バイオエタノールで走る燃料電池車、日産が2020年に製品化

 日産自動車はバイオエタノールから取り出した水素で発電して走行する燃料電池車のシステムe-Bio Fuel-Cell(イーバイオ フューエルセル)を発表しました。圧縮水素タンクや、白金など希少金属を使う触媒を必要としないため、トヨタ自動車の「ミライ」やホンダの「クラリティ フューエルセル」と比較してコストを大幅に低減できるといいます。


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ミライやクラリティ フューエルセルとの違い

 日産自動車が発表した燃料電池システムとトヨタ自動車やホンダが発売した燃料電池車は、使用する燃料と燃料電池の種類が異なります。燃料電池の発電に水素と酸素が必要だという点は共通です。

 トヨタ自動車のミライやホンダのクラリティ フューエルセルは、高圧水素タンク内に貯蔵した水素を燃料電池スタックにそのまま送り込んで発電を行います。一方、日産自動車の燃料電池システムは、改質器の中でバイオエタノールに熱を加えると得られる水素を燃料電池スタックに送って発電します。

 使用するバイオエタノールは濃度100%、もしくはエタノール濃度45%の混合水を使用し、燃料電池が不純物に強い仕組みのため、バイオエタノールの純度や品質は特に問わないといいます。



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 一方で、ミライやクラリティ フューエルセルの燃料電池システムは水素と空気中の酸素を反応して電力と水(H2O)を生成し、CO2は排出ません。しかし、バイオエタノールを改質器で分解すると水素と一緒にCO2が発生します。この課題については、バイオエタノールの原料となるサトウキビが成長過程で吸収するCO2と相殺されるとし、大気中のCO2をほとんど増加させずに済むカーボンニュートラルを実現できるといいます。



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バイオエタノールは現実的で低コスト

 日産自動車が燃料電池車の燃料にバイオエタノールを選んだのは、圧縮水素よりも有利な点が幾つかあるためです。

 まず、水素は生産や水素ステーションなど供給インフラに多額の投資が必要になりますが、バイオエタノールはブラジルや北米などさまざまな地域で生産され、流通網が確立しています。ブラジルでは車両にエタノールを補給する給油所も整備されており、イーバイオ フューエルセルのクルマはすぐにでも走ることができる環境です。

 バイオエタノールは燃料コストとしても有利です。濃度45%のエタノール混合水の使用を想定した試算では、ガソリンエンジン車の3分の1の3.1円/kmとなる見込で、同じ走行条件では電気自動車が2.9円/kmだといいます。

 一方、水素ステーションで販売している圧縮水素の価格は1000~1100円/kgで、ミライの走行距離1km当たりのコストは7.7円です。バイオエタノールを燃料とする燃料電池車は、ミライやクラリティ フューエルセルよりも燃料コストが安くなります。


高コストでサイズの大きい圧縮水素タンクが不要

 燃料としての安全性も特徴です。圧縮水素やガソリンは取り扱いに資格が必要ですが、濃度45%のエタノール混合水であれば危険物扱いにはなりません。これにより、高耐圧が求められ、高コストなCFRP(炭素繊維強化プラスチック)を使用する圧縮水素タンクはもちろん、ガソリンや軽油の燃料タンクと比較しても設計や材料のコストを低減できるといいます。サイズの大きい圧縮水素タンクを搭載しないため、車両のパッケージングも容易になります。

 将来的には、ガソリンや軽油よりも手軽で簡易な供給インフラも登場しそうです。物流業者が拠点内にエタノール補給設備を設置して、給油所に行かずに燃料補給することも可能になります。

 日産自動車は、水素を燃料とする燃料電池車も開発していますが、水素生成のコストが高すぎるので製品化の順位としては、バイオエタノールを燃料とする燃料電池車の方が優先度が高といいます。


クルマで初めて使われる「固体酸化物型燃料電池」は触媒いらず

 日産自動車が採用する燃料電池のタイプも、ミライやクラリティ フューエルセルとは異なるポイントです。

 ミライやクラリティ フューエルセルで使われているのは固体高分子型燃料電池で、水素イオンが電解質内を動いて発電します。これに対し、日産自動車が採用する固体酸化物型燃料電池は、酸素イオンが電解質を通過することで発電を行います。

 固体酸化物型燃料電池は純度の低い水素でも発電でき、エネルギー変換効率が高いのが特徴です。効率は60%で、ガソリンエンジンの効率が38~42%なので、およそ1.5倍の高効率となります。


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 固体酸化物型燃料電池は、固体高分子型燃料電池とは違って触媒が不要なのも利点です。700~800℃で動作するため、高温環境で化学反応が進みやすくなります。固体高分子型燃料電池はセル内の湿度の維持が必須で動作温度が低くなるため白金など高価な材料の触媒が必要となります。


クルマで使われなかったのには理由がある

 動作する温度の高さは強みである一方、弱点にもなります。700~800℃まで温度を上げなければ反応が起きず、発電できないためです。開発中の現時点では温度上昇に1~2時間かかり、これが固体酸化物型燃料電池が車載用として使われなかった理由の1つです。

 しかし、燃料電池スタックの材料や工法、動作温度まで上昇させる技術でブレイクスルーが見えてきたので、低温でも反応を維持できる技術も確立されつつあるといいます。こうした要因から、車載用として使うめどがついたとしています。

 量産を目指す2020年までに取り組む技術課題としては、固体酸化物型燃料電池が動作する700~800℃に温度を上昇させる時間の短縮や、燃料電池システムの温度の維持などです。

 具体的には発電可能になるまでの起動時間を現状の1~2時間から10~15分程度まで短縮し、急激な温度上昇に耐えうる燃料電池スタックが必要になります。また効率的に排熱を回収しながらどう温度を維持するかがポイントになるといいます。

(MONOist、スマートジャパンより)
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