エレクトロニクス業界に農業の波

 日本の農業が今、大きく変わろうとしています。2008年に農林水産省と経済産業省が共同で「農商工連携植物工場ワーキンググループ」を発足し、翌09年には100億円規模の補正予算が組まれたことで、日本の植物工場開発が一気に加速しました。植物工場はその名の通り、光や水、温度、湿度などが管理された施設で野菜や果物を栽培する先端農業です。


 植物工場のメリットとしては、気象変動の影響を受けずに安定供給が可能なことや、病原菌や害虫の侵入が少ないので農薬を多量に使用しなくても安全性が保たれること、さらには培養液成分や二酸化炭素濃度などを適切にコントロールすることで、植物の生育に最適な環境を作り出し、短いサイクルで多作することが可能だということなどがあります。

 また、若者の農業ばなれが進んでいる中、栽培技術をシステム化することによって、農業の知識や経験が乏しいパートやアルバイトでも作業することができるうえ、体力的にも従来の農業とは比べ物にならないくらい楽になるので、高齢者でも働けるなど、労務上のメリットも大きいといいます。


 矢野経済研究所が2013年に発表した「植物工場市場に関する調査結果」によると、2013年の国内植物工場運営事業市場規模は、完全人工光型で33億9,600万円、併用型及び太陽光利用型で199億1,900万円の見込みとなっており、2025年には完全人工光型で10倍以上の443億3,800万円、併用型及び太陽光利用型でも約5倍となる1,056億9,000万円が予測されており、成長産業としては充分見込みのある事業といわれています。その植物工場市場の成長の鍵となりそうなのが、完全人工光型のLED植物工場の本格普及です。同調査によると、2020年以降に生薬、医薬品原料など超高付加価値製品市場の発展期に入るとみており、これが市場牽引の一翼を担うことになりそうです。

 こうした動きを受け、植物工場事業に新規参入する企業も年々増え続けています。今年に入ってからとくに目立つのは、半導体企業の動きです。

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 植物工場にはこれまで、電機大手のパナソニックやシャープ株式会社などの電機メーカー、鉄鋼メーカーやセキュリティサービス企業、光学機器メーカーなど、実に様々な業種業態からの参入がありました。中には、大和ハウス工業株式会社のように、植物工場そのものの運営ではなく、植物を栽培するために必要な照明や水耕栽培設備を備えた植物工場ユニットを販売する企業もあります。

 そして14年に入り、これまで植物工場へのICT提供などを行ってきた企業が次々と、自ら植物工場で野菜の生産に乗り出しています。


 今年2月、富士通株式会社が「半導体生産からレタス生産へ」をスローガンに掲げて、半導体の製造を行う富士通セミコンダクターの会津若松工場で低カリウムレタスの出荷を開始したのをはじめ、ローム株式会社も先日、植物工場での農作物栽培に本格的に参入すると発表しています。ロームでは、これまでの事業で培ってきたLED照明のノウハウや、同社の得意分野である最先端のセンサー技術を活かしたシステムを構築し、すでに福岡県筑後市の長浜工場にて、イチゴの栽培を開始しています。実証段階において農薬の使用頻度を従来の10分の1以下に減少することに成功したほか、通常年一回の収穫となるイチゴを通年で収穫することに成功しており、露地栽培の7~10倍の効率収穫を見込んでいます。同社では、今年12月から量産設備による収穫とサンプル供給を開始し、2015年には卸売業者への出荷を目指しています。

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 日本の農業は今、様々な問題を抱えています。少子化や後継者問題、過疎、さらにはTPPの動向によっても、日本の農業の将来は大きく変わることになります。植物工場が発展し、農業に対するマイナスイメージの改善や経済面での安定が得られれば、これらの問題も好転するかもしれません。また東日本大震災をはじめとする災害復興などの面でも、植物工場やITを利用した次世代農業スマートアグリに対する期待は大きいといえます。また、露地栽培に比べ残留農薬や、土壌や雨からの放射能汚染などの減少も期待できます。

(Economic Newsより転載、画像追加)
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