飢えたる者に汝のパンを裂き与えよ(BWV39)

 1732年6月13日の夕刻、ザルツブルク大司教によって追放された1,000人余りのプロテスタント難民が、ライプツィヒに到着しました。その翌日には、さらに800人が加わったと当時の記録は伝えています。しかし実際にこの曲が作曲されたのは遥かに早い時期で、バッハがライプツィヒに赴任してきて4年目の1726年に作曲され6月23日、三位一体主日後第1主日の礼拝で初演されました。

 

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 18世紀ライプツィヒの礼拝生活から生み出され、かつ「隣人に対する愛」を普遍的に語ったこのカンタータの説くところは、読みとかれる社会的脈絡は違っても、時空を飛び越えて、愛の不毛が叫ばれる現代においてなお、その意味するところを伝え、作品の価値を示していると思います。

 

 カイ・ヨハンセン指揮、シュティフツバロック・シュトゥットガルト、シュトゥットガルトカントライ、ファニー・アントネルー(S)、レナ・シューター・ヴェルニッヒ(A)、マティアス・ホーン(B)の演奏でお聴きください。

 


 

 

飢えたる者に汝のパンを裂き与えよ(BWV39)

第一部

1. 合唱

Brich dem Hungrigen dein Brot

飢えた者らにあなたのパンを割き与え

und die, so in Elend sind, fuhre ins Haus!

さまよえる貧しい者たちをあなたの家に招き入れ

So du einen nackend siehest, so kleide ihn

裸の者を見たならば、彼らに服を着せ

und entzeuch dich nicht von deinem Fleisch.

あなた自身の骨身を彼らから遠ざけないように

Alsdenn wird dein Licht herfurbrechen wie die Morgenrote,

そうすればあなたから光が暁のようにあらわれ出てて

und deine Besserung wird schnell wachsen,

あなたはすみやかに癒され

und deine Gerechtigkeit wird fur dir hergehen,

あなたの行った正義によってあなた自身が導かれ

und die Herrlichkeit des Herrn wird dich zu sich nehmen.

その栄光の輝きにあなたは包まれるでしょう

2.レチタティーボ(バス)

Der reiche Gott wirft seinen Uberflus auf uns,

豊かなる神は、その有り余る富を我々の上に与えられ

Die wir ohn ihn auch nicht den Odem haben.

我々はそれ故に生きることができるのです。

Sein ist es, was wir sind; er gibt nur den Genus,

我々は神のものとして存在しており、生きることを享受できます。

Doch nicht, das uns allein Nur seine Schatze laben.

しかし、我々のみがその宝によって生かされるのではなく

Sie sind der Probestein, Wodurch er macht bekannt,

それらは試金石であって、それを通して神は知らしめるのです

Als er mit milder Hand,

神はその慈悲深い手で、

Was jener notig ist, uns reichlich zugewendet.

我々が必要なものを(我々に)豊かに与えてくださるように

Das er der Armut auch die Notdurft ausgespendet,

我々もまた貧しい者に生きるに必要な糧を備えるように、と。

Wir sollen ihm fur sein gelehntes Gut

我々は神から預かった豊かな富の利息を

Die Zinsen nicht in seine Scheunen bringen;

神の蔵に納めるのではなく

Barmherzigkeit, die auf dem Nachsten ruht,

それを(貧しい者への)憐れみとして、隣人に与えることこそが

Kann mehr als alle Gab ihm an das Herze dringen.

どのような奉げものにもまして神の御旨にかなうのです

Seinem Schöpfer noch auf Erden

うつし世にありて、なお創り主に

Nur im Schatten ähnlich werden,

その影だけでも似てくる事は、

Ist im Vorschmack selig sein.

きたるべき幸いの先触れでしょう。

Sein Erbarmen nachzuahmen,

主の憐れみを倣い、おこなう事は

Streuet hier des Segens Samen,

(すなわち)地上で祝福の種を蒔き

Den wir dorten bringen ein.

天国で刈り取る事なのです。

3.アリア(アルト)

Seinem Schopfer noch auf Erden

うつし世にありて、なお創り主に

Nur im Schatten ahnlich werden,

その影だけでも似てくる事は、

Ist im Vorschmack selig sein.

きたるべき幸いの先触れでしょう。

Sein Erbarmen nachzuahmen,

主の憐れみを倣い、おこなう事は

Streuet hier des Segens Samen,

(すなわち)地上で祝福の種を蒔き

Den wir dorten bringen ein.

天国で刈り取る事なのです。

 

第二部

4.アリア(バス)

Wohlzutun und mitzuteilen vergesset nicht;

慈善と施しを忘れないように

denn solche Opfer gefallen Gott wohl.

