コメからつくる新食材「コメネピュレ」

 コメの価格が下落しています。スーパーの店頭に並んだ2014年産の新米の価格は、銘柄にもよりますが昨年より2~3割安いことは珍しくありません。今年のコメの生産量は昨年よりむしろ減っています。それでも価格が下がるのは、昨年からの在庫がだぶついているからです。



 根本的な理由は、コメ需要の長期減少です。2013年度国民1人当たりのコメの消費量は56.9キログラムと、この50年間でおよそ半減しました。

コメ版の「ピューレ」

 コメ需要をどう拡大するか。その切り札として官民から注目を浴びる存在がピューレです。野菜や果実をすりつぶし、裏ごしした汁を煮詰めた食材で、一般的にはトマト・ピューレといえば、なじみがありますが、そのコメ版です。

 横浜市元町の焼きたてパン店「ポンパドウル」では、「おコメ食パン」の販売が始まりました。「皮は香ばしく、中はしっとり」が売り文句です。



 秘訣はコメのピューレにあります。コメの持つ味や栄養価をそのままピューレにしてパンに配合。ピューレには保水力と酸化防止作用があり、しっとりとしたパンの食感を保つことができます。さらにピューレの持つ乳化作用によって、パンに混入していた一部添加物が不要になり、健康志向にもマッチします。これまでの米粉パンとはまったく違う味・食感です。

 このコメピューレを開発したのが、ネピュレ社(本社:東京都中央区)。ネピュレはネクスト・ピューレの略。素材本来の味や栄養を維持しながら、完全無添加でピューレ状にします。食品の酸化を防ぐために300℃の無酸素で過熱蒸気処理する技術。さらに素材の細胞を残したまま、加水することなくピューレ状にする遠心分離技術。これら2つを組み合わせて新食材、その名も「コメネピュレ」を実現しました。


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コメネピュレの製造ライン


 新食材とは決して大げさな表現ではありません。従来のピューレは素材の風味や栄養が損なわれて、水のほか着色料や香料、砂糖などを加えるものがほとんどですが、ネピュレは文字どおり素材をそのままピューレにしました。ネピュレ社はすでに4年ほど前から果実や野菜のネピュレを商品化しており、榮太樓總本鋪「果汁飴」や山崎製パンの「イチゴスペシャル」などに使用されています。

 そして今年に入り、コメネピュレの商品化にこぎつけました。4月には秋田県の農業法人「大潟村あきたこまち生産者協会」と業務提携。同協会が生産を担い、コメネピュレの量産を始めました。

 コメネピュレのポイントは、パンやデザート、麺類などに使用すると素材本来のうま味を引き出し、一部の添加物などが不要になること。そしてその結果、コメの用途拡大につながることです。

 コメ農家にとっても魅力的な存在です。大潟村では米粉用の多収米を原料として使用し、ネピュレに加工しても新規需要米として補助金の対象となり、今後はコメ補助金の縮小も予想されるが、同協会の涌井徹社長は「コメネピュレの需要が拡大すれば、補助金なしでも十分に採算はとれる」といいます。

 引き合いは順調です。ポンパドウルに先立ち、9月にはコンビニ大手のローソンがコメネピュレの入った「豆パン」を発売。ほかにも複数の大手コンビニがパンなどで採用を検討しています。そうなった場合、現在の生産量では賄えないため、大潟村ではライン増設を計画中です。


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 ネピュレ社は次々と新手を打っています。6月には新潟県と業務提携し、新潟県産のコメの供給を受ける体制を整えています。大潟村での生産が軌道に乗れば、新潟県内の農家と手を組み、生産拠点を作る計画です。最終的には全国レベルでコメ農家と連携する構想を持っています。

 すでにパン以外の需要開拓も進めています。たとえば、冷凍にしたコメネピュレをかゆ状にしてそのまま食べる「生きているおかゆ」のコンセプト。離乳食や病院・介護食としてのニーズのほか、一般消費者にも手軽にコメ本来の味を楽しめる商品として広がるかもしれません。もちろんこの場合、パンに使うよりもはるかに多くのコメネピュレを使うことになります。

 ネピュレ社の加納社長は「2020年までに生産ラインを120に増やし、23.8万トンのネピュレを生産したい」と語ります。その時のコメの利用量は約6万トン。2013年、米粉用に生産されたコメ約2万トンをゆうに超えます。

(2014年10月28日東洋経済オンラインより)
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