小型衛星で世界にネット網を構築

 小型通信衛星を地球に近い低軌道へ多数打ち上げ、世界全域をカバーする通信網を構築する構想が動き出しました。欧州エアバスや英ヴァージン・グループが出資する米ワンウェブ、宇宙開発の米スペースXといったベンチャー企業に加え、米航空機大手ボーイングなども事業計画を具体化しています。既存の通信網では採算を見込みにくい新興国や辺境地でもサービス展開を狙うといいます。



 ワンウェブにはソフトバンクグループも10億ドル(約1170億円)の出資を決めました。創業者のグレッグ・ワイラー会長は「計3千億円以上を投じ、882基の衛星を配置する」と計画の概要を明らかにしました。

 小型衛星は高度1200キロメートル付近に配置します。高度3万キロメートルを超える静止軌道に配置する通常の大型衛星に比べ打ち上げ単価が安いのが特徴。大型衛星の打ち上げに相乗りしたり、数十基をまとめて打ち上げたりできるため、数が多くてもコストを抑えられます。

 地上側には10キロメートル間隔で簡易型の小型受信端末や中継端末を設置します。ワイラー氏は「地域の経済状況に合わせ、低コストで効率的な地球規模のインターネット接続網を実現する」と語っています。

 ワンウェブは2017年中にも1号機を打ち上げ、19年にもサービスを始める予定です。打ち上げにはヴァージン製のロケットも使います。フロリダ州に工場を建設し、衛星の自社生産も計画しています。

 電気自動車のテスラモーターズで知られる起業家イーロン・マスク氏が率いるスペースXは11月中旬、米連邦通信委員会(FCC)に具体的な事業計画や周波数帯利用を申請しました。まず800基を打ち上げ、最終的には4425基まで増やす計画で、サービス地域は北米から世界へと広げるといいます。ボーイングも6月に1396基の配置計画を申請済み。最終的には3千基まで増やす計画です。


ネット接続のない世帯の割合

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 国際電気通信連合(ITU)によるとネットの世帯普及率はアジア太平洋地域で4割、アフリカでは1割にとどまります。世界人口の半分はまだネットを利用できていません。既存の通信大手は投資効率を考え、需要が多い都市部にインフラ投資を集中させがちです。対するワンウェブなどは後発新興国や人口密度の低いへき地でも事業を展開するといいます。

 小型衛星を使い広域通信網を構築する試みは1990年代からありましたが、インフラ整備が高コストだったうえ、需要自体が限られていたため軍事や船舶、油田向けなど用途限定のサービスしか生き残っていません。

 ここにきて構想が相次ぐのは、衛星コストが劇的に下がったことが大きく、蓄電池や半導体の性能向上が進み、製造コストはかつての10分の1以下に下がりました。打ち上げコストもスペースXに代表される民間企業の参入で下がり始めています。

 一方、格安スマートフォンが登場・普及し、ネット接続の需要が拡大していることも事業化を後押しています。低所得層が多い後発新興国や需要が少ないと思われた辺境地で一般消費者だけでなく政府や企業向けの情報提供サービスの利用が見込めるようになったためです。

 小型衛星では米グーグルが地図や広告へのデータ活用を模索。米ベンチャー企業のオービタル・インサイトは石油備蓄基地や駐車場などの画像を解析し、情報を販売します。ワンウェブに出資する米コカ・コーラは、へき地に点在する取扱店向けの流通の効率化などに活用する計画です。

 日本でも東京大学発ベンチャー、アクセルスペースが小型観測衛星などを手掛け、新興国の都市開発や鉱山運営などに役立つ衛星写真の提供サービスを計画しています。

(日経Webより)
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