男性ホルモンが減ると、うつ病になりやすい?

 ここ数年、男性ホルモンに対する関心が高まっています。男性ホルモンと言うと“下半身”の話を連想しますが、それだけではありません。全身の筋肉を増やし、体脂肪を減らす作用もあり、男性ホルモンが減るとメタボリックシンドロームになるリスクが高くなり、寿命が短くなることも分かっています。

男性ホルモンが作用する体の部位


1.png


猿山で男性ホルモンが高いのはボス猿

 加えて、男性ホルモンの「精神面」への影響も近年の研究で明らかにされてきています。男性ホルモンはリーダーシップや積極性と深く関係しています。猿山で行った調査によると、いちばん男性ホルモンが高いのはボス猿でした。ボスの座から失脚すると、男性ホルモンも少なくなるといいます。

 そう聞くと、男性ホルモンが多い人は荒々しく、攻撃的になりそうな気がしますが、某人気アニメのガキ大将キャラクターのように、すぐに腕力に訴え、お前のものはオレのものと言いそうです。ところが、実際はそんなことはなく、むしろ、公正さを求める気持ちが強くなるといいます。


男性ホルモンが多い人はウソをつかない!?

 平均年齢24歳の男性91人を2グループに分け、一方にテストステロン(主要な男性ホルモン)を、もう一方にプラセボ(偽薬)を服用してもらいました。個室で0から5の目があるサイコロを振ってもらい、出た目を自己申告させる実験をしました。出た目が大きいほど、たくさんの賞金をもらえることになっています。

 誰も見ていないので、当然「(実際より)大きな目」を申告する人も多くなり、最大の「5」が出る確率は6分の1、すなわち約17%しかないはずですが、プラセボのグループでは62.2%もいました。一方、テストステロンのグループで「5」が出たと言ったのは34.8%で、半分近い割合に抑えられたといおます。

 この実験の結果から見ると、男性ホルモンが多い人は卑怯なことをせず、“倫理的な”行動を取るようになったわけです。


男性ホルモンを与えるとウソをつかなくなる

2.png

 男性ホルモンが多い人は出世しやすい傾向もあるといいます。ウソをつかず他人に公正に接し、無用な対立を避けるほうが結果的に出世につながるということかもしれません。考えてみれば、他人を蹴落として自分の利益ばかり追求していては人望が得られないでしょう。

 攻撃的にはならなくても、男性ホルモンが多い人は精力的で元気が良くなり、外に出て、積極的に他人とかかわろうという意欲を起こさせます。また、リスクを恐れない冒険心も強くな、テストステロンは社会性のホルモンだといいます。


男性ホルモンが少ないと、うつ病になりやすい

 これに対して、家にひきこもって人と会わない生活をしている人は、男性ホルモンの分泌が少なくなることが知られています。その結果、人と会う気になりにくく、ますます出かけるのがおっくうになります。

 テストステロンの数値が極端に低くなった状態を、男性更年期障害とかLOH症候群(加齢男性性腺機能低下症候群)と呼びますが、その「診療の手引き」には主な症状として「抑うつ」が挙げられています。2015年の米国内分泌学会の第97回年次会議でも、「男性ホルモンとうつ」の関係が報告されました。テストステロンが標準よりも低い20~77歳の男性200人のうち、実に56%にうつ症状が見られ、25%は抗うつ薬を使っていました。


3.jpg


 日本でも男性更年期外来の受診患者のうち47.8%がうつ病だったという報告があります。テストステロンが低いと、うつ病のリスクが高くなるのは間違なく、男性更年期外来を受診した患者では175人のうち140人、80.0%にうつ症状が見られたといいます。うつ症状が見られる人の中にはうつ病までいかないレベルの人も含まれますがが、それにしてもすごい数字です。

 テストステロンが低くなると、なぜうつ病になりやすくなるのか、正確なメカニズムは分かっていません。もともとテストステロンは「外に出て人と会おう」という意欲を高める社会性のホルモンで、減ると行動するのがおっくうになり、人とかかわりたくなくなるのも納得できます。

 一説には脳の扁桃体(へんとうたい)が関係しているといいます。扁桃体とは感情の処理や記憶を担う部位で、普段思い出したくない恐怖の記憶がため込まれている部分とされます。テストステロンはこれにフタをする働きがあり、テストステロンが少なくなるとフタがゆるみ、抑えられていた恐怖の記憶がよみがえるため、不安感や恐怖感が強くなるといいます。

 逆に、うつ病の患者にテストステロンを投与すると改善する人が多い、という研究もあります。最近、やる気がしない、人と会いたくなくなった、という人は男性ホルモンが減っているのかもしれません。


認知症が改善したという報告も

 最近は男性ホルモンと認知機能の関係も注目されています。テストステロンの投与によって、認知症が改善したという報告は国内にも海外にもあります。

 国内では東京大学大学院医学系研究科加齢医学講座の秋下雅弘教授らが行った研究が知られています。平均年齢81歳の認知症の男性24人を2グループに分け、一方にだけ1日40mgのテストステロンを飲ませました。3ヵ月後と6ヵ月後に調べると、テストステロンのグループだけ認知機能が改善していたといいます。


4.jpg


 このように、テストステロン補充療法は画期的な成果が出ているますが、安全性が完全に確認されているわけではありません。心臓病のリスクが高まるといった報告もあります。

 テストステロンの分泌量は、ちょっとしたことで大きく変わります。勝負に勝つと上がり、負けると下がります。また、運動で筋肉に刺激を与えると分泌が高まることも知られています。睡眠、食事、運動も大切ですが、人と会うことも効果があります。テストステロンは社会性のホルモンなので、人と会うだけでも分泌が増えるといいます。

 逆にテストステロンを下げるのはストレスです。規則正しい生活を心がけるとともに、オフタイムは積極的に友人と会い、上手にストレスを解消しましょう。テストステロン=男性ホルモンが増えれば気持ちも明るくなり、やる気も出て、毎日がもっと楽しくなるはずです!

(日経Goodayより、画像追加編集)
スポンサーサイト
コメント
コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する