がんで免疫力が低下する理由

 俳優の渡瀬恒彦さんが多臓器不全で亡くなりました。2015年秋に胆のうがんであることを公表し、闘病中でしたが、手術は行わず、抗がん剤と放射線療法をしていました。胆のうがんの発見時点で既にステージ4の末期で、余命1年と宣告されていたといいます。

 2月中旬に左肺の気胸(肺が破れ、空気が漏れ出す病気)を発症。亡くなる当日に敗血症を発症し、多臓器不全で死去しました。


胆のうがんとは?

 胆のうは肝臓にぴったりとくっついているひょうたん型の袋状の臓器で、大きさは10cm弱。中には肝臓で作られた「胆汁」という液体が詰まっています。



 胆汁は脂肪の消化を助ける緑色の液体で、主成分はビリルビンです。激しくおう吐したときに、口の中が苦くなった経験がある人もいると思いますが、それが胆汁です。食事のたびに胆のうが縮み、胆のう管を通り胆管に入り、十二指腸に流れ出て食べ物と混ざります。膵臓からは「リパーゼ」と呼ばれる脂肪を分解する物質が出てきて、胆汁と混ざった脂肪を分解します。

 胆汁がうまく流れなくなると、胆汁の成分であるビリルビンが血液の中に入り、皮膚や目などが黄色くなります。それが黄疸です。ビリルビンは体の様々な臓器にもたまり、臓器の機能を悪くします。

 胆のうがんの多くは、胆のうの粘膜から発生します。がんが増えていくと、胆のうの壁を越え、肝臓にくっ付いている部分では、がん細胞が肝臓の中に入り込みます。そうでない部分では、おなかの中に飛び出し、体中にばらまかれることもあります。胆汁の通り道である胆管をふさいで、黄疸になることあります。

 胆のうの壁は胃や腸の壁と違って薄いので、胆のうがんはほかの消化器がんと比べてたちが悪く、がんが胆のうの固有筋層(胆のうの壁にある筋肉の層)までにとどまっているステージ1という初期の段階でも、5年生存率は60.1%と低いといいます。

 厚生労働省の人口動態統計によれば、2015年に胆のうの悪性新生物(胆のうがん)で亡くなった人は6248人。女性が3716人、男性が2532人です。


敗血症で多臓器不全とは?

 しかし、報道によれば渡瀬恒彦さんの直接死因は敗血症による多臓器不全とされています。敗血症とは、細菌やウイルスなどによる感染が引き金となって、体が過剰に反応してしまい、生命を脅かす臓器の障害が出てしまうことをいいます。

 渡瀬さんの場合、治療中だった気胸が影響しているかは分かりませんが、わずか1日足らずで亡くなってしまったということは、症状が激烈だったということです。がんは人の免疫力を低下させ、感染の危険性を高めます。


なぜがんは免疫力を低下させるのか

 どうしてがんになると免疫機能が低下するのでしょうか。その理由は栄養不良です。がん細胞は非常に燃費の悪い細胞で、生きるのに通常の細胞の数倍のエネルギーを消費します。さらにがん細胞からサイトカインと呼ばれる物質が出てきて、肝臓や筋肉、脂肪を分解します。こうして栄養不良になり体がやせ衰えて行きます。これががん悪液質です。

 栄養不良になれば、細胞も作られにくくなり、免疫にかかわる細胞も次第に数が減っていきます。これに加え、化学療法や放射線療法をしていれば、免疫にかかわる細胞を作る骨髄の細胞が傷害を受け、免疫にかかわる細胞がさらに減ってしまいます。こうして、体の防衛隊である免疫力が低下し、感染しやすくなります。


人はいつかは亡くなるが……

 誰でもいつかは亡くなります。それは避けようのない事実です。人生のしまい方は亡くなり方に大きな影響を受けます。がんの末期の場合、いつ急変があってもおかしくないことは自覚しておきましょう。家族に看取られてそれぞれに言いたいことを言って静かに亡くなるというわけではない場合も多いので、本人も家族も、そのことは知っておくべきです。

(Nikkei Styleより)
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