金持ちと貧乏は遺伝する

「社会的な地位の可動性は神話である」

 これはカリフォルニア大学デービス校のグレゴリー・クラーク氏と、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスのニール・カミンズ氏という二人の経済学者が、最新の研究で出した結論です。社会的にエリートの立場にある人にしてみれば良い知らせだと言えるでしょうが、それは気の滅入るような話です。



 そして、この社会的地位は多くの場合、多くの世代を超えても解決しません。複数の世代とはつまり、研究のタイトル「イングランドにおける姓ならびに社会的流動性, 1170–2012」からもわかるように、一世代を30年として「28世代」のことです。社会的格差は300年以上前から続いています。

 この研究では、イングランドの家族の社会的地位に関する数百年分のデータが検証されています。1170年当時に社会的地位が高かった地主で、モンゴメリーやネヴィル、パーシーといった姓を持つ家系の多くは、2012年になっても変わらず社会的エリートの立場にあることがわかりました。

 研究では、「社会的に高い立場にある人間」として、「オックスブリッジ」(オックスフォード大学とケンブリッジ大学)の在籍者が取り上げられました。両大学に進学するのは、一般的にエリート層の学生だけだとされているからです。

 「強い家族文化、社会的なつながりの力、および遺伝学は、世代を継続しなければならない」と著者は書いています。身体的な「遺伝の法則」よりも強力な「相続の法則」が存在しているといいます。研究は、高い社会的地位の代用として、オックスフォードとケンブリッジ大学へ進学率を使いました。一般的に、エリートの学生だけが、それらの学校に行きます。

 世代全体で、「相関係数」 ― まったく相関していない0の意味と完全な正相関を意味している1で、2つのもの間の相関関係の強さを示す数 ― は、オックスブリッジに行っている同じ家族の世代のための0.7~0.9でした。それに対して、研究結果によると、世代間における相関関係は0.64にすぎないといいます。

 つまり、身体的な「遺伝の法則」よりも強力な「相続の法則」が存在しているわけです。「家族文化や社会的つながりの強い力や、相続されるものが、世代を長年にわたって結びつけていると考えられる」と、研究者は書いています。

 これはイギリスが伝統的に社会的流動性の低い国だからではないか、と考える人もいるかもしれません。しかし、アメリカでも状況はさほど変わりません。オタワ大学のマイルズ・コラック氏が行なった2013年の研究で、イギリスとアメリカは、先進国の中で社会的流動性が最も低いことがわかっています。それを示すのが下のグラフです。

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先進国の「グレート・ギャッツビー・カーブ」。横軸は、経済格差の大きさを表すジニ係数、縦軸は、親と子の所得の連動性を表す。経済格差が大きいほど、親の所得と子供の所得レベルが固定されやすい。


 コラック氏の研究で留意すべきなのは、社会的流動性が低い、つまり、社会的地位を上げるのが難しいことが、所得格差の大きさと結びつく点です。

 経済的不平等を専門とするフランスの経済学者トマ・ピケティが、その著書「21世紀の資本論」の中で警鐘を鳴らす世界が、ますます普通になりつつあるのかもしれません。それは、一般の人たちの所得が伸び悩む一方で、富裕層の相続財産はひたすら蓄積されていく世界です。

 考えてみれば我々は、そういった世界にいま現在、生きているわけです。アメリカでは人口のわずか0.1%が世帯資産全体の22%を所有し、格差拡大が懸念されています。

 深く憂慮すべきなのは、クラーク·カミンズの研究から社会的流動性は本当にそれを高めることを目的とし、社会的なプログラムにもかかわらず、ここ数十年で大幅に改善されていないことが分かったことです。(具体的には、たとえば、富裕層に対する税率を上げることや、低所得者層の学生が「オックスブリッジ」に進学できるよう後押しするプログラムなどが行われてきました)。

 もしかしたら、そういったプログラムや政策が功を奏するまでには、さらに時間がかかるのかもしれなません。格差拡大が経済的リスクを多く生み出していることを考えれば、社会的流動性を促進させる試みをやめるべきではありません。

(TheHuffingtonPostの記事を抄訳しました。図版はPRESIDENTより)

原文:You're More Likely To Inherit Your Dad's Social Status Than His Height

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