シュープラー・コラール集

 この6曲のオルガン・コラール集はBACH最晩年の1748年~1849年頃に、弟子と推測されるヨハン・ゲオルク・シュープラーによって出版されたもので、正式な表題は「二つの手鍵盤と足鍵盤を持つオルガンで演奏すべき種々の様式による六つのコラール」です。第1曲の「目覚めよと呼ぶ声あり」は特によく知られ、オルガニストのレパートリーに欠かせない曲集です。また作曲技法においても、オルガン・コラールの規範に位置づけられています。



 YouTubeで検索すると数多くの演奏が聴けますが、今回は演奏の様子がわかる動画を選びました。


第1曲 目覚めよと呼びわたる物見の声(BWV645)変ホ長調、4/4拍子

 原コラールはフィリップ・ニコライ作詞作曲 (1599年)。原曲は1731年11月25日の三位一体節後第27日曜礼拝で初演したBWV140の第4曲(テノールのアリア)。原曲では、弦楽器のユニゾンが反復する伴奏主題にテノールの歌うコラールが挿入されます。弦ユニゾンを右手、テノールを左手、通奏低音をペダルに写しています。原曲以上に人気があり、様々な楽器で演奏されます。

 ヴォルフガング・ツェラーの演奏でお聴きください。





第2曲 われいずこに逃れ行かん(BWV646)ホ短調、4/4拍子

 原コラールはヨハン・ヘールマン作詞(1630年)、ヨハン・ヘルマン・シャイン作曲(1627年)。原曲は未発見の亡失カンタータと予想されます。右手の伴奏主題を常に左手が追撃するカノンに、コラール旋律がペダルで提示されます。シャインが作曲した「わが愛する神に」で呼ばれることもありますが、逃亡者と追撃者を髣髴させる伴奏から上記表題が支持されています。

 同じくヴォルフガング・ツェラーの演奏です。





第3曲 ただ尊き御神のままに(BWV647)ハ短調、4/4拍子

 原コラールはゲオルク・ノイマルク作詞作曲(1657年)。1724年7月9日の三位一体節後第5日曜礼拝で初演したBWV93の第4曲 (ソプラノとアルトの二重唱)の原曲では、ソプラノとアルトが途切れることなくメロディを掛け合い、要所で弦楽器ユニゾンがコラール旋律を挿入します。第1曲とは逆に、始終鳴り響いている旋律が歌唱パートで、ソプラノが右手、アルトが左手、コラールがペダルです。

 レオ・ヴァン・ドースラアーの演奏でお聴きください。





第4曲 わが魂は主をあがめ(BWV648)ニ短調、6/8拍子

 原コラールはグレゴリオ聖歌「マニフィカト」、ドイツ語訳は1529年以前。原曲は1724年7月2日の聖母のエリザベト訪問日礼拝で初演したBWV10の第5曲 (アルトとテノールの二重唱)。二重唱が伴奏でトランペット (改定稿ではオーボエ) がコラールを挿入します。コラール旋律は右手に委ねられ、伴奏パートが低音に偏っており、曲集の中では異色の渋さをかもし出します。

 若いオルガニスト、クリスチャン・バセンの演奏です。





第5曲 われらとともに留まりたまえ(BWV649)変ロ長調、4/4拍子

 原コラールはラテン語聖歌「時は夕暮れに及びたれば」、フィリップ・メランヒトン訳 (1579年)で、1725年4月2日の復活祭2日目礼拝で初演したBWV6の第3曲 (ソプラノのアリア)が原曲です。ヴィオロンチェロ・ピッコロの細かいパッセージにソプラノが歌うコラールが挿入されます。この曲だけは2/2拍子から4/4拍子に変更されているほか、原曲のリフレインも抹消されており、最も変更点が多い作品です。

 ジョス・マターズの演奏でお聴きください。





第6曲 主を頌めまつれ(BWV650)ト長調、9/8拍子

 原コラールはヨアヒム・ネアンダー作詞 (1680年)、旋律は1665年以前に成立。1725年8月19日の三位一体節後第12日用礼拝で初演したBWV137の第2曲 (アルトのアリア)が原曲です。ヴァイオリン独奏の華やかな伴奏の下にアルトがコラールを挿入します。原曲の段階でアルトのコラール旋律にも華やかなトリルが施されており、編曲もそのまま移植しています。そのため、厳格にコラールパートを遵守した第5曲までと雰囲気が大きく異なる終曲です。

 ジークフリート・グメイナーの演奏です。




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