Windowsを狙ったサイバー攻撃、史上最大規模

 米国家安全保障局(NSA)から盗み出されたとみられる技術を使ったサイバー攻撃が12日、世界各国を襲いました。ロイター通信は被害国数を約100カ国と伝えており、史上最大規模のサイバー攻撃となる可能性があります。日本でもトレンドマイクロとカスペルスキーのセキュリティーソフトが防いだ件数を集計した結果確認されましたが、実際に国内で感染被害が出ているかどうかは明らかになっていません。

 使用されたのは「ランサムウエア」と呼ばれるウイルスとみられます。標的のコンピューターを使えなくした上で「身代金」を仮想通貨ビットコインで支払うよう要求しています。

 AFP通信によると、ウイルス対策ソフトで知られるチェコのソフト開発企業アバストの関係者がブログで公表した被害国は、日本時間13日午前5時の時点で「99カ国」。被害件数は「7万5000を超える」と報告しています。

 英国では病院の端末が次々と使用不能になり、各国に先駆け大きな被害が伝えられました。救急車が病院に戻れなくなり、手術は中止されました。しかし、メイ英首相は「英国の医療制度を狙った攻撃ではない。世界的な攻撃だ」と警告しました。

 並行して米国では物流大手フェデックス、スペインでは通信大手テレフォニカの被害が報じられました。各国選挙でサイバー攻撃の発信源と非難されてきたロシアも被害国となり、強力な治安機関の一角を占める内務省が狙われました。中国でも、北京大学など各地の多くの大学が被害を受けたと伝えられました。



 感染したコンピューターの画像には「ファイルは暗号化された」とメッセージが表示され、解決策伝授と引き換えに300米ドル(約3万4000円)を要求。3日以内に支払わないと身代金は倍額になると脅しています。1週間以内に支払わなければ、ファイルは消えるといいます。

 病院が狙われた理由についてアバストの専門家は「病院のような場所を狙えば患者の命を人質に取れる。特に悪質だ」と指摘しました。ただ、こうしたサイバー攻撃の恐れはかねて警告されてきており、英国民保健サービス(NHS)当局者は「患者の安全を守るための対応計画が既に始動している。救急車は(攻撃を逃れた)近くの病院に行き先を変更した」と説明しました。

 今回狙われたのは米マイクロソフト社の基本ソフト(OS)ウィンドウズを使った端末で、ウイルス攻撃は通常、メールの添付ファイルを開いたり、広告をクリックしたりして感染しますが、AFP通信は「メールを使わずネットワークを利用して端末から端末へ次々感染している」と語る米専門家の話を伝えています。

 一方、ネット上では13日、これ以上の被害拡大を防ぐ「キル・スイッチ」を発見したと主張する情報が早くも現れました。ただ、発見を主張する人物もAFP通信に対し「ウイルス拡散は止められるが、危機は終わらない。犯行集団も手を変えてまた攻撃してくる」と述べました。既に感染したコンピューターの復旧策は見つかっていません。

 マイクロソフトは12日、「3月にすでにこの悪質なソフトから守るアップデートを提供しており、アップデートをした利用者は守られている。攻撃を検知する機能を付加し、さらなる支援をしている」とコメントしました。

(JIJI.COM他より)

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がん細胞に10分で大穴、3年内に治験

 バイオ医薬ベンチャーの日本抗体医薬が、新しいがん医薬品の開発を進めています。膵臓がんや卵巣がんの分野で、がん細胞に穴をあけて殺す攻撃力の高い抗体の実用化を目指し、3年以内に臨床試験(治験)に入るといいます。


新しい作用で

 その技術は、新しい作用でがんを攻撃する抗体薬を作るというもの。順天堂大学医学部の松岡周二助教の研究がもとになっています。



 抗体は特定の異物を認識してくっつくたんぱく質で、異物を排除します。抗体は通常、「補体」と呼ばれる成分や免疫細胞の力を借りて排除していますが、松岡氏が発見した手法で取り出す抗体は、それらがなくても、単独でがん細胞を排除します。がん細胞にくっつくと、10分前後で大きな穴をあけ、破裂させて殺傷します。このような抗体は例がなく、免疫細胞が弱ってしまった末期がんの患者でも、治療が可能です。

 特殊な抗体は以下の方法で作られます。

 まず、マウスに患者のがん細胞X(例えば肝臓がんの細胞)を移植します。2週間ほどするとマウスの中でXを攻撃する力がつきます。次に肺がんなどの細胞Yを移植します。すると今度はYを攻撃する力がつきます。これを繰り返すと、マウスのなかで、XもYもともに攻撃する抗体がつくられるようになります。

 次に、治療したい卵巣がんや膵臓がんの細胞Zをあつかいます。Zに対し、XもYも攻撃する抗体を作る細胞をランダムにふりかけると、Zのどれかに穴が空いて死に、そのZをやっつけた抗体こそが当たりです。その抗体を取り出して薬にします。

 患者から取り出した細胞Zをマウスに入れて、抗体をつくることは簡単にできますが、Zを提供したがん患者にしか効かず、同じ病気の他の患者には使えません。松岡氏の手法は、様々な患者が持つがん細胞Zに効く抗体を探せるといいます。

 松岡氏がこの作用を持つ抗体を発見したのは22年前。「がん細胞の死に方で、大きな穴が空くのを見たのは初めてだった」と振り返ります。


ヒト応用に研究

 そこでヒトに応用させるための研究を続け、2016年にこの手法を完成させました。XとYでマウスを「訓練」することを通じてそうした抗体が作られると予想した通り、汎用性が高い抗体が得られました。ただし、なぜがん細胞に穴ができるかはまだはっきり分かっていません。

 これまでに、血液がんである悪性リンパ腫や、胸部にできる中皮腫などのがん細胞を死滅させる抗体を3種類発見しました。標的にすべき分子が分からなくてもがんが死ぬか否かで探せるので、新薬候補の取得効率は高いといいます。

 安全性に関しては、ヒトの正常細胞には作用しないことを実験で確かめました。ただ、生体に投与した場合どうなるかは不明で、今後実験を重ねる必要があります。また、現在は松岡氏ががん細胞の様子を観察して検索しているため、抗体発見のスピードに限界があります。松岡氏は「患者が多く生存率が低い膵臓がんや卵巣がんでの開発を優先したい」と話しています。


抗体医薬:特定の異物を認識してくっつき、様々な作用で異物を排除する「抗体」を利用したバイオ医薬品。通常、標的となる異物のたんぱく質を認識して結合すると、免疫細胞や「補体」を呼び寄せ、それらががん細胞を攻撃して死滅させる。ミサイルのように狙った標的にピンポイントで届かせることができ、治療効果が高く副作用が少ないとされている。ただし、通常の開発方法では抗体医薬の標的にするたんぱく質の選び方が難しく、また標的に結合しても必ずしも効果を発揮するわけではなく開発は容易ではない。がん免疫薬の「オプジーボ」や、多種類の血液がんに使用される「リツキサン」などのように、全世界で数千億円を売り上げるものが多い。

(日経産業新聞より)