3人の遺伝子を受け継ぐ子ども誕生

 3人の遺伝子を受け継ぐ新たな体外受精の技術を使って男の赤ちゃんが生まれたと、米国の不妊治療クリニックのチームが27日、英科学誌「ニューサイエンティスト」に明らかにしました。

 米ニューヨークにある不妊治療クリニックに所属するジョン・ザン医師らのグループが、重い遺伝性の病気「ミトコンドリア病」の36歳の母親の卵子から核を取り出し、あらかじめ核を取り除いた第三者の女性の卵子に入れた後、父親の精子と体外受精させました。五つの受精卵のうち正常に育った一つを母親の子宮に戻しました。

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 ニューサイエンティスト誌によると、体外受精はメキシコで行われ、今年4月に男児が誕生し、順調に育っているといいます。米国では認められていないため、ザン医師は「規制のないメキシコで実施した」と同誌に語っています。

 ミトコンドリアは、細胞の核とは別に独自のDNAを持ち、核DNAは両親のものが子どもに遺伝しますが、ミトコンドリアは母親のものだけが受け継がれます。今回の技術を使った場合、核DNAは両親から、ミトコンドリアDNAは卵子提供者からそれぞれ受け継がれるため、遺伝的に「3人の親」を持つことになります。

 ミトコンドリアは細胞内でエネルギーのもとになる物質をつくる働きをしており、ミトコンドリアに異常があると、神経や筋肉に障害が出ることがあります。この母親も以前に2人の子どもをミトコンドリア病で亡くしているといいます。

 今回の技術は、理論的には母親のミトコンドリアが受け継がれないため、ミトコンドリア病の予防につながります。同誌によると、男児のミトコンドリアDNAに今のところ異常はみられないが、今後も注視する必要があるとしています。

 この技術を巡っては、昨年2月に英国で臨床応用が承認されました。米国でも今年2月、有識者のアカデミーが臨床試験で実施することに倫理的に大きな問題はないとする答申をまとめています。ただ、将来に及ぶ安全面の不安や倫理上の懸念から反対意見や慎重論もあります。

 東京大の神里彩子特任准教授(生命倫理政策)は「実用化に向けて議論が進んでいる英国でも、まだ科学的な安全性の検証が続いている中で、長期のフォローアップや出自を知る権利などの体制があいまいなまま実施されたのではないかと疑問に感じる。これが前例となり世界に影響がでることが心配される。日本でも生殖の技術に関する規制を議論していく必要がある」と話しています。


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ミトコンドリア病

 エネルギーのもとになる物質をつくるミトコンドリアの働きが低下することで起きる病気の総称。ヒトの細胞にはDNAを持つ核の周りにミトコンドリアなどの小器官がある。ミトコンドリアDNAは母から子に受け継がれるため異常も受け継がれる。筋肉や神経などに症状が出やすいとされる。英国やフィンランドの統計では、10万人に9~16人がいるとの報告がある。

(朝日新聞Digitalより)
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