マタイ受難(BWV244)

 今日は教会暦の聖金曜日です。復活祭前の金曜日でキリストの受難と死を記念する日ですが、この日の典礼は古代エルサレムの習慣から発展したもので、キリストの死の時間に(午後3時から)いっさいの装飾を除いた祭壇の前にひれ伏し、悲しみと沈黙のうちに始まり、福音書の受難の朗読が行われ、教会をはじめ人類のすべての共同体のために共同祈願がささげられます。プロテスタントの教会でもこの日は特別な典礼を行い、16世紀以降、ドイツのルーテル派教会では一年のうちでもっとも重要な日で、聖餐を受けるべき日とされ、受難曲などが教会で演奏されてきました。


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 マタイ受難曲は、BACHがマタイ福音書の中の26、27章を二部構成の音楽劇としたもので、あまりの素晴らしさに「人類最高の音楽遺産」という賛辞が送られてきました。

 内容はイエスがエルサレムに入ってから、処刑されるまでの一連の物語です。福音史家による聖書の朗読と、イエスや他の使徒の言葉や、合唱、アリアなどから成り立っています。全曲続けて聴くと3時間近くになりますが、時間があったら必ず対訳を参照しながら聴いてください。

 Youtubeでいろいろな演奏が聴けますが、フィリップ・ヘレヴェッヘ指揮の演奏会の録画では、歌手のクリストフ・プレガルディエン、ドロテー・ミールズをはじめ、オーボエのマルセル・ポンセール、フラウト・トラヴェルソのヤン・デ・ウィンネ

、ヴィオラ・ダ・ガンバのフィリップ・ピエルロ等が出演し、古楽界最高の演奏が録画を見ながら聴くことができます。



マタイ受難曲 第一部 歌詞対訳

マタイ受難曲 第二部 歌詞対訳


マタイ受難曲の構成

第一部

 「シオンの娘たち」と「信じる者たち」との対話形式により、これから起こるイエスの受難が歌われます。合唱Ⅰが、「見よ」と呼びかけ、合唱Ⅱが「どこを」と問い、Ⅰが「その忍耐を」と答える中で、オルガンとソプラノ・リピエーノ(集団)のコラールが加わります。

1. 「来たれ、娘たちよ、われとともに嘆け」(合唱)

十字架の死の予告 イエスが弟子たちの前で自らの受難を預言します。

2. レチタティーヴォ(福音史家、イエス)

3. コラール「心より慕いまつるイエスよ」

祭司長たちの合議 祭司長や律法学者らがイエスの捕縛を謀ります。

4. レチタティーヴォ(福音史家、合唱)

香油を注ぐベタニアの女 ベタニアで罪の女の香油をたらした行為を咎める弟子たちをイエスが咎めます。

5. レチタティーヴォ(アルト)

6. アリア「悔いの悲しみは」(アルト独唱)

ユダの裏切り ユダが登場し、祭司長らにイエスの売り渡しを密約します。

7. レチタティーヴォ(福音史家、ユダ)

8. アリア「血を流せ、わが心よ!」(ソプラノ独唱)

最後の晩餐 イエスは弟子たちの前でユダの企てを暴露します。

9. レチタティーヴォ(福音史家、合唱、イエス)

10. コラール「われなり、われこそ償いに」(合唱)

11. レチタティーヴォ(福音史家、イエス、ユダ)

12. レチタティーヴォ(ソプラノ)

13. アリア「われは汝に心を捧げん」(ソプラノ独唱)

オリーブ山にて イエスが自らの今後の運命と、ペテロと弟子たちが自分を否認し離反することを預言します。

14. レチタティーヴォ(福音史家、イエス)

15. コラール「われを知り給え、わが守り手よ」(合唱)

16. レチタティーヴォ(福音史家、ペテロ、イエス)

17. コラール「われはここなる汝の身許に留まらん」(合唱)

ゲッセマネの苦しみ ゲッセマネの園で、イエスは自らの今後の苦悩をよそに弟子たちは眠りこけてしまいます。

18. レチタティーヴォ(福音史家、イエス)

19. レチタティーヴォ(テノール)とコラール(合唱)

20. アリア「われしわがイエスのもとに目覚めおらん」(テノール独唱と合唱)

21. レチタティーヴォ(福音史家、イエス)

22. バスによるレチタティーヴォ

23. アリア「われは悦びて身をかがめ」(バス独唱)

24. レチタティーヴォ(福音史家、イエス)

25. コラール「わが神の御心のままに、常に成らせ給え」(合唱)

