緑色の葉物野菜を毎日食べると認知能力の衰えを抑えられる

 年齢を重ねるにつれて認知能力は自然に衰えていきますが、緑色の葉物野菜を毎日食べていると、記憶力と思考能力の低下を抑えられる可能性があるという調査結果を、米国のラッシュ大学医療センターが発表しました。



葉物野菜を食べると認知能力の衰えを抑えられる

 「ホウレンソウやキャベツ、レタスなどの葉菜類を毎日の食事に取り入れることが、脳の健康を促進するための効果的な方法となる可能性があります。先進国では社会の高齢化が進み、認知症が急激に増えています。認知症を予防するための効果的な戦略が求められています」と、ラッシュ大学医療センターのマーサ クレア モリス氏はいいます。

 研究では、緑色の葉物野菜を1日に1回以上食べている人は、ほとんど食べない人に比べ、記憶力と思考能力のテストで低下率が低く、認知能力では最大で11歳の差が生じることが明らかになりました。

 「ラッシュ大学・メモリ・エイジング・プロジェクト」は、退職した高齢者が住むシカゴ地区の公営住宅コミュニティで実施されている、生活スタイルと認知能力の関連を調べている大規模な研究です。今回の調査は、このプロジェクトに参加している58~99歳の高齢者960人を対象に、平均4.7年間追跡して行われました。


●日本食に認知症を予防する効果 認知症を予防するための食事療法

●糖尿病と認知症の「危険な関係」 血糖値が高いと認知症リスクが上昇

●運動が糖尿病の認知症リスクを抑制 運動療法は脳を変える


葉物野菜を食べている人は脳の年齢が11歳若い

 参加者は、食事内容に関するアンケート調査に回答し、ホウレンソウやレタス、ケールなどの葉物野菜を毎日どれだけ食べているかを申告しました。同時に認知能力を評価するテストを毎年受けました。

 研究チームは、葉物野菜の摂取量に応じて参加者を5つのグループに分け、もっとも多く食べた人(1日に150g以上)、ほとんど食べない人(1日に10g程度)の、認知能力の推移を比較しました。

 年齢を重ねるにつれ、参加者の認知能力は低下していく傾向がみられましたが、葉物野菜をもっとも多く食べている人は、ほとんど食べない人に比べ、認知能力の低下が抑えられていました。葉物野菜を多く食べている人では、年数にすると11歳に相当する差が生じていました。

 魚介類やアルコールの摂取、喫煙、高血圧、糖尿病、肥満、身体活動や認知活動など、脳の健康状態に影響するさまざまな因子を考慮しても、葉物野菜を食べることで認知能力の衰えを抑えられる傾向は明らかでした。研究は米国神経科学アカデミーが発行している医学誌「Neurology」に発表されました。


葉菜類を食べることと脳の老化の抑制に関連が

 ホウレンソウやキャベツ、レタス、ケール、コラードグリーン、コマツナ、ハクサイ、ミズナ、チンゲンサイなどの葉物野菜には、ビタミンK(フィロキノン)、ビタミンE(α-トコフェロール)、ルテイン、β-カロチン、葉酸、フラボノイドの一種であるケンペロールなどの、抗酸化作用のある栄養素が豊富に含まれます。

 認知症のひとつであるアルツハイマー症の原因は、加齢により脳の中にアミロイドβやタウといった不要なタンパクが蓄積することだと考えられています。葉物野菜に含まれるビタミンやポリフェノールなどの抗酸化作用によって、細胞が活性酸素から守られ、アミロイドβなどが蓄積し脳に広がるのを防げる可能性があります。これらの栄養素は、活性酸素によって引き起こされる慢性炎症を抑えるのにも効果的です。

 「緑色の葉菜類には体に有用な栄養素が多く含まれます。今回の研究では、どのようなメカニズムで脳の老化を抑えられるのか特定できていません。しかし、葉菜類を食べることと脳の老化の抑制に関連があることは明らかです」と、モリス氏はいいます。


