強毒「ヒアリ」が日本上陸、ショック死に注意!

 強い毒を持ち攻撃性が高い外来種の「ヒアリ」が遂に日本上陸しました。「最凶の外来生物」「殺人アリ」などという衝撃的な言葉とともに、小さな侵入者のニュースが連日メディアに踊っています。


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1カ月強の間に全国で次々と

 先月に兵庫県尼崎市から始まった一連のヒアリ発見の経緯は次の通りです。

●6月9日:兵庫県尼崎市

 5月26日に中国・広州から神戸港に運ばれたコンテナの積み荷を取り出す際に、内部でアリの集団が見つかる。コンテナは神戸市内に移されて消毒。6月9日にヒアリと確認された。

●6月18日:兵庫県神戸市

 ヒアリのいたコンテナが保管されていた場所を調べたところ、舗装面の亀裂などで約100匹のヒアリを発見し緊急駆除。

●6月30日:愛知県弥富市

 名古屋港のコンテナ置き場で外来種と見られるアリ7匹が見つかり、殺虫剤で処分。港の管理会社から鑑定を依頼された環境省がヒアリと確認した。

●7月3日:大阪府大阪市

 6月30日に大阪港のコンテナ周辺の土で外来種のアリが見つかり、ヒアリとアカカミアリと判明。さらに同じ場所で50体のヒアリとみられる死骸が回収され、その中には女王アリ1個体が含まれていた。

●7月7日:東京都品川区

 6日に東京港の大井ふ頭に陸揚げされたコンテナからヒアリ1匹を発見。さらに環境省が緊急調査により100匹以上見つかったと発表した。卵を産む女王アリは今のところ見つかっておらず、全て殺虫剤で駆除。


「女王アリ」の初確認で日本に定着の恐れが拡大

 関係者に特に危機感を与えたのは、大阪港で「女王アリ」の死骸が見つかったことです。ヒアリは非常に繁殖力が強く、女王アリは1日に2000~3000個の卵を産むことで知られています。今回、見つかった個体のほかにも女王アリがすでに浸入している可能性もあり、専門家は「日本にヒアリが定着する可能性が高まった」と指摘しています。

 数万匹が棲息するコロニーが形成されるのにかかる期間は、半年から1年。そのうち新たな女王アリや雄アリが誕生すれば、港湾地域の外にも生息エリアが広がる恐れがあります。


総額1億7000万ドルもの費用をかけても撲滅は不可能

 南米原産のヒアリは、1930年代にアメリカのアラバマ州に浸入し、全域へ拡散。生息域は年に約10kmのペースで広がっていったと推測されています。

 アメリカでヒアリが繁殖したのは、南米にいた天敵がいなかったことも一因だといいます。同国では1950〜1980年代にかけて、総額1億7000万ドルもの費用をかけて殺蟻剤散布などの対策を講じましたが、ヒアリを撲滅することはできませんでした。結局アメリカでは、原産地よりも高密度のヒアリが生息するようになり、それが船の積み荷などに紛れて拡散。他国への侵入と定着を許すまでになってしまいました。

 今世紀に入ると、オーストラリア、ニュージーランド、台湾、中国、香港などでも相次いで確認されています。ニュージーランドでは、侵入後のいち速い対応で根絶に成功しましたが、巣の発見から根絶の確認までは約2年かかりました。

 日本はヒアリ保有国と活発に貿易をしており、ヒアリが輸入されるリスクに常にさらされてきました。周辺諸国への分布の拡大を考えれば、日本への侵入は時間の問題だったといえます。


危険なのはアナフィラキシーショック

 ヒアリが恐れられる理由は「どう猛」さと「毒性」、そして恐るべき「タフさ」です。ヒアリは「アルカロイド毒」を持ち、尻尾から突き出た針に刺されると激痛が走って患部が膿を持ち赤く腫れ上がります。1匹が1回に何度も指すので、同じ場所にいくつもの膿疱ができることもあります。

 通常は刺されても1週間ほどで回復しますが、まれに強いアレルギー反応のアナフィラキシーショックを起こし、最悪死に至る場合もあります。東京都環境局によると、北米でヒアリに刺される人は年間1500万人にのぼり、100人以上が死亡しているとのことです。

 環境省では、アリに刺された場合はまずは安静(20~30分程度)にし、動悸やめまいなどの症状が出て容体が急に変化することがあれば、最寄りの病院を受診することを呼びかけています。


電気に引きつけられる習性があるため漏電による火災などの被害が多発

 人的被害ばかりではありません。ヒアリは昆虫だけでなく植物も食べるため、畑の作物や果樹などの被害も心配です。さらに小動物を襲う習性もあり、ニワトリやウシなどの家畜の仔も危険にさらされます。

 さらに電気に引きつけられる習性があるため、アメリカでは漏電による火災や信号機故障などの被害が多発。さまざまなヒアリによる経済損失は年間で50〜60億ドルにも及ぶとされます。

 やっかいなのは、ヒアリは暗い森や山の中よりも、日当たりの良い開けた場所を好んでコロニーを作ることです。舗装道路脇や公園などの都市環境に適応してしまうため、いちど定着を許してしまえば、日本人の多くはヒアリの隣人として暮らさなければなりません。

 定着して繁殖が始まれば、駆除が難しいヒアリ。環境省などは侵入を水際で食い止めるべく、すでに調査済みの7港を含め、中国・広州市の南沙港からコンテナの定期輸送がある22港湾でも調査を進める方針だといいます。


決して死亡率は高くない。エスカレートした過剰反応は避けよう

 とはいえ私たちまで今から過剰に怖がる必要はないといいます。刺されて死亡した例があるとはいえ、単純に考えて北米での15万人に1人(0.001%以下)という死亡率は極めて低いものです。

 ちなみに日本でスズメバチに刺されて死亡する人は年間20名ほどいます。スズメバチに刺されると、大人の数%がアナフィラキシーショックを起こすと言われています。それと比較すれば危険度は低いといえます。

 アメリカでは、「ヒアリに対抗する在来アリの密度が高ければ、ヒアリがコロニーを定着させる率が下がる」という報告があります。味方になってくれる在来アリを駆逐したり、身近な自然を観察したりすることをやめれば、それが結果的にヒアリの浸入を許すことになると思われます。

 関係機関による監視の徹底とともに、私たちも冷静に足元に目を配って定着を阻止しましょう。まずはアリ見つけてもむやみに殺したり刺激したりしないこと。万一ヒアリの疑いがあれば生きている個体には触らず、自治体に連絡しましょう。ヒアリの浸入が心配なら正しい情報を集め、知識をつけたうえで「正しく恐れる」ことが大切です。

(Health Pressより)

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