大量飲酒が<命の回数券>を減らす!

誕生には15000だが30歳を過ぎると6000にまで減る「命の回数券」

 染色体の末端に尻尾のごとく付いている蛋白質のキャップのようなものが「テロメア」です。ところがこのオマケ的な末端構造が別名「命の回数券」と呼ばれるほど重要な存在で、わたしたちの「老化」と「全般的な健康」の指標とさえされています。

 テロメアは、細胞が分裂する毎に、少しづつ減ってゆく――平たくいえば、加齢に伴って短くなってゆくわけで、その正体は「塩基」と呼ばれる箇所。誕生時の長さ(=延期数)は1万5000あるのに、30歳を過ぎると6000に半減するといいます。

 人生の年輪を重ねるに伴い、性格が丸くなるのはいいことです。しかし、加齢に伴ってテロメアが徐々に失われ(=塩基数が減少し)、そのキャップ状が短くなるに従って染色体は保護機能を失い、分裂の安定性を損なうために細胞が「老化」します。そうなれば体全体の老化へと悪循環が始まるわけです。

アルコール依存症患者はテロメアがより短縮傾向に

 米コロラド州のデンバーで6月に開催された「アルコール依存症研究学会」で、神戸大学大学院医学研究科の山木愛久氏らが耳目を集めるテロメア関連の報告を行ないました。大量飲酒をくり返していると細胞の老化がより進み、心疾患や糖尿病、がんや認知症など「加齢に関連する健康問題のリスク」が高まる可能性が示唆されたのです。

 山木氏ら研究陣は、41~85歳のアルコール依存症患者134人と、同年齢幅の非アルコール依存症の被験者121人の協力を得て、全員のDNEサンプル(検体)を採取して比較検証を行ないました。その結果、アルコール依存症患者は、テロメアがより短縮傾向にあることが明らかになりました。学会発表された山木氏らの研究成果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは予備的なものとみなされます。

 「今回の研究を通して、アルコール依存症患者ではテロメアの長さがより短縮していることがわかった。これは大量飲酒が細胞レベルで生物的な老化を引き起こすことを示唆している」(山木氏)


NHKクローズアップ現代でも特集され話題に

 この学会発表と相前後して、NHKクローズアップ現代(5月16日放送分)でも『細胞から若返る秘策~生命の不思議〝テロメア〟健康長寿はのばせる!』という特集が放送され話題を呼びました。

 番組では「長寿研究」の第一人者にして「ノーベル賞」受賞者、近ごろ世界中のテロメア研究の集大成を一冊に編んだエリザベス・ブラックバーン博士が取材に応じ、「健康寿命はのばせる」という現時点での結論を語っていました。

 他にも、広島大学大学院の田原栄俊教授の協力を得て、アラフィフ男女10人の血液検証から「テロメアの長さ」に個人差がある点を比較紹介。

 米国の最新研究では「テロメアを短くするもの」の代表格として「心的ストレス」の影響が判明しており、若くして「親の介護」に明け暮れる人の例証などが紹介されていました。

 どうやら人一倍の心配性や、とかく悲観的な考えをするタイプの人も、その心的ストレスからテロメアを長さを短くしがち(=遺伝子変異が起きやすい=ガンに変異しやすい環境)だといいます。

 あるいはテロメアの短さが脳の萎縮、とりわけ記憶を司る海馬の萎縮を顕著にする傾向も示唆されており、認知症のリスク説を裏付けます。

 となれば、あくまでも陽気な美酒三昧でついつい毎夜呑み過ぎてしまうという向きはまだ、いいとしよう。問題は他人様にいえない悩み事を独りで抱え込み、いつも鬱々としながら深酒をやめられないような人々のテロメア事情だろう。

 世の酒飲みは全員、前出の山木氏が報告の最後を締めくくった、次の言葉を肝に命じるべきかもしれなません。

 「一般の人にとっても、大量飲酒はテロメアを短縮させるのだという事実を心に留めておくことが、健康に生きてゆくための助けになるだろう」

(Health Pressより)

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