認知症の予防効果のある「マインド ダイエット」

 「マインド ダイエット」と呼ばれる新しい食事スタイルが、アルツハイマー病などの認知症を予防するのに効果的であることが、米国のラッシュ大学医療センターの過去の研究で明らかになっています。

 認知症を予防するために効果的な食事スタイルについてはこれまでも研究が行われていますが、同大学が行った研究によると、「マインド ダイエット」と呼ばれる食事スタイルは、ほどほどに守っていても効果を得られる点が従来の食事スタイルと異なり画期的だといいます。

 「マインド ダイエット」は、米ラッシュ大学の栄養疫学部が開発した食事スタイルで、健康的な食事として知られる「地中海式ダイエット」と「DASHダイエット」の長所を組み合せたものです。

 「地中海式ダイエット」は、野菜・果物・豆類などの植物性食品と、地中海地域の特産のオリーブオイル、新鮮な魚介類などを組み合わせた食事スタイルで、肥満やメタボの予防効果があることが知られます。一方、「DASHダイエット」は高血圧の予防・改善のために開発された食事スタイルで、玄米や全粒パンなどの全粒穀物や、低脂肪の肉や乳製品、ナッツや豆類などを積極的にとることが勧められています。


認知症を予防するための食事スタイルは糖尿病や肥満にも効果的

 「マインド ダイエット」では、▽葉菜類(キャベツ・ホウレンソウ・レタス・ケール・コマツナ・ハクサイなど)、▽根菜類(ニンジン・トマト・ブロッコリー・カブ・ゴボウなど)、▽豆類(大豆・インゲン・グリーンピースなど)、▽全粒穀物(小麦の全粒粉や玄米など)などを十分に食べることが勧められています。

 今回の研究で、葉菜類を食べることが、高齢になっても認知能力が低下しないようにするために効果的であることが裏付けられました。認知症を予防するための食事スタイルは、糖尿病や肥満を予防・改善するための食事療法と共通する部分が多く、糖尿病や高血圧、肥満などを改善することが、認知症の予防にも役立ちそうです。

(保健指導リソースガイドより)

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脚を鍛えれば血圧は下がる!

 気温が下がると血圧は上昇傾向になります。寒さのために、血管が収縮して細くなるので、心臓はより力を入れて全身に血液を送り出そうとするからです。

 心臓が収縮して大動脈へ血液を送り出すときの圧力が「収縮期血圧」(俗にいう「上の血圧」)で、心臓が拡張して全身の静脈から心臓に血流が流れ込むときの血圧が「拡張期血圧」(下の血圧)です。



 2000年までは血圧の正常値は上=140mmHg未満、下=90mmHg未満であり、「高血圧」は上=160mmHg以上、下=95mmHg以上で、その中間は「境界型高血圧」と呼ばれ、もちろん降圧剤の処方はされていませんでした。

 ところが2000年に日本高血圧学会が高血圧の基準を突然、上=140mmHg以上、下=90mmHg以上に引き下げ、さらには血圧を下げる場合の目標値を上=130、下=85としました。この基準からいけば、日本人の少なくとも約4000万人、多く見積もると約6000万人が高血圧ということになります。

「高血圧」が長く続くと、脳卒中(出血、梗塞)、高血圧性心臓病(心不全)、虚血性心臓病(狭心症、心筋梗塞)、高血圧性腎臓病(→腎不全→透析)、腹部・胸部大動脈瘤破裂、脳血管性認知症などを発症しやすくなるので、西洋医学では投薬により何がなんでも140/90mmHg未満に抑え込もうとします。

 脳、心臓、胃腸、腎臓、肺など、ありとあらゆる体内の臓器は、血液が運んでくる種々の栄養、水分、酸素、ホルモン、免疫物質などを糧にして、生活(その臓器特有の働き)を営んでいます。よって、血圧を必要以上に無理に下げると、こうした臓器に栄養が十分に届けられないので、健常な働きが完全に遂行できず副作用が表れることもあります。

 「血圧」は全身の臓器に血液を送り届けるための「心臓の圧力」です。血圧が上昇するということは、なんらかの理由(血管が動脈硬化で細くなっている、病気の臓器が血液を大量に必要としている、など)があるからです。ですがら降圧剤なしでも、正常血圧に保てるような生活習慣を身に付けることが肝要です。


