「人食いバクテリア」患者が多発

 手足の壊死えしや意識障害を引き起こし、死に至る恐れもある人食いバクテリアと呼ばれる「劇症型溶血性レンサ球菌感染症」の今年の患者数が、12月中旬で263人となり、調査を始めた1999年以降最悪となったと読売新聞が伝えています。


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劇症型溶血性連鎖球菌感染症とは

 劇症型溶血性レンサ球菌感染症は1987年にアメリカから、手足の壊死を伴う非常に重篤なA群レンサ球菌による疾患の発生が報告されました。その後、世界各地からA群レンサ球菌による重篤な疾患が相次いで報告されるようになりました。その症状は、四肢の疼痛等から始まり、数十時間以内には人食いバクテリアと言われる所以である手足の壊死、それに伴うショック、多臓器不全などを併発し死に至る恐ろしい疾患で、死亡率は約30%と細菌感染症の中でも高率です。

 A群溶血性レンサ球菌感染による一般的な疾患は咽頭炎で、その多くは小児が罹患しますが、劇症型溶血性レンサ球菌感染症は子供から大人まで広範囲の年齢層が罹患します。特に30歳以上の大人に多いのが特徴です。



  日本における最初の典型的な症例は1992年に報告されており、1999年に感染症法の全数把握疾患に指定された後は、年間20〜200例前後の患者が全国で報告されています。

 A群溶血性レンサ球菌に感染した人の中で劇症型を発症する人は限られています。感染した人のほとんどは咽頭感染、皮膚感染のみで、全く症状の出ない人もいます。健康な人でも劇症を発症することがありますが、ガン、糖尿病、慢性心疾患、慢性呼吸器疾患のような基礎疾患を持つ人や、ステロイドを服用している人などは高い発症リスクがあります。劇症型の初期症状は、発熱、突然発症する激痛、めまい、インフルエンザ様の症状、錯乱状態、身体の広範囲の紅斑などです。

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原因と感染経路

 劇症型溶血性レンサ球菌感染症は、A群溶血性レンサ球菌のようにβ溶血を示すレンサ球菌が原因です。感染経路は最も多かったのが創傷感染で、次いで飛沫感染、接触感染、経口感染ですが、不明な場合が多く、感染から発症までの潜伏期間も明確ではありません。

劇症型溶血性連鎖球菌感染症の治療

 早期診断及び早期治療が最も重要です。 抗菌薬としては、ペニシリン系、マクロライド系薬剤やリンコマイシン系薬剤などを使用します。早期の治療が死亡のリスクを減らしますが、第一選択薬の是非が患者の予後を左右することもあり、注意が必要です。

壊死性筋膜炎

 溶連菌急性感染症の最も重症な病型で、毒素性ショック症候群とともにきわめて急速に進行する軟部組織の感染症で、典型的な例では指先や足先など四肢の末端部から、一時間に数cmもの速さで壊死が進行します。高熱、全身状態の不良、局所の腫脹・疼痛が主症状です。一般に人食いバクテリア感染症と呼ばれる疾患の一つです。外傷や熱傷、水痘などで皮膚が障害されている場合に、発症の危険性が高いともいわれます。

劇症型レンサ球菌感染症例

※衝撃的な画像なので、見たくない方はご遠慮ください。 

 壊死性の筋膜炎を起こした場合、壊死組織の外科的除去(デブリードマン)が必要不可欠です。敗血症の状態にあり、DIC(汎発性血管内凝固症候群)や多臓器不全を来たす場合が多いため、これらの合併症に対する対症療法も必要です。

予防のポイント

 A群溶血性レンサ球菌感染症の予防には、うがい・手洗いやマスクの着用等が有効です。咽頭痛がある場合は早めに医療機関等で受診し、溶血性レンサ球菌の感染を確認する検査を受けましょう。もし、感染が確認された場合には、抗菌薬投与後24時間はなるべく自宅で療養します。

(資料:国立感染症研究所感染症情報センター他)
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