瀬戸際Microsoftの秘策

 米Microsoftがサンフランシスコで始まった開発者会議「ビルド」において、ライバルであるiPhoneやAndroidのアプリを、そのままWindowsで使えるようにしてしまう大胆な策を発表しました。3年前に発売したWindws8が不評で市場での存在感を失いつつあるMicrosoftにとって、今夏発売予定の次期Windows10は絶対に失敗できない状況にあります。瀬戸際に追い込まれたMicrosoftは“禁断”の作戦に出て、巻き返しを狙います。


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 スマホの開発競争は、ほぼ限界まで達しつつあり、端末としての基本機能はどのプラットフォームでもあまり違いはありません。スマホの魅力を左右する重要な要素となるのが、その上で使うアプリの充実度です。使いたいアプリがあるかどうかで、ユーザーの満足度は大きく変わってきます。

 スマホやタブレットで使うアプリはインターネット上のコンテンツ配信サービスからオンラインで購入するのが一般的です。Microsoftも「ウィンドウズストア」という配信サービスをもっていますが、ライバルであるアップルの「アップストア」やGoogleの「グーグルプレイ」と比べると品ぞろえの充実度で格段に劣っており、Windws8やウィンドウズフォンが不振に陥っている一因となっています。

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2015年3月モバイルOSシェア


力業でライバルのアプリを動かす

 この状況を改善するためにMicrosoftが投入した秘策が、iPhoneやAndroidのアプリを、そのままWindowsで動かせるようにしてしまおうという大胆なものです。開発中の次期開発者向けツールで、iPhoneやアンドロイド向けに開発されたアプリを読み込み、最小限の変更を加えるだけでWindows向けに移植できるようになるといいます。

 アプリ開発者とすれば、iPhone向けに開発したアプリを、わずかな作業だけでウィンドウズストアでも展開できるのは大きなメリットになります。移植したアプリは「ユニバーサルアプリ」という形になり、スマホのウィンドウズフォンだけでなくWindows10が動くタブレットやパソコン向けにも販売できます。

 これまでWindows向けアプリを作り配信サービス上で流通させたものの、うまくいかずにあきらめたアプリ開発者が、既存のアプリをウィンドウズストアに流通させて、もうけることができるかもしれません。

 もちろん、これによって狙い通りにアプリが増えれば、アプリ不足に悩むMicrosoftにとっても願ったりかなったりです。Microsoftとしては、配信サービスを開始して3年が経過してもアプリがなかなか増えない状況を反省し、iPhoneアプリを動くようにするという「力業」を持ってきた印象です。

 今回の開発者会議に参加したユビキタスエンターテインメントの清水亮社長は「常識では考えられない。Microsoftはそこまでやるのかと驚いた」と興奮気味に語ります。それだけ、アプリを開発している人からするとインパクトの大きい話のようです。

 ただ、実際にウィンドウズストア向けのアプリが増えるためには、アプリ開発者が本当にもうかるかどうかが重要となります。

 Microsoftでは3年以内に、Windows10のデバイスを10億台以上普及させたいとしています。ウィンドウズストアをキャリア課金にも対応させるなど、決済部分も強化することで、アプリ開発者がもうけられる環境を整備し、iPhoneやAndroid向けにばかり注力しているアプリ開発者を、何とか振り向かせようと必死のようです。

 別のアプリ開発者は「いまはウィンドウズストアにアプリが少ないブルーオーシャン状態で、本気で参入すれば、競争相手が少なくうま味があるかもしれない」と語ります。その一方で、しかしそれも時間の問題ではないかと冷静に分析しています。

 確かにライバルが少ないことを好感してウィンドウズストアに参入しても、本当においしい市場なら時間とともにiPhoneやAndroid向けの配信サービスと同じ状態となり、遠からずアプリ開発者にとっては苦しい戦いを強いられてしまい、そう考えると「ウィンドウズのアプリストアには夢は抱きにくい」(アプリ開発者)というわけです。

新ゲームを期待させる「ホロレンズ」

 そんななかで、会議に参加したアプリ開発者から高い評価を集めていたのがヘッドマウント型コンピューター「ホロレンズ」です。



 ホロレンズとは頭に装着するゴーグル型の機器で、シースルー型で周囲の風景を見せながら、あたかもそこに存在するかのようにコンピューターグラフィックを投映するものです。家の中であれば、壁にテレビが表示され、床にはペットの犬が横たわっているように表示されます。まるで、コンピューターグラフィックが実現したもののように投映されるのです。

 ホロレンズもWindows10をベースに開発されており、将来的にはホロレンズ向けのアプリやサービスなども提供できるようになるようです。

 Microsoftの技術力の高さには目を見張るものがあり、ホロレンズ向けのサービスを作るのはかなりの労力を必要としそうだです、一方で参入障壁が高い分やりがいを感じるプラットフォームになりそうで期待されます。

 パソコンやスマホ向けには、すでにありとあらゆるものが登場しており、革新的なアプリやサービスを提供するのは難しい状況になってきています。そんなところにホロレンズという全く新しいプラットフォームが登場したことで、アプリ開発者としては「新しいものをつくって、世間をあっと言わせたい」という野心が芽生えてくるようです。

 今回、MicrosoftはiPhone向けアプリを取り込んで、アプリが少ないという弱点を克服。さらにホロレンズで開発者達の創作意欲を刺激しました。またこれまでWindowsでしか利用できなかったアプリ開発環境もマックやリナックスで利用できるように開放しました。マイクロソフトにとって、Windowsと並ぶ大黒柱である「オフィス」は、すでにAndroidやiPhoneでも利用できます。

 Windows10はスマホ、タブレット、ノートパソコン、デスクトップパソコンなど、すべて同じプラットフォームで動作するようになっています。今回の基調講演でも、スマホをモニターに接続し、パソコンと同じように作業するというデモをアピールしました。

 最高経営責任者(CEO)がサティア・ナデラに代わってから1年強。かつてのMicrosoftの保守的なイメージはなく、徹底的にオープンで革新的な企業を目指し変貌を遂げているようです。

(Nikkei Web、マイナビニュースより)
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