自動運転を実現する次世代通信5G

 数年後には、多くの自動運転車が路上を走っているでしょう。その自動運転を支える高度な通信システムを実現するには、信頼性に優れた高速ネットワークが必要になります。いわばデータの高速道路です。



 自動運転車や自律走行車が注目を集めていますが、自動運転の実現までの道のりは複雑で、一筋縄ではいきません。 まさにブラインドコーナーの連続です。エンジニア、自動車メーカー、規制当局、データ・サイエンティストは、全く異なる自動車の未来を築こうとしています。 CES 2017 (コンシューマー・エレクトロニクス・ショー) で、BMW社、インテル、Mobileye 社は、2017 年後半には約 40 台の自動運転試験車で路上テストを行うと発表しました。

 これらの試験車は互いに情報を共有し、学習していきます。自動運転車と聞くと、適宜自動運転に切り替えられる車が高速道路を走る様子を思い浮かべるかもしれませんが、路上を走る他の車との間で情報のやり取りはしないようです。しかし、自動運転車の数が増えるにつれ、自動運転車はより一般的になり、 ただ一台の自動運転車だけが単独で走行していることはありえなくなります。路上を走る自動運転車の増加にあわせて、自動運転インフラはより高度に発展し、安全で洗練されたものになっていきます。



 インテルのオートメーテッド・ドライビング・グループ (ADG) プロダクト・マーケティング・ディレクターのケビン・ハッテンドルフは次のように語っています。「自動運転車の開発では、これまで不可能だと思われていた多くの要素を検討する必要があります。 そして、こうした多くの要素は、強力な通信システムに依存します」




 一台一台の車はそれぞれ独立して走行しますが、実際には、他の車、あるいは路上インフラやネットワーク、さらにはデータセンターとの通信を必須とする、複雑なエコシステムの一部として機能することが肝要になります。自動運転の真の可能性を実現するには、信頼性が高く堅牢で、広範囲にわたる無線ネットワークの普及が必要です。こうした要件が2020 年の実用化が期待されており、検証作業は既に進行ている 5G ネットワークの基盤になります。 インテルの自動運転向け開発プラットフォームは、自動車業界向けの初の 5G 対応プラットフォームで、2020 年に向けて幅広い状況を念頭に置いた開発や試験を想定して設計されています。



5G とは

 5Gは、次の世代を担う無線ネットワークです。 より多くのデータをより高速に転送できるようになり、データの遅延時間はさらに短くなり、信頼性はより上がります。そして、スマートビルからIoTで生産管理されているワイナリーまで、今後数十億台規模に膨れ上がるコネクテッド・デバイスをサポートするために不可欠な通信基盤となります。




 1 台の自動運転車は 1 日に数テラバイトのデータを処理します。 自動運転車は、カメラ、光で対象までの距離などを分析するライダー (LIDAR)、レーダーなど、膨大な数のセンサーによって周囲の環境に関する情報を認識しています。 例えば、カメラが人の形をした物体を捕捉した場合、レーダーが奥行きを感知することで、本当の人間と厚紙で作られた人の形の看板との違いを認識できます。



 システム全体を連携させるため、膨大なコンピューティング・パワーと処理されたデータの同期が必要になります。 収集したデータを蓄積することにより、蓄えられた経験と環境から学習することができるようになります。

 収集したデータはすべてデータセンターに送られます。データセンターはすべてのデータを蓄積し、ディープラーニングおよびマシンラーニングの手法を用いて、車の周囲に何があるか、何をするべきか、どのように対処するべきかといった指示を車に伝えます。  車は、蓄積されたデータから学習することにより、動いている物体を認識し、人間、犬、道を転がるボールなどを識別できるようになります。

 こうした学習は、異常事態の把握にも役立ちます。 例えば、道を横断するキリンに遭遇した車からは、異常事態を認識してデータセンターに「キリンに遭遇」という情報が送信され、その情報から新しい対処方法が作成されます。

 車には、車内のヒューマン・マシン・インターフェイス (HMI) をとおしてリアルタイムに反応できる、車内コンピューティング・プラットフォーム、つまり、他車とつながり「こんなことがあった。知っておいた方がいい」と通信したり、クラウドやデータセンターにも情報を送信できる環境が必要です。こうした情報を共有することで、車は前方の停止信号を知り、直前に事故が発生していることを認識し、道路を走る犬を察知し、前方を駆け抜けるキリンがいることを把握できます。


犬を避けるには?

 車の中を行き交う膨大なデータに対処するには、あらゆる情報を処理できる高度な通信ネットワークが必要です。5G は自動運転車のためのデータの高速道路のようなもので、現在の LTE ネットワークでは明らかに役不足です。膨大な量のデータを超高速で転送するのは難しいく、パイプで考えると、細くて長いパイプもあれば、太くて短いパイプもあります。少量のデータであれば細長いパイプでも流せますが、流れるのに時間がかかります。 太く短いパイプでより多くのデータをはるかに頻繁に流した場合、流せるデータ量は増えますが、その伝送距離は短くなります。

 車で市街地を走行する場合、センサーで取得したリアルタイム・データが車内コンピューティング・プラットフォームで処理され、どのように車を操作するかを決定します。しかし、蓄積されたデータから長期間の経験を基にした対処方法を入手する場合は、ガソリンスタンドや駐車場、交差点や自宅など大量のデータを通信できる場所で、機会があるごとに情報のアップロードとダウンロードを繰り返すことになります。Uber、Google カー、BMW など、世界中の多くの車が LTE 経由で既にデータを収集し始めています。

 しかしLTE 接続の自動運転車で、iPhone と同じようなスムーズな体験ができるでしょうか? 自動運転で必要となるデータ量はこんなものではありません。 今日の LTE ネットワークでは、こうした膨大な量のデータを処理できません。膨大な量のデータを迅速に転送できる新たなミリ波テクノロジーの開発が必要です。

 そこで 5G の出番ですが、スピードとデータ処理能力だけでなく、 センサーが目標を見失ったり、過酷な気象条件下でも、低周波帯の 5G 通信により、近くを走る車や道路沿いのインフラと (高い信頼性と速度で) 通信できるため、付加的なセーフティーネットを確保できるといいます。


クラウドの中で起こっていること

 インテル CEO のブライアン・クルザニッチは、「1 台の自動運転車は 1 日最大 4,000 GB のデータを生成すると予想されています。実に 3,000 人分に相当するデータ量です」と語っています。企業には、それぞれ異なる戦略があり、今収集しているデータは今後非常に重要になるので、自社で管理し、外部に委託せず、独自のデータセンターを構築すると主張する企業も出てくるでしょう。

 その一方で、地理的に分散したデータセンターの運営を望む企業もあれば、他社から提供されるデータセンター機能を活用したいと考える企業もあるでしょう。いずれにせよ、データを転送し、分析し、アルゴリズムを作成し、学習内容を車に送り返すために、こうしたデータセンターには 5G ネットワークが必要です。自動運転車の導入は各方面で拡大していますが、データ高速道路の建設も順調に進んでいます。

(iQ テクノロジー・イノベーションより)
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