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「音楽で感動できるタイプ」かどうかは脳内部位の連携の活発さに左右されていることが判明

 たとえ同じ音楽を聴いたとしても、強く感動する人がいる一方で、何も感じない人がいるように、その反応は人によってさまざまなものです。その背景には「感受性の違い」と説明されることも多いわけですが、脳内の働きを調査した研究の結果からは脳機能そのものに違いがあることがわかっています。



 脳内の神経を可視化する「ニューロイメージング」を用いて過去に実施された研究により、音楽を聴くことで得られる快感には脳の聴覚系と報酬系の相互作用が関連していることがすでにわかっていました。そして今回、バルセロナ大学のNoelia Martínez-Molina氏らによる研究チームはさらに、音楽によって快感を得られない人は、音楽を聴いたときに生じる脳内の2つの部位の活動量が低いことを明らかにしています。

 研究チームは、「音楽に関心がある人」と「音楽に普通に反応する人」、そして「音楽で強く感動する人」の3グループでそれぞれ15名の参加者を集め、脳内の血流を視覚化するfMRI(磁気共鳴機能画像法)を用いることで実際に音楽を聴いている時の脳の働きを検証しました。なお、結果のバイアスを排除するために、参加者には音楽の訓練を積んでいるミュージシャンを含めなかったとのこと。

 各グループの参加者はまず、個々人がそれぞれ「感情的に心地がよい (emotionally pleasing)」と感じるインスト曲(歌なしの楽曲)を2曲準備するよう求められました。これはもちろん、音楽に関心がない人にとっては簡単な作業ではありません。次に、研究チームは持ち寄られた楽曲を補完するために、音楽ストリーミングサービス「Spotify」の楽曲マッチングアルゴリズムを用いて、似たタイプの楽曲を集めました。そして研究チームは、これらの楽曲を聴いているときと、例えばギャンブルなどの「伝統的な報酬的なアクティビティ」を行っている時の脳の活動をfMRIを用いて解析しました。

 その結果、音楽に関心がない人が音楽を聴いた時、脳の中では聴覚系と報酬系を含む部位、とりわけ報酬系に役割を果たしていると考えられている側坐核における血流量が、他のグループに比べて少ないことがわかったとのこと。一方で、「伝統的な報酬的なアクティビティ」を行っている時にはほかのグループとの間に顕著な違いは見られないことから、この状況は脳機能の不全から生じているものではなく、音楽に関心を示さない人にとっては単に音楽そのものが「響かない」ものであることが浮き彫りになっています。

 前述のように研究チームは、グループ間で活動量に違いがあることを突き詰めた時、この原因が脳の機能不全にあるのではないかと考えました。具体的にいうと、脳で音楽を解釈する部位と報酬系をつなぐ連絡部分の接続能力がそもそも低いという仮説になるのですが、この仮説を検証するため研究チームは、聴覚系と報酬系の部位に強い関連が存在するかどうかを確認しました。

 その結果、音楽に関心がない人はこれらの部位の「機能的結合性 (Functional connectivity)」が弱いことが明らかになりました。機能的結合性とは、物理的な脳神経細胞のつながりではなく、特定の刺激を受けた際に生じる脳の部位間におけるつながりのことで、ある刺激に対する脳の反応の強さを見ることで、その人の脳がどのように反応しているのかを見ることができます。

 この結果から、音楽に関心がない人の脳では、上側頭回および腹側線条体、側坐核といった部位の反応が、ほかのグループの人に対して低いことがわかったとのこと。この結果について研究チームは、音楽を聴いて快感や感動を得られない人の脳では、聴覚皮質と中脳辺縁系の報酬系の伝達が少ないことを示している、としています。

(Ars Technica―Gigazineより)
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