不平等は「暴力」によって解消される!

 「歴史上のどの時点においても、暴力が富の再配分を保証するのに必要だったということは、普遍的な事実です」と語るのはスタンフォード大学で人文学と古典・歴史の教授を務めるWalter Scheidel氏です。Scheidel氏は「The Great Leveler」の著者であり、本書の中で、石器時代から現在までの歴史の中で、多くの不平等が暴力によって解消されてきたという事実を明らかにしています。


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 フランスの経済学者であるトマ・ピケティ氏は「21世紀の資本」という本の中で「経済が成長する限り不平等が自然と解決されることはない」と述べています。ピケティ氏の主張はScheidel氏と同じくする部分がありますが、ピケティ氏がここ200年に起こった「暴力による不平等の解消」について述べているのに対して、Scheidel氏が調査したのは「石器時代以降の人類の全ての歴史」についての暴力と不平等との関わりについて。

 「歴史上、平等がもたらされるようになる原因は同じではありませんが、いずれも『既に確立されている秩序に対する大規模で暴力的な混乱』という道を通っています」とScheidel氏。

 Scheidel氏は古代ローマの専門家ですが、現代の経済学者・歴史学者の資料に比べて、古い時代の資料を集めるのは非常に難しかったとのこと。ばらばらに散らばる情報を集めて何とか1つにつなぎ合わせることで、不平等と暴力に関する1つの説を導き出したそうです。

 Scheidel氏によると、社会を平等するための大惨事には「大衆動員もしくは交戦状態」「変化を起こす力を持った革命」「国の崩壊」「疫病」という「4人の騎手」が存在するとのこと。

 「大衆動員による不平等の解消」は第2次世界大戦でも起こりました。第2次世界大戦には多くの国々が巻き込まれ、人々の不平等が一様に、かつ大きく減少したのです。戦場となったヨーロッパ各国や日本はもちろんのこと、アメリカでは税金が増し、戦争をサポートすべく経済は国家からの干渉を大きく受けるとことになりました。そしてこれが労働者に利益をもたらすと共に上位1%のお金持ちに損害を与え、富の再配分が実現されたのです。

 また、14世紀にユーラシア大陸でまん延した腺ペストも平等をもたらしたと言われています。戦争が全てを破壊したのに対して、パンデミックは人間に被害をもたらすもののインフラにはダメージを与えません。結果として、人間が少なくなることで労働力が不足し、1人あたりの賃金は上昇。そして貧富の差は小さくなったのです。ただし、パンデミックが収まると人口がすぐに増加し始め、社会における不平等は増えていったとのこと。

 そして、「国家の崩壊」は不平等の歴史のなかでより重要な役割を果たします。「裕福な人は国の受益者です。もし国が崩壊すれば全ての人が困窮することになりますが、裕福な人はより失う物が大きくなります。マヤ文明や中国の王朝が崩壊した時のように、彼らの財産は一掃されてしまうからです」とScheidel氏は語りました。

 そして、現在世界中で起こっている不平等が解消できるかどうかについては、Scheidel氏は「歴史は未来を決めません。物事は変えることができます。しかし変化はゆっくりです」「これまで通りのビジネスでは不十分で、私たちは今日の世界を変えるためにより深く考える必要があります」と語りました。このとき、経済の不平等を解消するには歴史的な背景を理解することが重要とのこと。「全てがうまくいくようになる」と約束する政治家を選ぶことは、短期的な視点によるものだからです。「私は戦争を主張しているのではありません。しかし、古い考え方を繰り返すことは歴史の教訓を無視することになります。しかし、これから続いていく大きな変化を起こすには、真に革命的でオリジナルな何かが必要なのかもしれません」とScheidel氏は語りました。

(Stanford News ―翻訳:Gigazine)
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