アルツハイマー病のリスク低減のために有効な対策とは?

 アルツハイマー病の最大のリスク要因は、加齢と遺伝的素因です。つまり、誰でも年齢を重ねるにつれてリスクは高まり、遺伝的変異のある人も高いリスクにさらされています。しかし、自分でコントロールできないそれらの要因とは別に、私たちの活動やライフスタイルの中に、良くも悪くもリスクに影響を与える要因があるといいます。


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 研究によって、異なる複数の要素がアルツハイマー病と関連づけられています。それらの要素が原因で、脳内に原因物質が蓄積されるということではないかもしれませんが、少なくとも蓄積されるスピードや、蓄積が引き起こされる年齢、私たちがそれに対処する能力には影響を及ぼす可能性があります。

 複数の研究で明らかになった、「アルツハイマー病を発症するリスクに影響を及ぼす可能性がある要素」です。“特効薬”はありませんが、できる限り実行すれば長い目で見て効果があるかもしれません。


食生活

 特定の食べ物がアルツハイマー病のリスクを軽減できるかどうかは、はっきりしていませんが、総合的な食生活は影響がある可能性があります。例えば、米国医師会が発行する医学雑誌「The Journal of the American Medical Association」で発表された新たな研究では、遺伝的素因を強く持つ人であれば、水銀含有量に関係なく魚全般がリスク軽減と関連があることが示されました。

 一方で一部の研究者は、どのような人であれ、特定の食べ物が単体で発症リスクに影響を及ぼすことを示す、説得力のある証拠はないと言っています。とはいえ、長い目で見た場合、総合的な食生活は、少なくとも症状の度合いや発症時期に影響を及ぼす可能性があります。実際、手軽で健康的だとして高く評価されているMIND食事法の主な目的は、認知症のリスク軽減です。2015年に米ラッシュ大学の研究者が行った調査では、MINDを約4年半にわたって忠実に実行した人は、認知症のリスクが50%以上減少。ほどほどに実行した人でも35%減少しました。



 MINDで積極的に摂取すべきとしている食べ物は、葉物をはじめとするあらゆる野菜、ナッツ類、ベリー類(特にブルーベリー)、豆類、精白していない穀類、魚、鶏肉、オリーブオイルと少量のワイン。避けるべきは、赤身の肉、バターやマーガリン、チーズ、菓子パンやその他の菓子類、揚げ物またはファストフードです。

 心臓に良いとされるDASH食事法と、認知力の低下やアルツハイマーの進行のリスク低減に関連があるとされている、地中海食事法を組み合わせたものです。しかし推奨されている食べ物が単体で、アルツハイマー病のリスク低減に効果があるかどうかは明らかになっていません。魚やブルーベリーだけを食べて、そのほかの努力をしなかった場合には、あまり効果は見込めないでしょう。


運動

 運動と脳の健康の関連性は強く、各種研究でも次々と確認されています。運動することで脳の血流が増え、脳に送られる酸素が増えることが、その根拠である可能性があります。また運動は脳の中でも学習と記憶をつかさどる“海馬”に新たなニューロンを生成する上でも役に立つとみられます。ニューロンは加齢やアルツハイマーが原因で減少することが分かっています。



 一部の研究では、遺伝的にアルツハイマーになるリスクがある人は、運動をすることが海馬の維持に有効な可能性があるとされています。また別の研究でも、運動によって発症を遅らせたり発症リスクを減らせる可能性が多く示唆されています。運動がアルツハイマーのリスクを明らかに減少させるとまでは言わないものの、運動が一般的な予防として有効であることは確かなようです。


心臓

 運動と認知症の関連性の根拠ともいえるのが、心臓と脳の間にみられる明らかな関係です。例えば喫煙は、心臓とも認知症とも関連が指摘されています。体重過多、肥満、座りっぱなしの運動不足、高血圧や糖尿病も同様です。つまり心臓に良いと知られていること――食べ物、ライフスタイルにおける選択や運動――は脳にとっても良く、逆も然りです。

 「おそらく、ライフスタイルに関連するこれらの全ての要素が心臓血管疾患や脳血管疾患に関連のある共通の特徴だ」と、メイヨー・クリニックのデービッド・クノップマン研究員は言います。

 悪いライフスタイルを減らし、良い方(たとえば運動)を増やすことで心臓血管疾患のリスクが減少すると考えられています。そしてそれによって、心臓血管疾患によって引き起こされる脳の損傷(脳卒中、密かに進行する血管劣化など)が減少すると考えられています。

 つまり言い換えると、運動は心臓血管に影響を及ぼす可能性があります。コーヒーが認知症リスクの低減と関連があるという証拠も一部ありますが、それも最近判明したように、心臓血管の健康につながりがあるからかもしれません。


教育/精神活動

 クロスワードや数独が認知症予防になり得るという話をよく聞きますが、これらの活動が実際に発症リスクにどのような影響を及ぼすかについては、それを裏付ける証拠もあれば、そうではない証拠もあります。最近、総合医学雑誌「The New England Journal of Medicine」に発表されたある研究が注目を集めました。少なくとも高校までの教育を受けている人は、そうでない人に比べて発症率が減っているという報告で、教育になんらかの予防効果がある可能性が示唆されています。


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 また別の研究では、アルツハイマー病の遺伝的リスクがより高い人のうち、中年期に活発な精神活動を維持した人は、そうしなかった人に比べて脳内のアミロイド班の蓄積量が少なかったことが判明しました。遺伝的素因のない人については、あまり明確な関連は見られませんでした。

 前出のクノップマンは、精神的な刺激は年齢を重ねてから始めるのではなく、生涯を通しての取り組みがベストだと付け加えています。おそらくこれらの活動が豊かな脳の機能的結合の発達を刺激し、それによって脳の予備力を増やすことで認知症を予防する可能性があります。

 言い換えれば、より多くの教育を受けた人や、より豊かな知的生活をしている人は、アルツハイマー病を発症した際に使うことのできる予備力がより多くあり、より高い抵抗力がある可能性があります。認知活動が脳内の原因物質の生成や蓄積を止める訳ではありません。生涯を通して認知活動との関わりがより少ない人に比べて、多い人の脳の方が、脳の病的状態がもたらす影響に抵抗する能力が高いということです。


心の健康

 理由は判明していませんが、一部の研究では、鬱や慢性的ストレスのような心の健康とアルツハイマー病の関連が指摘されています。どちらが先かははっきりしておらず、鬱やストレスはアルツハイマーの初期症状なのかもしれません。あるいは、どちらの症状も認知症リスクを高めるのかもしれません。または精神活動が人をより“強く”するのと同じように、心の健康を損なうと人はより“弱く”なるのかもしれません。いずれにせよ、心の健康に留意することは常に重要です。

(Alice G. Walton ―Forbesより画像追加)
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