汝いずこに行くや(BWV166)

 復活祭後第4主日に演奏されたカンタータは、1724と1725にライプツィヒで初演された2曲しか現存しません。一昨年と同じBWV166を聴くことにします。

 聖句の引用に始まり、器楽の活躍するコラール編曲を経て、4声のコラールで閉じるという構成です。


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 表題でもあり、モットーとなっているのは「どこへ行くのだ?」という、ヨハネ福音書の言葉です。当日の福音書の文脈では、この句は、弟子たちに別れを告げるイエスは「私が去っていくのは、あなたがたのためになる」と語りますが、カンタータではこの言葉を歌い出す時、その句がキリスト者に変化しています。こうして「人の行くべきところ」を説くのが台本の構想です。

 第3曲のソプラノのコラールと最終楽章のコラールはいずれも人の死をテーマにしており、カンタータの意味を強調しています。 


 グスタフ・レオンハルト指揮、レオンハルト合奏団、テルツ少年合唱団、コレギウム・ヴォカーレ・ゲント、 クリストフ・ウェグマン(BS)、ポール・エスウッド(CT)、クルト・エクウィルツ(T)、マックス・バン・エグモンド(B)の演奏でお聴きください。





汝いずこに行くや(BWV166)

1.アリア(バス)

Wo gehest du hin?
「どこへ行くのだ」

2.アリア(テノlル)


Ich will an den Himmel denken

私は天のことを考えよう。

Und der Welt mein Herz nicht schenken.

この世に心を捧げることはすまい。

Denn ich gehe oder stehe,

なぜなら、行くにしろ立ち止まるにしろ、

So liegt mir die Frag im Sinn:

私の心にこの問いがあるからだ、

Mensch, ach Mensch, wo gehst du hin?

人よ、ああ人よ、どこへ行くのだ、という。

3.コラール(ソプラノ)

Ich bitte dich, Herr Jesu Christ,

お願いします、主イエス・キリストよ、

Halt mich bei den Gedanken

私をこの想念のもとに保ち、

Und lass mich ja zu keiner Frist

いかなる時にも私の

Von dieser Meinung wanken,

この考えが揺らぐことのないようにして

Sondern dabei verharren fest,

それを固く守り通させてください、

Bis dass die Seel aus ihrem Nest

やがて魂が巣立ち

Wird in den Himmel kommen.

天へと向かうその時まで。

4.レチタティーヴォ(バス)

Gleichwie die Regenwasser bald verfließen

雨水がたちまちに流れ去り

Und manche Farben leicht verschießen,

とりどりの色もたやすく褪せるように、

So geht es auch der Freude in der Welt,

この世の喜びも失せていく、

Auf welche mancher Mensch so viele Stücken hält;

多くの人がそれをどれほど価値としたとしても。

Denn ob man gleich zuweilen sieht,

なぜなら、人が時として

Dass sein gewünschtes Glücke blüht,

望ましい幸いの花開くのを見るとはしても、

So kann doch wohl in besten Tagen
おそらくは最良の日々にこそ

Ganz unvermut' die letzte Stunde schlagen.

出し抜けに、最後の刻は打つものだからだ。

5.アリア(アルト)

Man nehme sich in acht,

気をつけなさい。

Wenn das Gelücke lacht.

幸いが笑うときには。

Denn es kann leicht auf Erden

なぜなら、地上では事はたやすく

Vor abends anders werden,

日も暮れぬうちに変わってしまうのですから、

Als man am Morgen nicht gedacht.

朝には思いもしなかった方向へと。

6.コラール

Wer weiß, wie nahe mir mein Ende!

誰が知ろう、私の最期がどれほど近いかを。

Hin geht die Zeit, her kommt der Tod;

時は過き去り、死はやってくる。

Ach wie geschwinde und behände

ああ、何と速く敏速に

Kann kommen meine Todesnot.

死の苦しみがやってくることか。

Mein Gott, ich bitt durch Christi Blut:

神様、キリストの血によってお願いします、

Mach's nur mit meinem Ende gut!

私の終わりをどうか良くしてくたさい。

                       対訳:礒山 雅


ヨハネによる福音書 16,5-15

今わたしは、わたしをお遣わしになった方のもとに行こうとしているが、あなたがたはだれも、『どこへ行くのか』と尋ねない。

むしろ、わたしがこれらのことを話したので、あなたがたの心は悲しみで満たされている。

しかし、実をいうと、わたしが去って行くのはあなたがたのためになる。わたしが去って行かなければ、弁護者はあなたがたのところに来ないからである。わたしが行けば、弁護者をあなたがたのところに送る。

その方が来れば、罪について、義について、また、裁きについて、世の誤りを明らかにする。

罪についてとは、彼らがわたしを信じないこと。

義についてとは、わたしが父のもとに行き、あなたがたがもはやわたしを見なくなること。

また、裁きについてとは、この世の支配者が断罪されることである。

言っておきたいことは、まだたくさんあるが、今、あなたがたには理解できない。

しかし、その方、すなわち、真理の霊が来ると、あなたがたを導いて真理をことごとく悟らせる。その方は、自分から語るのではなく、聞いたことを語り、また、これから起こることをあなたがたに告げるからである。

父が持っておられるものはすべて、わたしのものである。だから、わたしは、『その方がわたしのものを受けて、あなたがたに告げる』と言ったのである。」
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