私たちに新しい領主さまがおいでだ《農民カンタータ》BWV212

 BACHの世俗カンタータの中では最後の作品で、1742年8月30日にライプツィヒ近郊のクラインチョハー村で行われた新領主カール・ハインリヒ・フォン・ディースカウの着任祝宴で演奏されました。全24曲からなり、当地の方言丸出しの明快なテキスト、民謡や流行歌のリズムやメロディをふんだんに取り込んだ音楽と、親しみやすい作品として人気があります。


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 カイ・ヨハンセン指揮、シュティフトバロック・シュツットガルト、歌手はカルメラ・コンラート(S)、ベンジャミン・アプル(B)の演奏会の録画でお聴きください。昨年6月19日の録画で画質もよく演奏も充実しています。


               


1.序曲

2.アリア(二重唱・ソプラノ、テノール)

「私たちに新しい領主さまがおいでだ。

宮廷のお偉い方でいらっしゃる。

ビールのお振る舞だ、頭に効くぞ、

それがもちろん肝心のところさ。

牧師さんはどうせいつでも仏頂面。

楽師のみなさん、早いとこお願いだ。

ミーケのスカートはもう揺れてるぞ、

これはちょっとしたお楽しみ」。

3.レチタティフ(バス、ソプラノ)

バス「さあミーケ、お前のキスをお呉れ」。

ソプラノ「それだけならいいけどね、

お前のことは分かっているよ、のらくら者、

お前は、いつだってその先がしたいのさ。

新しい領主さまは厳しそうなお人だよ」。

バス「ああ、ご主人さまは叱ったりしないさ。

私たちと同じか、あるいはもっとよくご存じだ。

ちょっとしたおふざけの楽しみを」。

4.アリア(ソプラノ)

「ああ、なんて楽しみでしょう、

二人で仲良くするなんて。

ほら、もう、お腹の中で騒いでいるわ、

まるで蚤と南京虫、

それに狂ったようなすずめ蜂の群れが、

取っ組み合いをしているみたい」。

5.レチタティフ(B)

「ご主人様は結構。税金取りだけはごめんだ。

あいつは地獄の番人だ。

まるで稲妻のように、すぐに罰金をとりたてる、

俺たちが指先をちょっと川につけただけでさ」。

6.アリア(バス)

「ああ、税金取りのお役人、あまりあこぎに、

俺たち農民にあたりなさんな。

俺たちの皮まで剥がさないでおくれ。

葉っぱを食べてしまっても、

毛虫が茎だけは残すように、

お前もどこかで満足するがいい」。

7.レチタティフ(ソプラノ)

「何と言っても、

うちの領主さまは最高だわ、

絵にも描けない立派さよ、

袋にいっぱいの銀貨でも

とても買えないぐらいさ」。

8.アリア(ソプラノ)

「うちらのすばらしい

愛するお殿様は

人好きのするお方、

だれも悪口など言う人はいない」。

9.レチタティフ(バス、ソプラノ)

バス「お殿様は老いも若きも助けてくださる。

お前に内緒で教えてやるが、

俺たちの村はうまくやったんだぞ、

この前の徴兵の時にはな。

ソプラノ「私はもっとすごい賭けを知ってるわ。

税金だって殿様しだいなのよ」。

10.アリア(ソプラノ)

「こいつはすてきだ、

だれも口にはしない、

払い残した税金のことなど、

一言だって言う人がいるものか。

あのクナウトハインとコスプーデン村は

自業自得というものさ」。

11.レチタティフ(バス)

「ところで俺たちの奥方様は

ちっとも威張ったところがないし、

俺たちみたいな貧乏なでくの坊にも

声をかけてくださる、

まるで仲間みたいに。

信心深くて、家計もしっかり、つつましく、

俺たちのお殿様を

文無しから金持ちにさせたものだ」。

13.アリア(バス)

「五十ターレルの現金を

酒も飲まずに使い果たすとは、

とんでもない大事だ。

みんなに髪をむしられても、

終わったことは終わったこと、

いつかどこかで

倍にして貯めるから、

この五十ターレルはほっといてくれ」。

13.レチタティフ(ソプラノ)

「ちょっとまじめに聞いておくれ。

飲み屋と

ダンスが

気になる前に、

まずは。お殿様の栄誉をたたえて、

新曲ひとつ歌うから聞いておくれ」。

14.アリア(ソプラノ)

「クライン・チョッハーの村は、

やさしく、甘く、

まさにアーモンドの実のよう、

私どもの村に、

今日はただ、

あふれるばかりの祝福がありますように」。

15.レチタティフ(バス)

「これはお前には出来すぎだ、

それも都会風の歌と来た。

俺たち百姓は、そんな上品には歌わない。

まず一つ聞いてみな、

俺にぴったりの歌を」。

16.アリア(バス)

「どうぞ一万ドゥカーテン、

毎日稼いでください、お殿様。

なみなみとついだ杯のワイン、

グイッとお召しになるがいい」。

17.レチタティフ(ソプラノ)

「これはまた野暮ったい。

粋なお方たちがおられるのだよ、

お前の歌を聞いて、きっと腹を抱えて

お笑いになるよ。

まあ、私が昔風の歌を歌っても、

同じことだろうけどね」。

18.アリア(ソプラノ)

「お美しい奥方様、

たくさんのお子さまに恵まれますように。

お上品な姿のお子たちを、

立派にお育てなされませ。

これこそチョッハー村とクナウトハイン村の

願いでございます」。

19.レチタティフ(B)

「お前の言うとおり、

あの歌はできが悪すぎた、

ひとつ俺も歌わずばなるまい、

都会風という歌のやつをな」。

20.アリア(バス)

「あなた様の繁栄が続きますように、

そして楽しみに満ちて笑ってお過ごしになりますように。

あなた様のお心の立派さが、

あなた様にとっての畑となって、

そこにみごとな花が咲くことでしょう」。

21.レチタティフ(ソプラノ、バス)

ソプラノ「これでもう十分よ」。

バス「さて、それではひとっ走り、

俺たちの酒場にしけこまずばなるまい」。

ソプラノ「そういうこと。

お前の言いたいことはいつもこの通り」。

22.アリア(ソプラノ)

「皆さんもご存じの通り、

今が潮時、

呑み時よ、

のどの渇いた人、合図して、

右手がダメという人は、

しっかり取り変えて、

はい、左手で」。

23.レチタティフ(ソプラノ、バス)

バス「すてきなお前、まさにその通り」。

ソプラノ「それでは、ここでは、

もう何もすることはないときた。

そろりそろりと

皆でなじみの酒場へお出かけとしよう」。

バス「ほいきた、だれでも俺と一緒に来い、

収税官のルトヴィヒの旦那も

今日はぜひともご一緒ですぜ」。

24.合唱(ソプラノ、バス)

「さあ行こうよ、トウーデルザックが

ブンブン唸る俺たちの酒場へ。

喜びの叫びをあげるとしよう、

ディースカウの旦那とそのご一族万歳、

神さまが叶えてくださいますように、

殿の求めと、

何でも願いをすべて」。

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