モテット『イエス、わが喜び』BWV227

 BACHはカンタータ、ミサ、受難曲以外にも多くの声楽曲を作っていますが、合唱曲の大作のモテット、「イエスよ、わが喜び」BWV227を聴いてみたいと思います。

 モテットとは,時代や地域により,様々な曲種や様式をさす言葉として用いられましたが、バッハの時代ドイツでは,結婚式や葬儀などの際の特別な礼拝で用いられるドイツ・プロテスタント教会の宗教音楽で, 聖書の章句やドイツ語の聖歌(コラール)から歌詞が取られ,多声的に作曲された合唱作品をモテットと呼んでいました。


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 「イエスよ、わが喜び」は、教会音楽歌家ヨハン・クリューガーが作曲した17世紀の代表的なドイツコラールに基づいて作られ、1723年にライプツィヒで、葬儀のために演奏されたとされています。テキストは、ヨハン・フランクによる同名のコラール(1650)と新約聖書ローマ人への手紙の第8章からの数節を交互に組み合わせて構成されています。

 モテットに使われる楽器はポジティフ(オルガン)と通奏低音(ヴィオローネ)だけで合唱の補助的な役割です。


 2003年に設立されたボーカル・コンソート・ベルリンの演奏動画でお聴きください。指揮は1961年オランダ生まれの合唱指揮者ダニエル・ロイスです。



第1曲:コラール 《イエスよ、わが喜び》

第2曲:合唱 《今やキリスト・イエスにある者は積み罪に定められることがな
         い》

第3曲:コラール 《君が御加護のもとに》

第4曲:合唱 《なぜならいのちの御霊の法則は》

第5曲:コラール 《年老いし竜にも逆らい》

第6曲:合唱フーガ 《しかし、神の御霊があなたがたのうちに宿っているなら、
            あなたがたは肉におるのでなく霊におるのである》

第7曲:コラール 《去れ、すべての宝よ》

第8曲:合唱 《もし、キリストがあなたがたのうちにおられるなら》

第9曲:コラール 《さらば、世の選びしものよ》

第10曲:合唱 《もし、イエスを死人のなかからよみがえらせたかたの御霊が》

第11曲:コラール《退け、悲しみの霊》


 歌詞は《続きを読む》に記載してあります。

イエス、わが喜び


第1曲:コラール第1節

Jesu, meine Freude,    イエスよ、私の喜び、

meines Herzens Weide, 私の心の牧場、

Jesu, meine Zier,    イエスよ、私の誉れ、

Ach wie lang, ach, lange ああ、どんなに長く、どんなに長く

ist dem Herzen bange, 不安な心で

und verlangt nach dir! あなたを求めたことか。

Gottes Lamm, mein Bräutigam, 神の小羊、わが花婿、

außer dir soll mir auf Erden あなた以外では私にとってこの世には

nichts sonst Liebers werden. 愛しい方はいないだろう。

第2曲:合唱 ロマ書 8.1

Es ist nun nichts Verdammliches    今や罪に定められることはない。

an denen, die in Christo Jesu sind,   救い主イエスの内に居る者は。

die nicht nach dem Fleische wandeln, 彼らは肉ではなく、

sondern nach dem Geist.    霊にしたがって進むからだ。

第3曲:コラール第2節

Unter deinem Schirmen あなたのご加護のもと

bin ich vor den Stürmen 私はあらゆる敵の襲撃から

aller Feinde frei.    免れる。

Laß den Satan wittern, サタンが荒れ狂おうとも

laß den Feind erbittern, 敵が猛り立つとも

mir steht Jesus bei!    私の側にはイエスがいらっしゃる。

Ob es itzt gleich kracht und blitzt, たとえ雷が鳴り稲妻が走り、

ob gleich Sünd und Hölle schrekken: 罪と地獄が脅かそうとも、

Jesus will mich dekken. イエスは私を庇ってくださる。

第4曲:合唱 ロマ書 8.2

Denn das Gesetz des Geistes, 救い主イエスに命をもたらす霊の  法則が、

der da lebendig machet in Christo Jesu,   

hat mich frei gemacht von dem Gesetz 罪と死の法則から私を解放したからだ。

der Sünde und des Todes.         