神はそのような捧げものを喜んで下さるのだから

5.アリア(ソプラノ)

Hoechster, was ich habe,

いと高きものよ、私が持ちたるは

Ist nur deine Gabe.

ただ あなたからの賜物です。

Wenn vor deinem Angesicht

あなたのみ前にたって

Ich schon mit dem Meinen

私のもてるものをたずさえて

Dankbar wollt erscheinen,

誠なる感謝を捧げようとしても

Willt du doch kein Opfer nicht.

あなたはどんな捧げ物をも望まないでしょう。

6.レチタティーボ(アルト)

Wie soll ich dir, o Herr, denn sattsamlich vergelten,

おお主よ私は如何にすれば、あなたに充分報いることができるのでしょう

Was du an Leib und Seel mir hast zugutgetan?

主が私の体と心に対し、為し給うた善きことに対して?

Ja, was ich noch empfang, und solches gar nicht selten,

然り、私はいまなお主から賜ることが希なことではない故に

Weil ich mich jede Stund noch deiner ruhmen kann?

如何なる時にも、主のみ業を讃えないということがあるでしょうか?

Ich hab nichts als den Geist, dir eigen zu ergeben,

私にあるのは、二心なき主に捧げる恭順

Dem Nachsten die Begierd, das ich ihm dienstbar werd,

隣人の為に役立ちたいという望みです

Der Armut, was du mir gegonnt in diesem Leben,

貧しさは主がわたしの人生に与え給もうたもの

Und, wenn es dir gefallt, den schwachen Leib der Erd.

か弱き肉体は主のみこころで地に帰するもの

Ich bringe, was ich kann,

私はできる限りを捧げます

Herr, las es dir behagen,

主よ、それが御心にかないますように

Das ich, was du versprichst, auch einst davon mog tragen.

そして主の約束をいつの日にか私が行えますよう

7.コラール

Selig sind, die aus Erbarmen

幸いなるかな、憐れみの心によりて

Sich annehmen fremder Not,

苦しみにある人々を受け入れ

Sind mitleidig mit den Armen,

貧しき人々に思いを馳せ

Bitten treulich fur sie Gott.

その人々の為に心より祈る人は。

Die behulflich sind mit Rat,

善導もて人々をみちびき

Auch, womoglich, mit der Tat,

また、行いでもって手助けをする人々は

Werden wieder Hulf empfangen

救いをわが身に受け

Und Barmherzigkeit erlangen.

みずからも憐れみを受けることでしょう

                  (訳:バッハクライス神戸)

 

ルカによる福音書 第16章 19-31

ある金持がいた。彼は紫の衣や細布を着て、毎日ぜいたくに遊び暮していた。

ところが、ラザロという貧乏人が全身でき物でおおわれて、この金持の玄関の前にすわり、その食卓から落ちるもので飢えをしのごうと望んでいた。その上、犬がきて彼のでき物をなめていた。

この貧乏人がついに死に、御使(みつかい)たちに連れられてアブラハムのふところに送られた。金持も死んで葬られた。

そして黄泉(よみ)にいて苦しみながら、目をあげると、アブラハムとそのふところにいるラザロとが、はるかに見えた。

そこで声をあげて言った、『父、アブラハムよ、わたしをあわれんでください。ラザロをおつかわしになって、その指先を水でぬらし、わたしの舌を冷やさせてください。わたしはこの火炎の中で苦しみもだえています』。

アブラハムが言った、『子よ、思い出すがよい。あなたは生前よいものを受け、ラザロの方は悪いものを受けた。しかし今ここでは、彼は慰められ、あなたは苦しみもだえている。

そればかりか、わたしたちとあなたがたとの間には大きな淵(ふち)がおいてあって、こちらからあなたがたの方へ渡ろうと思ってもできないし、そちらからわたしたちの方へ越えて来ることもできない』。

そこで金持が言った、『父よ、ではお願いします。わたしの父の家へラザロをつかわしてください。

わたしに五人の兄弟がいますので、こんな苦しい所へ来ることがないように、彼らに警告していただきたいのです』。

アブラハムは言った、『彼らにはモーセと預言者とがある。それに聞くがよかろう』。

金持が言った、『いえいえ、父アブラハムよ、もし死人の中からだれかが兄弟たちのところへ行ってくれましたら、彼らは悔い改めるでしょう』。

アブラハムは言った、『もし彼らがモーセと預言者とに耳を傾けないなら、死人の中からよみがえってくる者があっても、彼らはその勧めを聞き入れはしないであろう』」。

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