捕縛 ユダが再び登場しイエスが捕縛されます。

26. レチタティーヴォ(福音史家、イエス、ユダ)

27. 二重唱「かくてわがイエスはいまや捕らわれたり」(ソプラノ、アルト、合唱)

28. レチタティーヴォ(福音史家、イエス)

29. コラール「人よ、汝の大いなる罪を悲しめ」(合唱)


第二部

人気なき園に花婿を探すシオンの娘とエルサレムの娘たちの同情

30. アリア「ああ、いまやわがイエスは連れ去られぬ!」(アルト独唱、合唱)

大祭司の審問

イエスの裁判が始まり、偽証人が現われ民衆も煽動されます。 イエス自身が神の子であることを認めたことにより、民衆の騒ぎは頂点に達し、イエスは暴行を受けます。

31. レチタティーヴォ(福音史家)

32. コラール「世はわれに欺き仕掛けぬ」(合唱)

33. レチタティーヴォ(福音史家、証人)

34. レチタティーヴォ(テノール)

35. アリア「忍べよ! 忍べよ!」(テノール独唱)

36. レチタティーヴォ(福音史家、大祭司)と合唱

37. コラール「たれぞ汝をかく打ちたるか」(合唱)

ペテロの否認 下女たちにイエスと共にいたと告げられ、ペテロはこれを三度否認します。鶏が鳴いてイエスの預言の言葉を思い出したペテロは泣き出します。

38. レチタティーヴォ(福音史家、第1の下女、第2の下女、ペテロ)と合唱

39. アリア「憐れみ給え、わが神よ」(アルト独唱)

40. コラール「たとえわれ汝より離れいずるとも」(合唱)

ユダの後悔と末路 ユダがイエスを裏切ったことを悔いて自殺します。

41. レチタティーヴォ(福音史家、ユダ、第1と第2の祭司長)と合唱

42. アリア「われに返せ、わがイエスを!」

43. レチタティーヴォ(福音史家)

判決 総督ピラトはイエスを訊問しますが、イエスが自分を弁護しないのを怪しみ、ピラトは民衆にイエスの運命を託し、赦免するべきは極悪人バラバかイエスか、との選択を民衆に問います。民衆は赦免すべきは「バラバ!」と叫び、イエスには「十字架に架けるべし!」と叫び、ここにイエスの死刑が決定されます。

44. コラール「汝の行くべき道と」(合唱)

45. レチタティーヴォ(福音史家、ピラト、ピラトの妻、合唱)、合唱

46. コラール「さても驚くべしこの刑罰!」(合唱)

47. レチタティーヴォ(福音史家、ピラト)

48. レチタティーヴォ(ソプラノ)

49. アリア「愛によりわが救い主は死に給わんとす」(ソプラノ独唱)

50. レチタティーヴォ(福音史家、ピラト)、合唱

鞭打ち イエスは鞭打たれ、茨の冠を被らされます。

51. レチタティーヴォ(アルト)

52. アリア「わが頬の涙」(アルト独唱)

53. レチタティーヴォ(福音史家)、合唱

54. コラール「おお、血と涙にまみれし御頭」

十字架の道 イエスは、民衆の罵声を浴びゴルゴタへと連行されます。

55. レチタティーヴォ(福音史家)

56. レチタティーヴォ(バス)

57. アリア「来たれ、甘き十字架」(バス独唱)

十字架上のイエス ゴルゴタの丘に到着したイエスは強盗とともに十字架につけられます。

58. レチタティーヴォ(福音史家)、合唱

59. レチタティーヴォ(アルト)

60. アリア「見よ、イエスはわれらを」(アルト独唱と合唱)

イエスの死 イエスが息絶えます。すると天幕が裂け、地震が起きるなどの奇跡が現われ、民衆は「やはりイエスは神の子であったのだ」と知らされます。

61. レチタティーヴォ(福音史家、イエス)、合唱

62. コラール「いつの日かわれ去り逝くとき」(合唱)

63. レチタティーヴォ(福音史家)、合唱

降架と埋葬 イエスの遺体が下げ渡されます。イエスの復活を恐れて墓が封印されます。

64. レチタティーヴォ(バス)

65. アリア「わが心よ、おのれを浄めよ」(バス独唱)

66. レチタティーヴォ(福音史家、ピラト)、合唱

哀悼

67. レチタティーヴォ(バス、アルト、ソプラノ、合唱)

68. 終結合唱「われらは涙流してひざまずき」
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