正常血圧を保つ生活習慣

 それには「高血圧」の原因を理解し、それに対処する生活習慣を励行する必要です。しかし、若い人には高血圧に悩む人は少ないし、年齢と共に高血圧患者は増えてくるので、高血圧は「シミやシワ、白髪や薄毛」などと同じく、「老化現象」の一面があります。

 「老化は脚から」ともいわれるように、足、腰、尻など下半身の筋力・筋量が低下してくると種々の老化現象が出現し、血圧は上昇してくる傾向があります。

 若いときは尻、太ももなどの筋肉が発達しており、その筋肉内を走っている毛細血管の数も多く、下半身に血液が潤沢に巡り、「頭寒足熱」の健康状態にります。歳と共に下半身の筋力や筋肉が減弱してくると、毛細血管の数も減り、行き場を失った血液は上半身に集まってきます。その結果、上半身の腕で測る血圧が上がってきます。

 ですからウォーキングをはじめとする運動、スクワット、ももあげ運動などで下半身の筋肉を鍛えると、上半身の血液が下半身に降りてきて、血圧は下がってきます。また、筋肉運動により「プロスタグランジン」「タウリン」などの「降圧物質」の産生分泌が増加し、血管が拡張し、また利尿も促進され、塩分、水分も排泄されて血圧が下がってきます。

 「老化は脚から」といわれますが、「高血圧の最大の原因は脚の弱り」と考えられます。高血圧をはじめ、心臓病、糖尿病、痛風、脳卒中などの生活習慣病を防ぐために脚の筋肉の鍛錬は極めて大切です。

(Business Jouenalより)

友情によって脳はブーストする!

 80歳でありながら50歳の人々よりも高い認知能力を示す「スーパーエイジャーズ」と呼ばれる人々を調査した研究が発表されました。アンケート調査によると、スーパーエイジャーズは多くの点でスーパーエイジャーズでない高齢者と評価を同じくするのですが、人間関係に関しては顕著な違いが出たそうです。



 ノースウェスタン大学の研究者らは9年にわたって、自分よりも20~30歳も年下の人たちよりも記憶力がよい80歳以上の男女「スーパーエイジャーズ」を調査しました。被験者らは期間中、アンケート調査と神経心理学のテスト一式、脳スキャン、神経学的なテストなどを行いました。

 スーパーエイジャーズに関する研究結果はこれまでにも発表されていますが、最新の研究では31人のスーパーエイジャーズと19人の「普通の」年配の人々に対して42項目からなるウェルビーイングについてのアンケート調査を実施。すると、人生の目的や自主性といった多くの項目についてスーパーエイジャーズは「普通の」人々と同じような評価を行う一方で、満足感・温かさ・信頼関係といった項目の評価は大きく異なっていたとのこと。このことから、「社会的な人間関係が非常に重要になってくる」のだと研究を行ったエミリー・ロガルスキー教授は語りました。「絆の強いソーシャルネットワークを持っていればアルツハイマー病にならないといった単純な問題ではないのですが、健康的な食事をする、禁煙する、といった項目と並んで『社会的なネットワークを持つ』ということが健康的な選択としてあるのです」とロガルスキー教授。

 退職者のためのコミュニティに参加しているスミスさんもスーパーエイジャーズの1人。スミスさんは新しい人が入ってくると、彼・彼女が自分の家にいるかのように感じられるよう温かく迎えます。「私は新しい人が入ってくると、その人の名前をできる限り早く覚えようとしますし、彼らを見かけたら『おはよう。調子はどう?』と声をかけます」「年配の人の多くは同じ話を何度も繰り返し、人の話に興味を持つのではなく不平ばかりを言う人も。これはひどいことです。人の話を聞くべきなのに」とスミスさんは語りました。コミュニティの管理者であるブライアン・フェンウィック氏も「彼女は人と深く関わる人物で、私たちのコミュニティをよく保ってくれます。彼女は何が起こっているかに敏感ですし、話し出すことを恐れません」と語っています。

