頭からペダルの音が鳴り響き、その上に手鍵盤のトッカータ風音型が重なります。その後、手鍵盤の動機はフーガを形成し、ペダルは長い音価でコラール旋律が奏されます。

 ウィリアム・ポーターの演奏でお聴きください。





来たれ聖霊、主なる神よ(BWV652)

 全曲と同じコラールによる、サラバンド風の優美な足取りと、穏やかで抒情的な作品です。楽曲はコラールの各段落ごとに全模倣を行う「パッヘルベル型」の書法で作られています。

 フランスのオルガン奏者、ジャック・アマードの演奏です。





バビロンの流れのほとりで(BWV653)

 この曲はW.ダハシュタインが詩編137編を韻文訳した詩編歌に基づいています。これはバビロンに捕囚として連行されたイスラエル人たちが、神の都エルサレムの破壊と、敵国で受ける辱めを嘆き、神の正しい裁きを求めた歌です。

 マリア・マグダレーナ・カチョルの演奏でお聴きください。





装え、おお愛する魂よ(BWV654)

 原曲はJ.フランクによる聖餐式のためのコラールです。全体の音域の低さが、聖餐の奥義にまつわる神秘的なイメージを強め、光としての定旋律を引き立たせます。

 シューマンがメンデルスゾ-ンの言葉を引用しつつ、この曲を絶賛したことで知られています。「人生が私から希望と信仰を奪い取ったとしても、このただ1つのコラールがそれを取り戻してくれる」

 トン・コープマンの演奏動画でお聴きください。





トリオ「主イエス・キリスト、われらに眼を向けたまえ」(BWV655)

 コラールの歌詞はヴァイマール公ヴィルヘルム二世の作とされており、当時は説教の前に歌われていました。

 トリオのスタイルのコラール冒頭動機に基づく自由なソナタで、イタリア協奏曲風な明快な構成法で書かれています。

 クリスティアーノ・リッツォットの演奏でお聴きください。





おお、罪のない神の子羊(BWV656)

 N.デーツィウスが、ミサ通常文中の「アニュス・デイ」を自由にパラフレーズして作った、3節からなるコラールを基に、3つの連続するコラールに編曲しています。

 最初の2節は手鍵盤のみで奏され、第3節で初めてペダルが導入されます。

 ウルフ・ノルベルグの演奏動画でお聴きください。




汝いずこに行くや(BWV166)

 復活祭後第4主日に演奏されたカンタータは、1724と1725にライプツィヒで初演された2曲しか現存しません。一昨年と同じBWV166を聴くことにします。

 聖句の引用に始まり、器楽の活躍するコラール編曲を経て、4声のコラールで閉じるという構成です。


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 表題でもあり、モットーとなっているのは「どこへ行くのだ?」という、ヨハネ福音書の言葉です。当日の福音書の文脈では、この句は、弟子たちに別れを告げるイエスは「私が去っていくのは、あなたがたのためになる」と語りますが、カンタータではこの言葉を歌い出す時、その句がキリスト者に変化しています。こうして「人の行くべきところ」を説くのが台本の構想です。

 第3曲のソプラノのコラールと最終楽章のコラールはいずれも人の死をテーマにしており、カンタータの意味を強調しています。 


 グスタフ・レオンハルト指揮、レオンハルト合奏団、テルツ少年合唱団、コレギウム・ヴォカーレ・ゲント、 クリストフ・ウェグマン(BS)、ポール・エスウッド(CT)、クルト・エクウィルツ(T)、マックス・バン・エグモンド(B)の演奏でお聴きください。





汝いずこに行くや(BWV166)

1.アリア(バス)

Wo gehest du hin?
「どこへ行くのだ」

2.アリア(テノlル)


Ich will an den Himmel denken

私は天のことを考えよう。

Und der Welt mein Herz nicht schenken.

この世に心を捧げることはすまい。

Denn ich gehe oder stehe,

なぜなら、行くにしろ立ち止まるにしろ、

So liegt mir die Frag im Sinn:

私の心にこの問いがあるからだ、

Mensch, ach Mensch, wo gehst du hin?

人よ、ああ人よ、どこへ行くのだ、という。

3.コラール(ソプラノ)

Ich bitte dich, Herr Jesu Christ,

お願いします、主イエス・キリストよ、

Halt mich bei den Gedanken

私をこの想念のもとに保ち、

Und lass mich ja zu keiner Frist

いかなる時にも私の

Von dieser Meinung wanken,

この考えが揺らぐことのないようにして

Sondern dabei verharren fest,

それを固く守り通させてください、

Bis dass die Seel aus ihrem Nest

やがて魂が巣立ち

Wird in den Himmel kommen.

天へと向かうその時まで。

4.レチタティーヴォ(バス)

Gleichwie die Regenwasser bald verfließen

雨水がたちまちに流れ去り

Und manche Farben leicht verschießen,

とりどりの色もたやすく褪せるように、

So geht es auch der Freude in der Welt,

この世の喜びも失せていく、

Auf welche mancher Mensch so viele Stücken hält;

多くの人がそれをどれほど価値としたとしても。

Denn ob man gleich zuweilen sieht,

なぜなら、人が時として

Dass sein gewünschtes Glücke blüht,

望ましい幸いの花開くのを見るとはしても、

So kann doch wohl in besten Tagen
おそらくは最良の日々にこそ

Ganz unvermut' die letzte Stunde schlagen.

出し抜けに、最後の刻は打つものだからだ。

5.アリア(アルト)

Man nehme sich in acht,

気をつけなさい。

Wenn das Gelücke lacht.

幸いが笑うときには。

Denn es kann leicht auf Erden

なぜなら、地上では事はたやすく

Vor abends anders werden,

日も暮れぬうちに変わってしまうのですから、

Als man am Morgen nicht gedacht.

朝には思いもしなかった方向へと。

6.コラール

Wer weiß, wie nahe mir mein Ende!

誰が知ろう、私の最期がどれほど近いかを。

Hin geht die Zeit, her kommt der Tod;

時は過き去り、死はやってくる。

Ach wie geschwinde und behände

ああ、何と速く敏速に

Kann kommen meine Todesnot.

死の苦しみがやってくることか。

Mein Gott, ich bitt durch Christi Blut:

神様、キリストの血によってお願いします、

Mach's nur mit meinem Ende gut!

私の終わりをどうか良くしてくたさい。

                       対訳:礒山 雅


ヨハネによる福音書 16,5-15

今わたしは、わたしをお遣わしになった方のもとに行こうとしているが、あなたがたはだれも、『どこへ行くのか』と尋ねない。

むしろ、わたしがこれらのことを話したので、あなたがたの心は悲しみで満たされている。

しかし、実をいうと、わたしが去って行くのはあなたがたのためになる。わたしが去って行かなければ、弁護者はあなたがたのところに来ないからである。わたしが行けば、弁護者をあなたがたのところに送る。

その方が来れば、罪について、義について、また、裁きについて、世の誤りを明らかにする。

罪についてとは、彼らがわたしを信じないこと。

義についてとは、わたしが父のもとに行き、あなたがたがもはやわたしを見なくなること。

また、裁きについてとは、この世の支配者が断罪されることである。

言っておきたいことは、まだたくさんあるが、今、あなたがたには理解できない。

しかし、その方、すなわち、真理の霊が来ると、あなたがたを導いて真理をことごとく悟らせる。その方は、自分から語るのではなく、聞いたことを語り、また、これから起こることをあなたがたに告げるからである。

父が持っておられるものはすべて、わたしのものである。だから、わたしは、『その方がわたしのものを受けて、あなたがたに告げる』と言ったのである。」