寝てもとれない疲れの原因は「いびき」

疲労から回復する唯一の手段は「睡眠」

 健常な人が慢性疲労に陥るとき、最も疲れているのは脳にある自律神経の中枢で、その疲れの直接の原因としては、活性酸素による酸化ストレスが大きく関わっているといいいます。

 酸化ストレスとは、いわば「体のサビ」で、このサビをつけにくくする工夫はいくつかありますが、一度ついてしまったサビを落とすという意味で、疲労から回復する手段は「睡眠」しかないといいます。

 自律神経は、日中活動している限りずっと働き続けているので、睡眠をとらないとリセットできません。

 睡眠というと「何時間寝ればよいか」を考えがちですが、問題なのは“質”です。質が良ければ短時間でも十分で、逆に質が悪ければ、長時間寝ても疲れがとれません。

 睡眠の質は熟睡感で表現されることが多いですが、その通りで、昼間に眠気の強い人は睡眠の質が悪いことが多いといいます。


睡眠の質を悪くする最大の要因は「いびき」


a.jpg


 睡眠の質を悪くする最も大きな要素は「いびき」だといいます。いびきをかいて寝ていると「よく寝ている」と思う人もいますが、それは間違で、いびきは、気道が狭くなっている状態で呼吸をするときに聞こえる、空気が通る音のことです。つまり、気道をストロー、肺を風船に例えれば、細いストローで風船を一所懸命膨らませているようなもので、人は一晩の睡眠で5000~6000回呼吸をするといわれますが、細いストローで風船を膨らませる作業を5000~6000回もくり返せば、呼吸を調整している自律神経が疲弊してしまうのは当然です。

 いびきをかいているときは、運動しているのと同じような状態で、これでは寝ていても疲れはとれません。

 日本人は顔の構造上、あごが小さく引けている形の人が多く、その場合、舌が収まる空間も気道も狭く、いびきが発生しやすくなります。また、飲酒した日の晩などにいびきをかきやすいと自覚する人もいますが、それは、アルコールによって自律神経に麻酔がかかったような状態になり、筋肉のコントロールを失うためです。喉の筋肉が緩む結果、舌が気道へ落ち込み、いびきが発生しやすくなります。

 こうしていびきが眠りの質を落とし、その結果、自律神経が疲れて、さらにいびきをかきやすくなるという悪循環に陥る。これを放置すると、疲労が蓄積し、神経系が対応しきれなくなって、今度は内分泌系がステロイドホルモンを分泌します。このステロイドホルモンが大量に分泌されると、血管を老化させて動脈硬化のリスクを高め、高血糖や肥満、メタボリックシンドロームなどの生活習慣病につながるとされます。最悪の場合、過労死を招く危険すらあります。

 自分ではいびきはさほどないと思っていても、簡易型PSG(ポリソムノグラフィー)検査で睡眠の状態を調べてみると、本人の自覚以上に結果が悪いことが圧倒的に多いといいます。高血圧がサイレントキラーと言われるように、睡眠の質の悪化もサイレントキラーです。


いびきをかく人は2000万人!?

 いびきがひどい場合には、睡眠中に無呼吸も頻発します。日中に極度の眠気があり、PSG検査で睡眠中の無呼吸と低呼吸を合計した回数(無呼吸低呼吸指数=AHI)が1時間あたり5回以上の場合、「睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome=SAS)」と診断されます。

 SASは、疲労とも関連の深い危険な睡眠障害として社会問題にもなっています。診断された人は、「持続陽圧呼吸療法(Continuous Positive Airway Pressure=CPAP(シーパップ)」と呼ばれるプログラムで睡眠効率を改善します。CPAPとは、睡眠時に鼻マスクを装着して、エアチューブから圧を加えた空気を送り込むことで気道を広げ、空気の通りをよくするもの。これによって呼吸すること自体が楽になります。ただし、保険適用でこの治療を受けられるのはAHI20以上の中等症から重症の人だけです。

 いびきをかいて眠っている人は2000万人程度いるといわれていますが、AHI20以上のSASと診断されてCPAPが保険適用となる人は推定約100万人、実際にCPAPを使っている人は約15万人にとどまっています。

 治療の対象とすべきAHI5~20未満の人も相当数います。SASと診断されないまでも、いびきをかきやすい健常な人も多く、そうした中に、昼間の眠気を強く感じたり、疲れが残ったりして悩んでいる人が多く存在します。


疲労回復CPAP被験者の85%以上が改善


c.jpg


 大阪市立大学医学部疲労医学教室は、こうした人たちを対象とする「疲労回復CPAP」のシステムを実用化しました。

 これは睡眠中の低呼吸といびきに応じて空気圧を調整して送り込み、疲労回復を促すようにプログラミングされた機器です。夜はもちろん、昼寝に短時間使うだけでも疲労回復が高いといいます。

 呼吸をし続けるということは、意外にハードな運動です。呼吸を助ける疲労回復CPAPは、以前に流行った酸素カプセルを鼻だけに付けて、さらに、いびき呼吸に合わせて圧を変えた、従来のCPAPの改良型のです。

 睡眠時にこれを付けることによって自律神経や呼吸にかかる負担を減らし、熟睡感のある質の高い睡眠と疲労回復が期待できます。疲労回復CPAPの検証試験を行ったところ、中にはマスクの違和感が強く睡眠中に外れてしまう人もいるので、全員とは言えませんが、朝まで装着し続けることができた被験者の85%以上は、昼間の眠気が格段に改善し、疲労が緩和されたといいます。


いびきを解消し熟睡するためのコツ

 2015年4月から規制緩和により、医療保険適用外であっても、SASの人を対象にCPAPを医療機関で販売・レンタルすることが正式に認められた。AHI20未満であってもCPAPを使うことができる場合があるので、いびきと疲れを自覚する人はまず睡眠外来や睡眠専門クリニックなどで相談してみよう。


d.jpg


 CPAPが合わない人、すぐに装着できない場合の工夫としては、「横を向いて寝ること」です。仰向きに比べて舌の落ち込みを防ぐため、4~5割程度、いびきが軽減するといいます。

 また、いびきとは直接関係はありませんが、胃の中に食べ物が入っている状態で寝るときには、右を下にして横向きに寝るほうが、胃の中の食べ物がスムーズに出口に向かって流れ、消化が促進され、熟睡につながりやすいそうです。

 横向きに眠るためのコツとしては、「抱き枕を使う」「テニスボールなどを入れたポシェットを背中に巻いて寝る」(寝返りを打つとボールが背中に当たるので、横向きを維持したまま寝られる)などが挙げられます。

 また、広い意味で睡眠中に自律神経を休め、安眠を得るためには、次のような工夫も効果的だといいます。なかなかとれない慢性疲労に悩んでいるなら、まずはいびきのチェックと睡眠の質を改善する工夫を試してみましょう。


無題.png


(日経Goodayより)
スポンサーサイト
コメント
コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する