主食をやめると健康になる?

 私たちが毎日食べている米飯やパン。これらの「主食」を控えれば、肥満や糖尿病などさまざまな生活習慣病が予防・改善できるといいます。京都・高雄病院の理事長江部康二医師が10年以上の経験をもとに、『主食をやめると健康になる』という本で糖質制限食の効果をご紹介しています。



食前・食後血糖値の変化からみる食生活

 約700万年間の人類の歴史のうち、穀物を主食としたのは、農耕が始まってからの約1万年間にすぎません。それまではすべての人類が糖質制限食を実践していました。

 人類の食生活は「農耕が始まる前」「農耕以後」「精製炭水化物以後」の3つに分けることができます。この3つの変化がきわめて重要な意味を持っているので、それ以外のことはすべて枝葉末節と言い切ってもよいくらいです。その重要な意味というのは、血糖値の変化です。


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 血糖値を切り口にして人類の食生活を考えてみると、鮮明な変化が見えてきます。

 人類の歴史のうち農耕が始まる前の約700万年間は、食生活の中心は狩猟や採集でした。米や小麦などの穀物は手に入らなかったので、誰もが糖質制限食を実践していたといえます。

 このような糖質の少ない食生活なら、血糖値の上下動はほとんどありません。例えば、空腹時血糖値が100mg/dl(ミリグラム・パー・デシリットル)程度とすると、食後血糖値はせいぜい110~120くらいで、上昇の幅は10~20程度の少なさです。これならインスリンの追加分泌はほとんど必要ありません。

 次に、農耕が始まったのが約1万年前です。人類は狩猟民から農耕民になったとき、単位面積あたりで養える人口が50~60倍にも増えました。しかし、収穫した穀物を食べると血糖値が急上昇します。

 空腹時血糖値が100mgとして、食後血糖値は140くらいで、上昇の幅は40もあります。穀物を食べるたびに血糖値が上昇してインスリンが大量に追加分泌されますから、農耕以後の1万年間は、すい臓のβ細胞はそれ以前に比べて毎日10倍以上も働き続けなくてはならなくなったのです。

 さらに、18世紀に欧米で小麦の精製技術が発明されます。白いパンの登場です。日本では江戸中期に白米を食べる習慣が定着していきます。すなわち、ここ200~300年間、世界で精製された炭水化物が摂取されるようになりました。

 現代では、少なくとも文明国の主食は白いパンか白米です。精製炭水化物は未精製のものに比べて、さらに血糖値を上昇させます。空腹時血糖値が100mgとして、食後血糖値は160~170くらいで、上昇の幅は60~70もあります。

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 こうなると、インスリンはさらに大量に追加分泌されます。頻回・大量分泌が長期におよび、すい臓のβ細胞が疲れきってしまえば糖尿病にもなります。インスリンの分泌能力が高い人は、さらに出し続けて肥満になります。

 健康を維持するには、恒常性を保つことが重要です。人類の食前・食後血糖値の恒常性は約700万年間保たれていましたが、農耕開始後の約1万年間は上昇幅が2倍になり、精製炭水化物を摂るようになった約200年間は3倍になり、インスリンを大量に分泌せざるをえなくなりました。

農耕が始まる前の人類は何を食べていたのか?

 それでは、農耕が始まる前の人類はいったい何を食べていたのでしょう?

 約700万年間、人類は狩猟・採集を生業としており、日常的な食料は、魚貝類、小動物や動物の肉・内臓・骨髄、野草、野菜、キノコ、海藻、昆虫などです。ときどき食べることができたのは、木の実、果物、球根(山イモなど)でしょうか。

 すなわち、高脂質・高タンパク・低糖質食です。糖質制限食における3大栄養素の割合は「脂質56%、タンパク質32%、糖質12%」ですから、これが「人類本来の食生活」に近い比率です。

 この700万年間は穀物がなく、日常的に摂取する糖質のほとんどが野草や野菜分の糖質です。古くから野草や野菜は日常的に食べていたと思われます。

 このことは、人類がビタミンCを体内で合成できないことからも推察できます。動物性食品だけでは、ビタミンCが必ず不足してしまうからです。野草にもビタミンCが豊富なものがたくさんあります。

 ちなみに、現在、糖質制限食で野菜を摂ることは、ビタミンCを確保するためにも重要な意味を持っています。適量の野菜(最低ビタミンC必要量)は必ず食べることが必要です。ただし大量の野菜は糖質量が増えるので要注意です。

 次に果物やナッツ類は、秋を中心に季節ごとに少量は手に入るので、当然食べていたと思われます。もっとも、当時の果物やナッツは野生種ですから、現在食べているものに比べたら、はるかに小さくて糖質含有量も少なかったと思います。

 そして、ジャガイモやサツマイモを人類が食べはじめたのは、農耕開始と同じ頃か、それ以降です。山イモなどの球根は、さまざまな種類が山のなかに自生していたと思われるので、たまに運よく採集できたら食べていたと思います。

私たち人類の遺伝子は穀物に対応できていない

 人類がチンパンジーと分かれて700万年です。その後、アウストラロピテクス属、パラントロプス属、ヒト属などの7属23種の人類が栄枯盛衰をくり返し、結局、約20万年前に東アフリカで誕生したホモ・サピエンス(現世人類)だけが現存しているわけです。

 ここで大切なことは、7属23種の人類はすべて狩猟・採集が生業だったということです。つまり、農耕が始まる前の約700万年間は、人類皆糖質制限食であり、ヒトは進化に要した時間の大部分で狩猟・採集生活をしていたということです。

 したがって、現世人類の行動や生理・代謝を決める遺伝子セット(DNA)は、狩猟・採集の生活条件に適応するようにプログラムされていると考えるのが自然です。

 大ざっぱですが、人類の歴史700万年のうち、農耕が始まって1万年なので、穀物を主食にしている期間はわずか700分の1となります。残りの期間は、人類の食生活は糖質制限食でした。

 人類の進化の過程では「狩猟・採集期間:農耕期間=700:1」で、狩猟・採集期間のほうが圧倒的に長いわけです。

 このように人体の生理・栄養・代謝システムにおいては、糖質制限食こそが本来の食事であり、穀物に60%も依存するような食事を摂るようになったのは、ごく短期間にすぎないわけです。

 本来、人間は、穀物に依存するような遺伝的システムは持っていないということです。しかし、人口の増加を支えるため、やむをえず穀物が主食になっていったものと考えられます。

 糖質制限食の基本スタンスは、長い歴史のなかで人類が日常的に摂取していたものを食べるということです。

 糖質制限食でも、「適量の野菜、少量のナッツ類、少量の果物」程度の少なめの糖質量は、大昔からときどき摂取していたもので、人体の消化吸収・栄養代謝システムにおいても許容できる範囲です。

 正常人が、健康のためにスーパー糖質制限食を実践する場合は、糖尿人より多めの野菜、適量のナッツ類、適量の果物、適量の山イモなど球根くらいまでの糖質量は許容範囲です。

(DIAMOND Onlineより要約)
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