 別のスーパーエイジャーである86歳のビルさんは、1999年にセールス&マーケティングの職から退いて初めて「感情をあらわにすることの大切さ」に気づいたのこと。「男性は通常、感情について話しません。私も自分を閉じ込めるタイプの人間でした。しかし、他人に対して心を開くことを学んだのです」とビルさん。

 ビルさんが創設に携わった、退職した男性のためのコミュニティ「Men Enjoying Leisure」には、今や150人のメンバーが所属しています。Men Enjoying Leisureでは月に2時間ほど集まって自分の身に起こっている物事について語り合うそうです。病気・離婚・子どものことなどについて話し合うことで、人々は自分だけが問題を抱えているのではなく、人も同じような問題を抱えているのだと学びます。語り合いを通して、男性たちはいい友人関係を築けるとのこと。

 研究に参加したスーパーエイジャーのうち2人は一緒に暮らしていますが、そのうちの1人であるフィネガンさんは、もう1人のグレースさんがいなければ孤独だったかもしれないとのこと。フィネガンさんは難聴と加齢黄斑変性を患っていますが、その他については驚くほどに健康です。そのフィネガンさんも「電話を取ってくれる友人がいるということがとても重要なのです」と語っています。2人は高校の同級生なのですが、88歳になっても毎日ほかの友人を含めたみんなでおしゃべりを楽しんでいるとのこと。

 過去にもスーパーエイジャーズを対象とした研究は行われており、MRIの結果、スーパーエイジャーズたちの脳は普通の人と比べて、灰白質から構成され神経が豊富な外皮質が分厚いことがわかっていました。しかし、実際の生活面でどのような違いが出ているかは、今回の研究で初めてわかったこと。

 上記の調査結果は、「認知力の低下リスクを軽減するためにはポジティブな関係が役立つ」といった過去の研究結果と一致します。ただし、ノースウェスト大学の研究者らは、スーパーエイジャーズがどのようにして良好な人間関係を維持しているのかや、スーパーエイジャーズにとって有効なことが他の人にとっても役立つのかの調査をまだ行っておらず、今後の調査が待たれるところです。

(Gigazineより)

「スマホ依存」社会が脳に異変を起こす!?

 相撲界を揺るがす大騒動となった日馬富士の暴行事件。日馬富士を激昂させた原因のひとつは、貴ノ岩の<説教中にスマホ操作>だといわれています。

 どんな理由があっても、暴力は許されるものではありません。しかしこの一件についての報道には「先輩の説教中にスマホをいじる貴ノ岩にも問題が」と咎めるような論調もありました。



 大事な話の最中でも、スマホが鳴れば気になってしまう――街中では、子どもから目を離してスマホ操作に没頭する親も少なくありません。大学でも、授業中にスマホをいじる学生に対して、「必要な調べものをしているかも……」と教員も注意しかねると聞きます。

 スマホの用途は多岐に渡り、知人との連絡や情報収集から仕事まで、どれも日々の生活に役立つもの、と主張する向きはあります。しかし「スマホ依存は脳内の神経伝達物質のバランスに異常を及ぼす」という研究結果を知れば、便利さの裏の危険性にも目を向ける気になるでしょうか。


ギャンブルやポルノの依存症にも匹敵

 その研究は、韓国・高麗大学のHyng Suk Seo氏らが実施。対象は「インターネット依存症」または「スマホ依存症」とされた10代の男女19人と、同じ年齢、性別の依存症のない健康な男女19人。依存症患者には、インターネットやスマホの依存症の重度を測定する検査を実施しています。

 その結果、インターネットやスマホの依存症患者には、依存症でない人に比べて「グルタミン(Glx)」に対する「yアミノ酪酸(GABA)」の活性レベルが高いことが示されました。

 GlxとGABAはいずれも脳内の神経伝達物質ですが、Glxは興奮性、GABAは抑制性の物質とされています。同氏らによると、これまでの研究で、GABAは視機能や運動調節、不安などさまざまな脳機能の制御に関与することが明らかにされているといいます。

