ヒューマノイドロボットで人間の組織を成長させる研究

 ここ10年間のヒューマノイドロボット開発の進化はめざましく、医薬品開発から宇宙探査まで広範な用途にわたり、ヒューマノイドの潜在的な価値は重みを増しています。オックスフォード大学の研究チームは、組織移植の目的でヒューマノイドロボットで人間の組織を成長させるという大胆なアイデアを、世界的に権威あるロボット工学専門誌Science Roboticsで発表しました。



 Digital Trendsによれば、生物医学の研究者であるPierre-Alexis Mouthuy氏とAndrew Carr氏は、腱の損傷を修復する研究を進めるにあたり、ダイナミックな環境で人工組織をシミュレートする必要があることに気づきました。そこで、人の身体の構造と動きを精密に模倣できるヒューマノイドの活用に着目。「ヒューマノイド・バイオリアクター」上で、ヒト移植組織を成長させる概念を探求しています。

 現在の組織工学技術では、細胞が身体外でも生存できる条件を維持し、必要に応じて発達させることができる環境「バイオリアクター」が必要です。しかし、現在のバイオリアクターは、身体の動的ストレスを再現するのに十分ではありません。臨床的に適切な移植組織を成長させるためには、組織をどんな方向にも引っ張ったり伸ばしたり、体内への移植部位に応じてストレスを調節できるような、より高度なバイオリアクターが必要となります。


筋骨格系ヒューマノイドの活用

 ヒューマノイド・バイオリアクターとして研究者が注目するのは、東京大学の「腱志郎」や、欧州の研究チームが開発を進める「ECCEROBOT」などの筋骨格系ヒューマノイド。人工筋肉で作動する筋骨格系ヒューマノイドは、人間の関節に見られる自由度や、力の正常な範囲をより正確に再現できるため、科学や医学に新たな研究開発のチャンスを与えてくれます。

 これらの筋骨格系ロボットでは、モーター駆動軸に紐づけた非弾性繊維で動くゴム素材で主要な筋肉や腱を模倣していますが、最近では空気圧を用いた人工筋肉や高分子人工筋肉のような、ソフトロボット(柔らかい素材で作られたロボット)用の技術も実装可能となり、よりリアルな環境を構築できるようになっています。細胞ベースのアクチュエーター(作動装置)をヒューマノイドに組み合わせる研究も進められており、細胞や生体組織を機械部品として活用するバイオハイブリッド・ヒューマノイドの開発につながる可能性も秘めています。



再生医療用のツールとしてのヒューマノイド

 このヒューマノイド・バイオリアクターによる移植組織開発の研究は、SFチックなおとぎ話ではなく、患者ひとりひとりに適合した移植組織の開発や、治癒中に起こりがちな組織間の接合面の機能不全阻止、動物実験の減少など、再生医療に役立てられる現実的な目的を掲げています。

 研究チームは今後、概念の実証に移る予定で、「現在、筋骨格系ロボットと組み合わせて使用できる小型バイオリアクターのプロトタイプを設計しています」と、Mouthuy氏は研究の進捗状況についてDigital Trendsに語り、この画期的なアイデアを試みる日を待ち望んでいます。

 遠からぬ未来にオーダーメイドの骨や筋肉の移植が可能となるとすれば、いずれは目や心臓、腎臓も…と、どうしてもSFチックな夢が膨らんでしまいます。

( Science Robotics、DIGITAL TRENDS―Gigazineより)
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