未来のエネルギー源「下水熱」 課題は初期投資

 下水が、新たなエネルギー源として注目されています。下水の熱を一般家庭の冷暖房に利用します。東京では下水汚泥だけで燃やせるようにする技術を導入し、焼却に必要なガスや電気をゼロにする計画が進んでいます。資源循環が進む可能性がありますが、普及には費用面など課題もあります。

熱、温度差を冷暖房に活用

 新潟県十日町市の市立西保育園。気温は3度で、あたりは2メートルの雪が積もっています。園の事務室の空調機からは25度の温風が吹き出ていました。熱源は、園前の道路の下を流れる下水です。

 直径80センチの下水管には、上流の2500世帯からの排水が流れ、水温は12度。57メートルの区間で下水管の底に直径1センチの管を30本程度設け、不凍液を循環させます。下水熱で温められた不凍液の熱を熱交換機(ヒートポンプ)でさらに高温にして、空調機で使う仕組みです。

東京都市サービス(株)より


 一般家庭での実用化に向け、1月から本格稼働した中小口径の下水管を使った実証実験が始まっています。設備を置いたのは、下水道改修工事を得意とする東亜グラウト工業です。国土交通省が2011年度に始めた「下水道革新的技術実証事業」のうち下水熱の利用に、積水化学工業とともに参加してきました。今回、効果やコストのデータを集めるため、設置費の全額を同社が負担しています。

 熱を回収するための配管工事は50メートルの区間なら1日で終わります。各地で下水管が老朽化するこれからを好機ととらえています。「老朽管の改修時に合わせて配管すれば安上がり。自治体が導入しやすくなる」と期待しています。

 国交省下水道部によると、下水は、冬は外気より最大で10度程度温かく、夏は逆に10度程度低いといいます。この温度差を冷暖房に生かせば、通常の空調より25%の省エネルギーになります。全国の下水の処理量をもとに試算すると、1800万世帯の空調をまかなえる潜在力があるといいます。

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 ただ、下水熱を空調や給湯などに使っているのは、大規模施設がほとんどです。仙台市のスーパーや横浜市の日産スタジアム、大阪府枚方市の施設など十数カ所にとどまります。

 問題は初期投資の高さです。事業関係者によると、通常の空調設備に比べて10倍超かかり、配管工事も必要です。下水熱の利用の普及で設備が安くなることをめざしています。

 国も普及を後押しています。14年度には、千葉県浦安市、愛知県豊田市、神戸市など5カ所をモデル地区に指定し、地区内のマンホールからどれぐらいの熱量を得られるか、といった「下水熱ポテンシャルマップ」を作製中です。今後、公開して利用を促します。

汚泥、脱水して焼却で電力節約

 下水汚泥を有効利用する動きも広がっています。下水汚泥は、廃棄する際に水分を飛ばすため、自治体は大量の天然ガスや電気を使って焼却処分してきました。

 東京都は、こうした燃料を使わず、汚泥だけで燃える「エネルギー自立型」の焼却システムを計画しています。15年度に技術を確立し、16年度に整備を始める予定です。3カ所で導入し、一般家庭1万2千世帯分の電力使用量を減らせると見込んでいます。

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 課題は、汚泥の「含水率」です。下水は99%以上が水で、これまでは、脱水機で回転させたり、薬剤を使ったりして、含水率を77%にまで減らしてきました。この状態で「乾いた粘土」のようですが、燃料なしでは燃えません。

 都は現在、複数の企業と新型脱水機を共同研究中です。新型脱水機で71~74%にまで減らせれば、汚泥は燃えるといいます。汚泥を燃やす際の排熱で発電する新型焼却炉も導入します。

 国交省によると、下水汚泥は12年度、全国で224万トン発生しています。111万世帯が1年間に使う電力をまかなえる資源ですが、87%はエネルギーとして使われないまま、埋め立て処分されたり、セメントの材料に使われたりしています。

 国交省は、汚泥から発生する「バイオガス」の利用にも力を入れています。12年度、東京都や横浜市など47カ所の下水処理場でバイオガス発電が実施され、4.3万世帯分の電力を生みました。

 福岡市では14年度には、「下水道革新的技術実証事業」の一環で、バイオガスから燃料電池車の燃料となる水素をつくる事業も始めています。

(Asahi Digitalより要約)

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