メタボは噛む力の低下から?

 昔は、親が子どもに対して口うるさく、ご飯はよく噛んで食べるように言ったものです。ところが、数十年前から柔らかい食べ物が増え食生活が変化し、「噛まない」日本人が増えました。グルメ番組のレポータは、美味しいものを「おいしい!」と言わずに「柔らか~い」表現します。この噛まない習慣の蔓延に、専門家は警鐘を鳴らしています。当然、食事での咀嚼回数が減れば噛む力は弱くなります。噛む力の低下は、歯並びの乱れや「顎関節症」の原因のひとつにもなります。また、「口呼吸」を招き、免疫力や認知機能の低下など健康にさまざまな悪影響を及ぼします。



世界初”噛めないとメタボに”が判明

 噛む力の低下とメタボリックシンドロームとの間に明らかな関係性がある――。そんな新たな知見が、世界で初めて明らかにされました。新潟大学、大阪大学が発表しました。

 メタボリックシンドロームは、「内臓脂肪型」の肥満に高血糖・高血圧・脂質異常などの危険因子が2つ以上重なった状態を指します。腹囲も診断基準となり、男性は85cm以上、女性は90cm以上が目安です。

 もちろん、メタボは見た目の問題だけではなく、生活習慣病の危険を示すサインです。脳卒中や心筋梗塞、糖尿病など、死に関わる疾患が発症するリスクが高まり、近年の医学界では、口腔健康とメタボとの関係が注目されています。

 研究グループは、大阪府吹田市に住む50~70代の住民1708人を対象に基本健診と歯科検診を実施。どれくらい効率よく咀嚼ができているかを調べるため、専用に開発したグミゼリーを30回噛んでもらい、増えた表面積を算出しました。そのうえで年齢や性別、飲酒、喫煙、歯周病などの影響を除いて解析。噛む力とメタボとの関連性を調べました。

 対象者を噛む力の強さによって4つのグループに分けて比較したところ、対象者全体では、噛む力が最も強かったグループに比べて、下から2番目に弱いグループでは、メタボ率が1.46 倍高い結果になりました。

 また、70代では噛む力が最も強いグループに比べて、それより弱いグループでは1.67〜1.90倍メタボ率が高いことが分かりました。その結果、噛む力の低下とメタボとの間には、明らかな関係性があると結論づけられました。

 研究グループは「噛む力を測ることで、将来的にメタボリックシンドロームになるリスクが評価できる可能性が示された」とコメント。脳卒中や心筋梗塞などの「動脈硬化性疾患」の予防において、新しい医科歯科連携の戦略につながることが期待されるといいます。

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「噛む」と基礎代謝がアップ、ダイエットにも効果が

 3年前には、京都大学が滋賀県長浜市の住民約6800人を対象として行ったコホート研究から、よく噛んで食べることが2型糖尿病の発症リスクと関連があることが明らかになっきました。噛む能力がもっとも高いグループでは、もっとも低いグループに比べて、2型糖尿病リスクがほぼ半減するといいます。

 このように「噛む」ことが生活習慣病のリスクを下げるのは、いくつもの研究から明らです。日本肥満学会の「肥満症治療ガイドライン」では、行動療法のひとつとして「咀嚼法」が挙げられており、<1口30回噛む>ことが推奨されています。

 咀嚼には、満腹中枢を刺激して食欲を抑える効果があり、さらに、よく噛んでゆっくり食べる方が、食後のエネルギー消費量「食事誘発性体熱産生」を増加させることもわかっています。「食事誘発性体熱産生」とは、食後に起こる栄養素の消化・吸収によって生じる代謝に伴うエネルギー消費量の増加で、基礎代謝量の1割程度を占めます。時間をかけてゆっくり食事をすることは、ダイエットにも効果的なのです。

 毎日の食事で噛む回数を増やすコツは、「ひと口の量を少なめにする」「できるだけ歯応えのある食材を選ぶ」「味付けは薄味にする」「食材は大きく、厚めに切る」などがあります。最初から一口30回噛むのが難しければ、いつもより5回余計に噛むことから始めます。咀嚼力のアップに努めて、「健康寿命」を延ばしましょう。

(Health Pressより)
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