ケーブルレスの時代へ アップルの挑戦

 今月9日、米アップルが発表した腕時計型ウエアラブル端末「アップルウオッチ」に注目が集まっていますが、同時に発表した新「マックブック」では「IT機器にケーブルはつきもの」という常識が変わりそうです。パソコンの横にたくさん並んでいた端子を大幅に削減し、ヘッドフォン端子を除けば、USB端子1つで充電までを含むすべての接続を処理する斬新な形に変わりました。デジカメなどデジタル機器もLTEなどの通信機能を搭載するようになり、ケーブルで接続する端子の必要性は急激に低下しています。スマートフォンやタブレットの普及で当たり前となった「ワイヤレス」や「ケーブルレス」という考え方が、数年後にはIT業界全体の常識として広まりそうです。

未来のパソコンを先取り

 アップルが発表した12インチの新マックブックは「薄く」「軽い」のが特徴です。薄型の「マックブックエアー」に高解像度の「レティーナ」ディスプレーを搭載してほしいと期待するファンは多く、アップルはエアーではない別シリーズながらレティーナディスプレーを搭載して薄くしたパソコンを出して、その声に応えた形です。

*Retinaとは「網膜」ですが、これは「人間の網膜が認識可能な解像度」に匹敵ないしは超えるという意味合いで用いられています。


 今回の薄型化を実現するにあたり、アップルでは端子を2つに集約するという大胆な設計を導入しました。新型マックブックには「USB-C」とヘッドホンの端子しかありません。


macbook-air-rumour.jpg


 新型マックブックは薄型化の邪魔となる端子を極力少なくし、USB-Cとヘッドホンのみしかありません。電源はUSB-C端子から供給し、ディスプレーなどそれ以外の機器はすべてUSB-Cからアダプター経由で接続します。薄さは13.1mmで重さは2ポンド(約920グラム)です。

 USB-C端子はまだ新しい規格なので対応アダプターなども少なく、発売当初はユーザーにとってかなり不便ですが、USB-Cが業界標準規格であることから、今後は他社も続々と搭載して対応機器が急速に充実していくことは間違いありません。新型マックブックはアップルが提唱する「未来のノートパソコン」の先駆けとなるでしょう。



デジタル機器も端子不要

 先週スペイン・バルセロナで開催された世界最大級の通信関連展示会「モバイル・ワールド・コングレス(MWC)2015」の会場でパナソニックが展示していたのはLTE通信機能を内蔵したデジカメ「DMC-CM1」です。1インチの大型センサーを搭載して高品質の写真が撮影できるだけでなく、その写真を外出先であってもモバイル回線経由でクラウドに即座に保存できます。将来的には、デジカメ本体にSDカードなどのメモリーは不要になる未来を感じさせる製品です。

 今はまだWi-Fiのみ対応というデジタル機器が多数ですが、いずれはLTEでも通信できるのが当たり前という時代が来るでしょう。LTE経由でクラウドにつながるということは、デジタル機器につなげるためのケーブルや端子も不要になることを意味します。


20la6p12.jpg


 最後まで残る可能性があるのは「充電ケーブル」ですが、サムスン電子の発表した「ギャラクシーS6」「ギャラクシーS6エッジ」のようにワイヤレス充電に対応すれば、それすらも不要になります。

通信も充電もケーブル不要

 モバイル業界全体では、すでに「電波が足りない」という課題が浮き彫りになってきています。スマホを持つユーザーが増え続けると同時に通信速度が高速になれば、今後も大量のデータ通信が発生します。そこへ、DMC-CM1のようなLTE対応のデジタル機器が続々と登場し、もちろん今後盛り上がると予測されるIoT機器も携帯ネットワークにつながっていきます。あらゆるものがネットにつながる上で、ネットワークの容量をいかに増やしコントロールしていくかが業界全体の悩みです。

 注目されるのは、クアルコムが展示した既存のWi-FiとLTEネットワークを「キャリアアグリゲーション」と呼ぶ技術でまとめるものです。将来的には、キャリアが割り当てられている周波数帯だけでは通信容量が足りなくなる恐れがあるので、現在は無線LANのWi-Fiなどが利用している5GHz帯にもLTEの電波を飛ばすことで、データ通信の容量を上げる取り組みです。

001.jpg

 5Gや6Gの時代にはWi-FiなどもLTEに統合されていく世界になるかもしれないといいます。今は自宅やカフェなどで自由にWi-Fiの電波を飛ばしており、全体の利用効率としてみた場合は決して最適とはいえません。いずれは、そのほとんどをLTEに集約して電波の使い方が整理整頓ができれば、限られた電波の中で処理できる容量を上げられる可能性があり、モバイルにつながる機器が増えてもさばくことが可能になります。

 今回アップルが発表した新マックブックは、LTEにも対応していなければワイヤレス充電にも非対応です。しかし、「端子を極力なくしたパソコン」はまさに未来を先取りする考え方で、今後の常識となるのは時間の問題です。近い将来にはLTE通信やワイヤレス充電に対応したパソコンも登場する可能性が高いでしょう。

 アップルには、対応製品をいち早く発売したことで、無線LANを一気に普及させた実績があります。今回の新たな挑戦は、「ケーブルのいらないデバイス」という新常識をスマホやタブレットを超えてIT業界全体に広げることになりそうです。

(Nikkei Webより要約)
スポンサーサイト
コメント
コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する