 この研究結果を受け、米コーエン小児医療センターのSanjeev Kothare氏は「インターネットやスマホへの依存症は、ギャンブルやポルノへの依存症に匹敵する病態かもしれない」との見方を示しました。

 また、同氏は10代の子を持つ親に対して「もし、我が子が<スマホ中毒>ではないかと心配なら、スマホやコンピュータの使用を制限すべきだ」と話しています。


0歳〜5歳のスホマ接触率は58.8%にも

 いまや、中高生のスマホ依存は、大人が思っている異常に深刻な領域に突入しています。スマホ依存の実態をルポした『スマホ廃人』(石川結貴・文春新書)によれば、さまざまなグループとLINEのやり取りをして、休日には連続10時間の操作を続け、数時間スマホを放置すれば未読メッセージが100件、200件と<積もる>女子高生もいます。

 さらに、子育てにスマホが必須の現代では、乳幼児のときから<スマホ漬け>が始まっており、0歳〜5歳のスホマ接触率は58.8%にも達しているといいます。

 どんなに現状を嘆いても、スマホのない時代には戻れません。いかに節度をもちスマホと付き合うかが問われる今、生身の人間とのコミュニケーションを大切にすることが唯一の処方薬なのかもしれません。ところが、今や人と会うのもスマホを介さないと叶わないのですから、頭の痛い問題です。

(Health Pressより)

腸内細菌の多様性が長寿の秘訣

 ビフィズス菌や乳酸菌などの腸内細菌は、健康長寿と関連があるといいます。90歳を超えても健康な高齢者は、腸内細菌の環境が30歳の頃と変わらないことが大規模研究で明らかになりました。



「腸内エコシステム」が健康維持に重要

 ヒトの大腸内には、およそ100兆個、500~1,000種類もの腸内細菌がすみついています。この数はヒトの細胞数よりも多く、またこの菌のかたまりを腸内細菌叢といい、花畑のように見えることから「腸内フローラ」とも呼ばれています。

 通常、腸内細菌叢はバランスを保っていますが、不健康な食事、ストレスや過労などの二次的な作用、あるいは抗生物質の摂取などさまざまな要因により、腸内フローラのバランスは崩れます。

 腸内フローラは複雑な腸内微生物生態系、すなわち「腸内エコシステム」を形成しています。腸内エコシステムは健康維持に重要で、バランスが崩れると大腸がんなどの腸そのものの疾患に加えて、1型糖尿病、2型糖尿病、肥満、高血圧、炎症性疾患など、さまざまな疾患に関わっていることが明らかになっています。

 腸内環境の乱れがさまざまの病気の発症に関わることが、最新の「メタボロゲノミクス」の技術で明らかになりつつあります。

 生物の遺伝情報を担うDNAを解析するシークエンサーが進歩し、数百兆個の細菌から構成されるヒト腸内細菌叢の集合ゲノム(マイクロバイオーム)を網羅的に解析できるようになりました。


腸内細菌がもつパワー 慢性腎臓病(CKD)を防ぐ作用が明らかに

腸内フローラがインスリン抵抗性の原因 腸内細菌が炎症を起こす

腸内細菌が糖尿病リスクに影響 腸内環境が血糖値コントロールに関与


健康な高齢者の腸内フローラは若者と同じ

 カナダと中国で行われた研究で、健康に歳を重ねる高齢者の腸内フローラは、健康な30歳代の若者に驚くほど似ていることが明らかになりました。

 「健康に長生きしている人は、腸内細菌叢も健康で、30歳の頃とあまり変わらない状態を保っていることが分かりました」と、カナダのウェスタン大学生化学部教授のグレッグ グール氏は言います。

 グール氏は腸内細菌の多様性を維持することが、さまざまな健康増進の効果をもたらすと指摘しています。 「たとえば、コレステロール値を基準よりも高くしないことが、心筋梗塞などの循環器疾患を予防するためのバイオマーカーとなるのと同じように、年齢を重ね体が老化するに伴い腸内細菌の多様性を維持することが、健康な加齢のバイオマーカーになると考えられます」と、グール教授は説明します。