第5曲:コラール第3節

Trotz dem alten Drachen,    古い伝説の竜よ、

Trotz des Todes Rachen,    死の淵よ、

Trotz der Furcht darzu! そして恐怖よ、来るなら来い。

Tobe, Welt, und springe;    荒れ狂え、この世よ、砕け散れ、

ich steh hier und singe 私はここに立って歌う。

in gar sichrer Ruh!    全く揺るぎない安らぎの中で。

Gottes Macht hält mich in acht; 神の御力は私を顧みられる。

Erd und Abgrund muß verstummen, 現世も地獄も黙らざるをえない。

ob sie noch so brummen.    たとえ今は猛り狂うとも。

第6曲:合唱フーガ ロマ書 8.9

Ihr aber seid nicht fleischlich, あなたがたは肉ではなく

sondern geistlich,      霊の支配下にいる。

so anders Gottes Geist in euch wohnet. 神の霊があなたがたの内に宿っている限りは。
Wer aber Christi Geist nicht hat,    しかしキリストの霊を持たない者
は、

der ist nicht sein.    キリスト者ではない。
第7曲:コラール第4節

Weg mit allen Schätzen,    すべての宝よ、去れ。

du bist mein Ergötzen, あなた(イエス)は私の楽しみ、

-2-Jesu, meine Lust!    イエスよ、私の生きる喜び。

Weg, ihr eitlen Ehren, むなしい名誉よ、去れ。

ich mag euch nicht hören,    おまえの言うことなど聞くまい。

bleibt mir unbewußt!    おまえのことは知らずにいさせてくれ。   
Elend, Not, Kreuz, Schmach und Tod
悲惨、困難、十字架、屈辱と死に、

soll mich, ob ich viel muß leiden, どれほど苦しもうとも、

nicht von Jesu scheiden.    私をイエスから引き離すことはできない。  
第8曲:合唱 ロマ書 8.10

So aber Christus in euch ist, しかし救い主があなたがたの内に おられるなら、  
so ist der Leib zwar tot um der Sünde willen;

der Geist aber ist das Leben 体は罪によって死んでも、霊は義によって命となる。
第9曲:コラール第5節

Gute Nacht, o Wesen, さらば、生き様、

das die Welt erlesen,    この世が選んだ生き様よ、

mir gefällst du nicht!    おまえは私の気を引くことはない。

Gute Nacht, ihr Sünden,    さらば、罪よ、

bleibet weit dahinten, 離れたままでとどまれ。

kommt nicht mehr ans Licht! 日の目をみることのないように。

Gute Nacht, du Stolz und Pracht!    さらば、尊大と虚飾よ。

Dir sei ganz, du Lasterleben, 自堕落な生活よ、おまえには、

gute Nacht gegeben.    永遠の別れを言い渡そう。

第10曲:合唱 ロマ書 8.11
So nun der Geist des, der Jesum von den Toten もしイエスを死者の中から復活させた
auferwekket hat, in euch wohnet,
 方の霊が、あなたがたの内に宿るなら

so wird auch derselbige,     同様に、救い主を死者の中から復活
der Christum von den Toten auferwekket hat,
せた方は、あなたがたの死ぬべき体も

eure sterbliche Leiber lebendig machen  生かしてくださるだろう。

um des willen, daß sein Geist in euch wohnet. あなたがたの内に宿るその霊によって。

第11曲:コラール第6節

Weicht, ihr Trauergeister,    退け、悲しみの霊ども、

denn mein Freudenmeister, 私の喜びの主、

Jesus, tritt herein.    イエスがお入りくださるのだから。

Denen, die Gott lieben, 神を慕う者には、

muß auch ihr Betrüben 悲しみもまた

lauter Zukker sein!    砂糖のような甘いものとなるだろう。    
Duld ich schon hier Spott und Hohn,
たとえ私がここで嘲りと辱めを受けても、  
dennoch bleibst du auch im Leide,
その苦しみの中であなたはとどまりたまえ。 
Jesu, meine Freude.
   イエスよ、私の喜びとして。
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