がん細胞を破壊する「近赤外光線免疫治療法」に世界が瞠目!

 人体に無害な近赤外線を照射してがん細胞を消滅させる新しい治療法の開発が、世界の注目を集めています。米国立がん研究所(NCI)の小林久隆・主任研究員が開発がん患者を対象にする臨床試験も順調に進み、2~3年後の実用化を目指しています。

 がん治療法には、「外科手術」「放射線療法」「化学療法」の3つがありますが、外科手術は患者の身体への負担が大きく、他の2つは副作用があり、転移・再発防止などにも課題がありました。これに対し小林氏の開発した新しい治療法は、がん細胞の死滅率が極めて高く、ほとんどのがんに適用できるといいます。転移がんにも有効で、副作用もなく、必要な設備や薬品は安価なので、医療費の削減にも大いに貢献しそうです。




近赤外線の当たったがん細胞は1,2分でバタバタと破壊される

 この治療法は、がん細胞だけに特異的に結合する抗体を利用し、その抗体に、近赤外線によって化学反応を起こす物質(IR700)を付け、静脈注射で体内に入れます。抗体はがん細胞に届いて結合するので、そこに近赤外線の光を照射すると、化学反応を起こしてがん細胞を破壊します。

 近赤外線は、波長が可視光と赤外線の中間に位置する光で、治療には近赤外線のうち、波長がもっとも短く(700ナノメートル:nm、1nmは10億分の1メートル)エネルギーが高い光を使います。IR700はフタロシアニンという色素で、波長700nmの近赤外線のエネルギーを吸収する性質を持っているので、その化学反応で変化したIR700ががん細胞の膜にある抗体の結合したたんぱく質を変性させ、細胞膜の機能を失わせることによって1~2分という極めて短時間でがん細胞を破壊します。

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これほどがん細胞の選択性が高い治療方法は過去になかった

 この治療法には、ほぼ副作用はなく、安全性が確認されています。がん以外の正常細胞には抗体が結合しないので、近赤外線が当たっても害はなく、また抗体が結合したがん細胞でも、この特殊な近赤外光が当たらなければ破壊されません。つまり抗体が結合して、かつ光が当たったがん細胞だけを破壊するという高い選択性を持つ治療法です。これほど選択性が高いがんの治療法は過去にありませんでした。

 近赤外線はテレビのリモコンや果物の糖度測定などに使われるおなじみの光です。可視光と違って人体をある程度深くまで透過しますが、全く無害です。抗体は、米国食品医薬品局(FDA)ががん治療に使うものを20数種類認可しており、IR700は、本来は水に溶けない物質で体内に入りませんが、中にシリカ(ケイ素)を入れて、水に溶ける性質に変えています。1日で尿中に溶けて排出されるので、これも人体には無害だといいます。


全身のがんの8~9割はこの治療方でカバーできる

 皮膚がんのような身体の表面に近いものだけでなく、食道がん、膀胱がん、大腸がん、肝臓がん、すい臓がん、腎臓がんなど、全身のがんの8~9割はこの治療法でカバーできるといわれます。近赤外線の照射はがんの部位に応じて、体の外から当てることもあれば、内視鏡を使うこともできます。がんの大きさが3cmを超えるような場合は、がんの塊に細い針付きのチューブを刺し、針を抜いて代わりに光ファイバーを入れ、塊の内側から近赤外線を照射します。


転移がんは活性化した免疫細胞が攻撃に行く

 転移がんについては、2つの方法を使います。1つはがん細胞に光を当てる方法です。この方法でがん細胞を壊すと、いろいろながんの抗原(壊れたタンパク質)が一斉に露出します。すると、正常の細胞は全く治療の影響を受けないので、すぐ近くにいる健康な免疫細胞がこの抗原を食べて情報をリンパ球に伝えます。リンパ球は分裂して、その抗原を持つ他の場所にあるがん(転移がん)を攻撃しに行きます。

 もう1つはがん細胞を直接壊すのではなく、がん細胞の近くにいる免疫細胞ががん細胞を攻撃することを邪魔している免疫抑制細胞の中で主要な細胞である制御性T細胞を叩く方法です。この方法では、IR700を付けた抗体を制御性T細胞に結合させ、近赤外線を当てて壊します。するとがん細胞の近くにいる免疫細胞は邪魔者がいなくなるので直ちに「OFF」から「ON」に切り替わり、数十分のうちに活性化してがん細胞を壊します。さらに血流に乗って全身を巡り、わずか数時間のうちに転移がんを攻撃し始めます。がん腫瘍内にいる免疫細胞はほとんどすべて、がん細胞のみを攻撃するように教育されており、免疫の効きすぎが原因になる自己免疫疾患のような従来の免疫治療で起こる副作用は起きないので安心です。

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費用は安く、日帰りの外来治療でOK

 近赤外線はレーザー光発生装置で発生させますが、機器自体の値段は約300万円ぐらいですから、普通の医療機器に比べれば2桁ぐらい安く、しかも日帰りの外来治療で済み、入院してもせいぜい1泊で済みます。この治療法が普及すれば医療費の削減につながり、医療費の増加に悩む社会にとって大きなメリットになるでしょう。

(IBM mugendai、HealthPress他より)
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