 研究チームは、3歳の幼児から100歳を超える高齢者まで、健康とされる中国人の男女1,000人を対象に、腸内フローラを採取して分析しました。

 これらの人々から腸内フローラを採取して分析したところ、健康な高齢者の腸内フローラは、若い世代のものと相似していることが分かりました。

 健康な集団に一貫してみられたのは、「腸内フローラの多様性」でした。健康的なライフスタイルと食事が腸内エコシステムに影響している可能性があります。

 グール教授らは、今回の研究だけではこれらの因果関係は十分に解明されていないとしながらも、「今後、こうしたマイクロバイオームの背景にあるメカニズムを解明し、どうすれば健康長寿を達成できるかを明らかにしたい」と述べています。


「短鎖脂肪酸」を増やすために腸内細菌が必要

 最近の研究で、腸内エコシステムが、生体恒常性維持の重要な役割を担っていることが次々と明らかになっています。

 腸内フローラは、その宿主である人間の腸だけでなく全身のコンディションに影響を与えており、体内のもうひとつの臓器とも捉えられます。

 腸内フローラの60%以上は食事などの環境要因の影響を受けており、とくに「短鎖脂肪酸」の作用が大きいことがデンマークの研究で明らかになりました。

 「短鎖脂肪酸」とは、腸内細菌がつくる、酪酸、プロピオン酸、酢酸などの有機酸のこと。腸上皮細胞の重要なエネルギー源となり、抗炎症などの生理的な作用を発揮します。

 短鎖脂肪酸には、腸内を弱酸性の環境にすることで有害な菌の増殖を抑制したり、大腸の粘膜を刺激して蠕動運動を促進するといった作用もあります。

 短鎖脂肪酸を増やすために、体内にいる腸内細菌が必要で、そのエネルギー源となるのは食物繊維やオリゴ糖です。



食物繊維の豊富な「全粒穀物」が腸内フローラを改善

 精製された穀物の代わりに全粒粉や玄米といった食物繊維の豊富な「全粒穀物」を多く摂取すると、満腹感が得られやすく減量に効果的なほか、全身の炎症も低減することが、デンマーク工科大学の研究で明らかになりました。

 全粒穀物には小麦、ライ麦、大麦、オーツ麦、玄米、乾燥トウモロコシなどがあります。

 食物繊維の多い食事を摂ることで腸内細菌の活動が高まり、その結果多量の酪酸が作られ、この酪酸が炎症抑制作用のある細胞を増やしていると考えられるといいます。

 全粒穀物を摂取すると腸内フローラが改善し、血糖を下げるインスリンの効きが悪くなるインスリン抵抗性が改善することも示されました。

 「食物繊維が豊富に含まれる全粒穀物を食事に取り入れることが、腸内環境を改善し、健康増進のために勧められることがあらためて示されました。このことは、2型糖尿病や心血管疾患のリスクの高い人にはとくに勧められます」と、デンマーク工科大学ナショナルフーズ研究所のタイン ラスク リクト教授は言います。


腸内フローラの乱れが血糖コントロール悪化の原因

 腸内環境は、血糖コントロールとも深く関わっています。米国のイリノイ大学の研究では、血糖コントロールがずっと良好、あるいは徐々に改善する人の腸内では、腸内細菌が多くみられ、代謝や免疫といった体の機能に良い影響を与える善玉菌が多いことが判明しました。

 順天堂大学の研究チームも、日本人の2型糖尿病患者の腸内フローラと、腸内細菌の血流中への移行について調査しています。糖尿病患者の腸内フローラが乱れていることと、腸内細菌が腸内から血流中へ移行しやすいことが明らかになりました。

 インスリン抵抗性は、インスリンが体の中で効きにくい状態にあることを意味します。インスリン抵抗性により糖が十分に体の中に取り込まれなくなると、血糖が上昇します。肥満や運動不足などが原因ですが、腸内フローラのバランスの乱れにより慢性的な炎症が起こることもインスリン抵抗性の一因になっているといいます。

(保健指導リソースガイドより)