主よ、汝の御心のままにわれはあらん(BWV73)

 公現後第3主日に聴く日曜カンタータは、BACHがライプツィヒのトマスカントールに就任してまだ1年経っていない1724.1.23に初演されました。

 同じ公現後第3主日のために作られたBWV72が、室内楽的、瞑想的性格を持つのに対し、BWV73は色彩感とコントラストに満ちた作品です。


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 歌詞台本の根源的なテーマは、カスパール・ピーネマンのコラール「主よ、汝の御心のままにわれはあらん」ですが、第1曲ではコラールの合間に交替でレチタティーヴォが入り、この旋律は合唱によって「御心のままに」というテーマが何度も繰り返されます。また、コラールには珍しく、最後にもう一度最初の歌詞「主よ、汝の御心のままに」が戻ってきます。


 フィリップ・ヘレヴェッヘ指揮、コレギウム・ヴォカーレ・ゲント&オーケストラ、バルバラ・シュリック(S)、ハワード・クルック(T)、ペーター・コーイ(B)の演奏でお聴きください。




主よ、汝の御心のままにわれはあらん(BWV73)


1 .合唱とレチタティーヴォ(テノール、バス、ソプラノ)

     Herr, wie du willt, so schick's mit mir

   主よ、御心のままに、わたしの運命をお定めください、

    Im Leben und im Sterben!

   生きているときも、死ぬときも。

T:Ach! aber ach! wieviel

    ああ、しかしどれだけ

    Läßt mich dein Wille leiden!

   あなたの御心がわたしを苦しめることか。

    Mein Leben ist des Unglücks Ziel,

    わたしの人生は不幸の標的です、

    Da Jammer und Verdruss

    悲惨と不快がわたしを生きながら拷問にかけ、

    Mich lebend foltern muss,

    わたしの苦難は死んでも

    Und kaum will meine Not im Sterben von mir scheiden.

    わたしから離れようとしません。

    Allein zu dir steht mein Begier,

    わたしが切に望むのはあなただけ、

    Herr, lass mich nicht verderben!

    主よ、どうかわたしを破滅させないでください。

B:Du bist mein Helfer, Trost und Hort,

    あなたはわたしの救い主、なぐさめであり避け所ですから、

    So der Betrübten Tränen zählet

    悩める者の涙を数え

     Und ihre Zuversicht,

   かよわい葦のような

   Das schwache Rohr, nicht gar zerbricht;

    彼らの信頼を打ち砕かないでください。

   Und weil du mich erwählet,

    そしてわたしを選ばれたのなら、

   So sprich ein Trost- und Freudenwort!

    なぐさめと喜びの御言葉をお語りください。

   Erhalt mich nur in deiner Huld,

    どうかわたしをあなたの恩寵の中にお保ちください、

   Sonst wie du willt, gib mir Geduld,

    さもなくば御心のままになされ、わたしには忍耐をお与えください、

   Denn dein Will ist der beste.

    あなたの御心が最善のものだからです。

S:Dein Wille zwar ist ein versiegelt Buch,

   あなたの御心はたしかに封印の書のようであり、

    Da Menschenweisheit nichts vernimmt;

   人智の及びがたいものがある。

    Der Segen scheint uns oft ein Fluch,

    祝福もわれわれにはしばしば呪いのように思え、

    Die Züchtigung ergrimmte Strafe,

    懲らしめは御怒りによる罰のようにみえる、

    Die Ruhe, so du in dem Todesschlafe Uns einst bestimmt,

    あなたがかつて 死の眠りの中に定められた安息は、

    Ein Eingang zu der Hölle.

    さながら地獄への入り口であるかのようだ。

    Doch macht dein Geist uns dieses Irrtums frei

    どうかあなたの霊が われらをこの誤解から解き放ち

    und zeigt, dass uns dein Wille heilsam sei.

    あなたの御心がわれらを救うことをお示しください。

    Herr, wie du willt!

    主よ、御心のままに。

2 .アリア(テノール)

Ach senke doch den Geist der Freuden

ああ、どうか喜びの霊を

Dem Herzen ein!

