遺伝子検査は「高価な占い」?

病気の発症に関係している遺伝子は全体の2%

 遺伝子の本体はDNAであり、生命の設計図と言われています。人間の体には約60兆個の細胞がありますが、体のどの細胞にもDNAがあります。ひとりの人間は、どこの細胞も同じDNAです。そして個人ごとに違いがあり、さらに一生で変わることがありません。ですから指紋と同じように個人識別に利用できるわけです。

 以前はDNAを抽出するのに、その人の血液から採取していました。しかし、近年では主として口腔粘膜の細胞を採取し、その中に含まれているDNAを抽出することができるようになりました。医師や医師の指示のもとに行われる採血という手続を踏まなくてもDNAが抽出できるようになったわけです。



 遺伝子の本体であるDNAのうち、体の特徴や病気の発症に関係しているのは、すベての遺伝子のわずか2%にすぎないそうです。さらに、ある遺伝子配列のたったひとつの塩基が異なっているだけで、重篤な病気を発症することがあります。

 たとえば、生まれつき痙攣を多く発症し、筋肉の緊張が低下し、さらに運動が正常に行えないミトコンドリア病などがあります。これらの多くは、細胞の活動や増殖に必要なミトコンドリアを作るDNAのたったひとつの塩基が変異することで、正常な働きができずに病気を発症します。このように、疾患の発症原因が遺伝子の異常によって診断される病気が確実にあります。

 そこでがんについて考えてみると多くのがんは、関係する遺伝子の変異によって生じますが、生まれつきの要因で起こるだけでなく、環境要因などの影響を強く受ける、いわゆる多因子疾患です。

 乳がんは日本人女性の約18人に1人が生涯のうちに罹患するといわれています。そのうちの5~10%に遺伝要因が強く関与しているといわれ、その中で最も多いのがBRCA1およびBRCA2という遺伝子です。これらの遺伝子に変異があると、乳がん発症のリスクが3~11倍になることがわかっています。アンジェリーナ・ジョリーは、この遺伝子に変異があり、乳がんの発症を恐れて乳房を切除したわけです。

 同様に肥満や高血圧などの生活習慣病なども、特定の遺伝子変異があると発症の危険性が高くなることが近年の研究でわかってきました。しかし、生活習慣病のほとんどは、環境要因の影響が大きい多因子疾患です。

 つまり特定の生活環境要因が加わることで発症の危険性は高くなり、逆に遺伝的に発症しやすい場合でも生活習慣を適切なものにすれば発症を抑えることができるわけです。

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遺伝子の異常で発症するのはごく一部

 インターネットでは200種類以上の測定ができる遺伝子検査キット、太りやすいかどうかの体質がわかる遺伝子の検査など、多くの検査や製品が紹介されています。誰でも手軽に遺伝子検査ができる時代になったわけです。

 また、口腔粘膜を擦ったものを会社に送付すれば、そこでDNAが抽出できるので、一斉に遺伝子の検査ができるというわけです。そして日本人の平均に比べて、さまざまな病気の発症の危険性がどのくらい高いのかなどが、個々人に対して判断されます。

 このような検査を行う目的は何でしょうか? 数字を出すことで、もし肥満になりやすい体質であることがわかれば、日頃から食生活や運動習慣に気を付け、病気の予防が推進できるということでしょう。

 しかし、ある遺伝子の異常によって必ず疾患が発症することがわかっているのは、ごく一部です。しかも、そのような疾患については慎重な診断とともに、その後に適切な医学的カウンセリングや指導が必要とされるので、民間の遺伝子検査では扱えません。そのほかの多くの疾患は環境要因などが重なって病気の発症が決まるといいます。

 ですから、遺伝子検査の結果を安易に解釈することは危険です。ある高名な医師はこのような遺伝子検査のことを「高価な占い」と表現しています。

(HealthPressより)
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