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ヨーグルトが糖尿病の慢性炎症を抑制

 順天堂大学などの研究グループは、2型糖尿病患者が乳酸菌(プロバイオティクス)を摂取すると、腸内フローラが変化し、慢性炎症の原因となる腸内細菌の血液中への移行が抑制されることを明らかにしました。2型糖尿病の発症メカニズムや病態の理解、新薬開発につながる成果です。



糖尿病の人は腸内フローラのバランスを乱しやすい

 研究は、順天堂大学大学院医学研究科・代謝内分泌内科学の金澤昭雄准教授、佐藤淳子准教授、綿田裕孝教授、プロバイオティクス研究講座の山城雄一郎特任教授らの研究グループが、ヤクルト本社と共同で行ったもので、英科学誌「Scientific Report」の電子版に発表されました。

 「プロバイオティクス」は、乳酸菌やビフィズス菌など、腸内環境を整える微生物のうち、生きて腸に到達できる有用な微生物のことで、腸内フローラのバランスを改善することで人に有益な作用をもたらします。

 ヒトの大腸内には、100兆個を超える腸内細菌がすみついて、複雑な生態系をつくっています。この菌のかたまりを腸内細菌叢といい、花畑のように見えることから「腸内フローラ」と呼ばれています。腸内フローラの乱れは健康に悪影響を及ぼすと考えられています。研究チームは、2014年に発表した研究で、2型糖尿病患者では腸内フローラのバランスが乱れやすいことを突き止めています。


腸内フローラが乱れると慢性炎症が起こりやすい

 腸内フローラが乱れると、「腸管バリア機能」が低下すします。腸管バリア機能とは、腸管上皮細胞がもつ腸内細菌の侵入を防ぐバリアの機能のことで、ウイルスや細菌、有害物質などが腸壁から体内に侵入するのをブロックする重要な役割を果たしています。

 腸管内における細菌の異常増殖や、腸管バリア機能の障害などにより、生きた腸内細菌が、腸管内から腸管粘膜を介して体内に漏れ出てきて、感染を引き起こすことを「バクテリアルトランスロケーション」と呼びます。腸内フローラが乱れると、このバクテリアルトランスロケーションが起こり、腸内細菌が血流中へ移行しやすくなります。2型糖尿病では、インスリンが作用する臓器の慢性炎症が起こることが知られていますが、このことが原因のひとつとなっています。

 腸内フローラを適切に維持し、血液中への細菌の移行を抑えることが、慢性炎症を抑えるために必要です。


プロバイオティクスを継続して摂取すると何が変わるか

 プロバイオティクスは腸内フローラのバランスを整えることが分かっています。今回の研究では、2型糖尿病患者がプロバイオティクス飲料を継続して摂取すると、どのような効果があるかを解析しました。対象となったのは、年齢30~79歳、HbA1c6%以上8%未満の2型糖尿病患者70人。このうち34人が試験を終了しました。

 研究グループは対象者を、「ラクトバチルス カゼイ シロタ株」を400億個含むプロバイオティクス飲料を継続して摂取する群と、摂取しない群に無作為に分け、16週間の経過観察を行いました。

 両群とも摂取前、摂取8週間後、16週間後に糞便中と血中の腸内フローラを解析しました。解析にはヤクルトが開発した腸内フローラ自動解析システム「Yakult Intestinal Flora-Scan: YIF-SCAN」を用いました。さらに、炎症性サイトカインである「TNF-α」「IL-6」、および炎症の指標となる高感度C反応性タンパクなどを解析しました。


乳酸菌が増えると腸管バリア機能が補強される

 試験終了時の16週後において、摂取群では便中の「ラクトバチルス属菌」、特に「ラクトバチルス カゼイ」と「クロストリジウム コッコイデス」が増えていました。いずれも体に有用な働きをする乳酸菌です。

 また、それ以外の善玉菌である「ラクトバチルス ガセリ」と「ラクトバチルス ロイテリ」も、摂取前と摂取16週後を比べると、有意に増加していました。さらに、腸内から血液中へ移行した菌数は、16週後に摂取群で有意に低下していることが明らかになりました。非摂取群では血液1mLあたり6個の細菌が検出されたのに対し、投与群では1.8個でした。

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 プロバイオティクスを摂取することで増えた乳酸菌は、いずれも腸管バリア機能を補強することが分かっています。今回の研究結果は、プロバイオティクスの継続摂取が、2型糖尿病患者の腸内フローラに変化を与え、腸内細菌の血中への漏れ出しを抑制することをはじめて明らかにしたものです。


腸管バリア機能の強化による慢性炎症の抑制

 腸内細菌が血中が漏れ出すと、慢性炎症を引き起こし、糖尿病の病態が悪化します。プロバイオティクスを継続して摂取することで、腸内フローラの変化を介して腸管バリア機能が強化され、血中への腸内細菌の漏れ出しが抑制されます。

 今回の研究は、2型糖尿病のさらなる病態解明や、腸管バリア機能の強化による慢性炎症の抑制をターゲットにした糖尿病の新薬開発につながる可能性があります。

 なお、炎症に関連する血液中の腫瘍壊死因子-α、インターロイキン-6および高感度C反応性タンパクには変動を認めなかったことから、今後は、慢性炎症の指標(炎症マーカ値など)を低下させ、実際に糖尿病の病態を改善しうるより効果的な介入方法を検討していくといいます。

(保健指導リソースガイドより)

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