心の中に注ぎ入れてください。

Es will oft bei mir geistlich Kranken

わたしは霊において病んでおり

Die Freudigkeit und Hoffnung wanken

喜びと希望は揺らぎ

Und zaghaft sein.

おののいている。

3 .レチタティーヴォ(バス)

Ach, unser Wille bleibt verkehrt,

ああ、われらの心はねじ曲がったまま、

Bald trotzig, bald verzagt,

あるときは著り高ぶり、あるときはおののき、

Des Sterbens will er nie gedenken;

死を思うこともない。

Allein ein Christ, in Gottes Geist gelehrt,

しかし神の霊にあって教えられるキリストの徒は、

Lernt sich in Gottes Willen senken

神の御心に身を沈めることを学び

Und sagt:

次のように言う。

4 .アリア(バス)

Herr, so du willt,

主よ、御心なららば

So presst, ihr Todesschmerzen,

死の苦しみが

Die Seufzer aus dem Herzen,

心から坤きを絞り出させてください、

Wenn mein Gebet nur vor dir gilt.

たとえわが祈りがただあなただけのためであっても。

Herr, so du willt,

主よ、御心ならば 、

So lege meine Glieder

わたしの四肢を

In Staub und Asche nieder,

塵と灰の中に横たえてください、

Dies höchst verderbte Sündenbild,

これは堕落の極みの罪のかたちだから。

Herr, so du willt,

主よ、御心ならば、

So schlagt, ihr Leichenglocken,

たとえ弔いの鐘が鳴っても、

Ich folge unerschrocken,

わたしは驚かずに従います、

Mein Jammer ist nunmehr gestillt.

わたしの嘆きはいま鎮められました。

5 .合唱

Das ist des Vaters Wille,

これはわれらを造られた

Der uns erschaffen hat;

主の御心、

Sein Sohn hat Guts die Fülle

主の御子が贈り物と恵みを

Erworben und Genad;

溢れるほど得られたのは。

Auch Gott der Heilge Geist

また聖霊なる神は

Im Glauben uns regieret,

信仰においてわれらを統治され、

Zum Reich des Himmels führet.

天の御国に導かれる。

Ihm sei Lob Ehr und Preis!

神に賛美と栄光と称賛があるように。

                        対訳:樋口隆一


マタイによる福音書 8,1-13

 イエスが山を下りられると、大勢の群衆が従った。すると、一人のらい病を患っている人がイエスに近寄り、ひれ伏して、「主よ、御心ならば、わたしを清くすることがおできになります」と言った。イエスが手を差し伸べてその人に触れ、「よろしい。清くなれ」と言われると、たちまち、らい病は清くなった。イエスはその人に言われた。「だれにも話さないように気をつけなさい。ただ、行って祭司に体を見せ、モーセが定めた供え物を捧げて、人々に証明しなさい。」さて、イエスがカファルナウムに入られると、一人の百人隊長が近づいて来て懇願し、「主よ、わたしの僕が中風で家に寝込んで、ひどく苦しんでいます」と言った。そこでイエスは、「わたしが行って、いやしてあげよう」と言われた。すると、百人隊長は答えた。「主よ、わたしはあなたを自分の屋根の下にお迎えできるような者ではありません。ただ、ひと言おっしゃってください。そうすれば、わたしの僕はいやされます。わたしも権威の下にある者ですが、わたしの下には兵隊がおり、一人に『行け』と言えば行きますし、他の一人に『来い』と言えば来ます。また、部下に『これをしろ』と言えば、そのとおりにします。」イエスはこれを聞いて感心し、従っていた人々に言われた。「はっきり言っておく。イスラエルの中でさえ、わたしはこれほどの信仰を見たことがない。言っておくが、いつか、東や西から大勢の人が来て、天の国でアブラハム、イサク、ヤコブと共に宴会の席に着く。だが、御国の子らは、外の暗闇に追い出される。そこで泣きわめいて歯ぎしりするだろう。」そして、百人隊長に言われた。「帰りなさい。あなたが信じたとおりになるように。」ちょうどそのとき、僕の病気はいやされた。
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