爆食で日本危機、世界の食糧奪い合いに

 総務省統計局の「世界の統計2016」によると15年の世界人口は約73億人。25年には80億人を突破するとみられています。人口増加は労働力が増えて経済を押し上げる要因になりますが、一方で地球上の資源と環境に大きな負荷をかけます。


穀物生産の半分は飼料

 世界の穀物市場をみると13年から生産量が拡大し、3年連続で豊作です。米国の農務省によると、16~17年の世界穀物生産量は25億4249万トンで史上最高を更新する見通しです。4年連続の豊作となれば供給は十分に足りていると見られますが、世界の穀物消費量は今世紀に入ってからほぼ前年を下回ることなく過去最高を記録し続けています。供給は増減産を繰り返しながら伸びてきているのに比べ、需要が均等に伸びています。

 農業は自然の影響を受け、地球温暖化などにより、以前より生産リスクが高まり、供給の推移にバラツキが出てきました。これに対して需要が均等に伸びることで、穀物価格の変動リスクが非常に大きくなりました。最近でも3年連続の豊作を受け、穀物価格は急落。12~13年の値段からみると半値以下になりました。昔は低いレベルで循環的に動いていましたが、ダイナミックに上がったり下がったりします。ますます不安定性を増して、今後需給にショックがあれば瞬間的にオーバーシュートする可能性も考えられます。



肉食文化が人類を圧迫

 中国やインドなど、新興国の経済が発展し、所得が増加したため食生活が豊かになり、肉食が増えています。飼料穀物の拡大の結果、全体の需要が均等に伸びています。畜産物1キロの生産に、その何倍もの飼料穀物が使われます。牛肉なら11キロ。豚肉なら7キロ。鶏肉なら4キロの穀物が必要です。別の言い方をすると穀物の半分は余っているが、それを豊かな人たちが食肉にして食べてしまっています。世界に飽食の人は約20億で、その一方、飢餓で苦しむ人が約10億いるとされています。毎日数万人の人が餓死しています。絶対量というより分配に問題があるといいます。

 異常気象が恒常化した近年では、不測の事態がいつ起こっても不思議ではありません。現在の食糧市場は需給にショックがあると価格が暴騰しやすい状態で、不測の事態になれば高値期待の投機マネーが入ります。すると不安心理で穀物の生産国が自国の食糧を守ろうとして輸出規制を始めます。


食糧は武器という戦略

 米国やEUは、食糧に対して日本と違う認識を持っているといいます。食糧は国を守る重要な安全保障の要で、その認識から先進国では国を挙げて農業を守っています。

1.jpg

 こうした状況の中、日本の食糧事情を眺めてみると不安になります。農林水産省の資料によると15年度の食料自給率(カロリーベース)は39%。基礎食料である穀物の自給率は28%(11年試算)と先進国の中でも際立って低い。輸入額に比べて輸出額が少なく、世界1位の農産物の純輸入国で、安全保障の要を海外に依存している状態です。

 日本の穀物生産量は1千万トン程度。対してイギリスは、人口は日本の半分、国土面積も3分の2ですが日本の倍以上の穀物を生産しています。日本が食糧生産小国で済んでいるのは、年間3千万トンの穀物を輸入しているからです。つまり穀物は不足しています。にもかかわらず、この40年間、国産は過剰といわれてきました。いわば過剰と不足が併存しているのが日本の農業の問題であり特徴です。これが消費者に“食糧は安心”という錯覚を抱かせてしまっています。


高齢者に頼る国内農業

 これまではいくらでも安く良質なものが海外から買えました。しかし、中国やインドなど新興国の需要が拡大し「そんな環境は終わった」といいます。

 改めて国内農業が見直されつつありますが、農業の衰退は止まらず、もはや消費者の期待に応える生産力はありません。農業就業人口は1990年の482万人から10年には260万人に減少。平均年齢は当時で66歳。やめたがっている農家は多いといいます。


もし、輸入ゼロになったら

 野菜や果物は作れるので、なんとかしのぐことはできますが、基礎食糧の穀物が手に入らなくなります。農水省の食料・農業・農村基本計画には、輸入ゼロになったときの食事メニューが載っていますが、イモばっかりで、まるで戦時中の話です。戦時中は甲子園球場がイモ畑になったという逸話があります。現在でも需給ショックの種はいくらでもあり、10年以内に危機的状況に陥っても不思議ではありません。

 対策のひとつは、地産地消、旬産旬消の意識を高めることだと関係者は口をそろえます。地域ごとに循環型のコミュニティーが活性化することで、国内農業を守ることにも繋がります。

(dot.より要約)
スポンサーサイト
コメント
コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する