飲酒習慣がなくても怖い脂肪肝

 かつて、ウイルス性肝炎以外で、肝臓を傷める病気と言えば、大量飲酒で起こるアルコール性肝炎のイメージが強かったのですが、現代は、飲酒習慣がない人が陥る非アルコール性の脂肪肝炎(NASH)が急増しているといいます。

脂肪肝はメタボの肝臓における表現型

 NASHの前段にあるのが、肝細胞に過剰に脂肪滴が沈着した「脂肪肝」です。飲酒歴がない人の脂肪肝は、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)と呼ばれます。この四半世紀で日本人の脂肪肝は倍増し、健康診断では男性は25%、女性も15%と高率で見つかるようになっています。女性は女性ホルモンの恩恵で肝臓に脂肪が付きにくいためですが、閉経後はコレステロール値上昇と共に脂肪肝も増えてきます。

 脂肪肝の最大の背景となるのは、過食による肥満です。脂肪肝はメタボリックシンドロームの肝臓における表現型ともいわれ、メタボや生活習慣病を合併している人が圧倒的に多いといいます。肝臓はさまざまな物質を解毒するので、一部には薬剤等によって起こる脂肪肝もあります。

 そこに、インスリン抵抗性、肝臓への酸化ストレスや、活性酸素を生じやすくさせる鉄貯蔵、遺伝など様々な要因が加わることで、脂肪肝の10~20%が非アルコール性肝炎(NASH)に進展するとされます。NASHはその他の肝炎と同様に、肝硬変や肝細胞がんの発生母地になり、肝臓の線維化が進んで肝硬変になれば、もはや後戻りできません。



 もちろん、肥満でメタボとなれば、一瞬で命取りになる心血管障害のリスクも急騰します。日本糖尿病学会による糖尿病患者1万8385例の死因調査によれば、8.6%が肝がん、4.7%が肝硬変で死亡していました。両者を合わせると肝疾患は13.3%で、死因1位の虚血性心疾患(10.2%)を上回ります。

 また、脂肪肝は、メタボとは独立して、心血管のリスクを高める因子でもあります。肝臓に貯まった脂肪に活性酸素が結びつくと、有害な脂質(過酸化脂質)に変質してしまい、肝臓に多く集まっている血液や血管も活性酸素によるダメージを受けて、動脈硬化を加速させるからです。

脂肪肝は静かに進行するためウイルス性肝炎よりも深刻

 ウイルス性肝炎は啓発が進んで治療につながりやすくなったのに対し、脂肪肝は治療に踏み切りにくく、音もなく進行して心筋梗塞や脳梗塞を起こしかねないという意味では、より深刻です。

 脂肪肝は、健康診断による血液検査と、超音波検査やCTなどの画像検査の結果を見て総合的に診断します。脂肪肝に関しては、血圧や血糖のように血液検査上の基準値はありませんが、ALT(GPT)、AST(GOT)の値がいずれも基準値を超え50~100 IU/L前後に上昇することが多いといいます。

 ALTもASTも肝細胞の傷害を示しますすが、ウイルスが原因の場合はASTがより高いのに対し、メタボ絡みの脂肪肝の場合はALTのほうが高めに出ます。γ-GTPやコリンエステラーゼ(ChE)も上昇します。また、肝臓に過剰な鉄が貯まることも一因なので、脂肪肝の人は貯蔵鉄量の指標である血清フェリチンも高いことが多くなります。

 血液検査で異常がなかった人も安心はできません。超音波検査で脂肪肝が見つかることもあるからです。脂肪肝の場合の肝臓は、通常は同じ色に見える腎臓に比べ、白くキラキラと輝いています。それは、フォアグラそのものです。

皮下にも内臓周囲にも取り込み切れない脂肪が肝臓に貯まる

 脂肪肝が起こる仕組みは、以下の通りです。食事で摂取した脂肪や糖質から、インスリンの作用により肝臓で脂肪酸が合成されます。この脂肪酸は主として中性脂肪の合成に供され、できた中性脂肪は蛋白質と結合してVLDL(超低比重リポ蛋白)となって全身に運ばれ、筋肉で運動エネルギー源となります。過剰なエネルギーを摂取すると中性脂肪の合成が進み、VLDLをつくるのが間に合わなくなって、過剰となった中性脂肪が肝臓に蓄積していきます。

 そこに運動不足が加わると、余った中性脂肪は皮下に沈着するのみならず、内臓脂肪として貯蔵されます。肥満が進むと、皮下や内臓周囲に取り込み切れなかった脂肪は、血流に乗って再び肝臓に戻り、沈着がさらに進みます。肝臓は“沈黙の臓器”といわれるほど忍耐強いのですが、耐え切れなくなると脂肪肝を発症して肝機能の異常が現れてきます。

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 一方、肝臓からの脂肪酸の排泄には、血液中だけでなく、胆汁の中のリン脂質として十二指腸に排泄する分もあります。こちらの流れが滞ると、胆汁うっ滞として、黄疸や体の痒みなどが起こってくることがあります。

筋肉をつけて“霜降り”解消を

 脂肪肝と診断されたら、心電図や頚動脈エコー、場合によっては冠動脈CT撮影などの検査で動脈硬化の状態を評価してもらうほうが良い場合もあります。もし、冠動脈が狭窄し始めているようなら、積極的に治療しなくてはなりません。これは、痩せているのに脂肪肝という人も同様です。冠動脈の狭窄など、動脈硬化の進展が認められない場合は、標準体重に戻るまで、食生活改善と運動で減量に努めることです。

 肝機能を良くするための運動としては、メタボ対策と同様に、1日の消費カロリーを念頭に置いて有酸素運動に励むのがいいといいます。たとえすぐには体重が変わらなくても、“霜降り”が解消され筋肉量が増えることを目指します。筋肉量が付くと、グリコーゲンが蓄積できる場所が増えるため、血糖値を正常に維持でき、将来のサルコペニアやロコモティブ症候群予防にも有用です。

 脂肪肝の人は既に肥満である場合が多いため、急に強い運動負荷をかけるとアキレス腱や膝関節の障害を生じかねません。心臓のチェックなども必要です。問題がない場合、心拍数が1.5倍(1分間に60ならば90)になる程度の負荷の運動15分を1単位とし、1日3単位行います。時速4kmで歩く人が、6kmの早足で歩くイメージです。

 かつて、慢性の肝臓疾患には高蛋白・高カロリーの食事が勧められてきましたが、脂肪肝の場合は、カロリーはむしろ制限すべきです。とりわけ、中性脂肪の元になる糖と脂質は控えめにし、その代わり、肉、魚、卵、牛乳などの良質の蛋白を積極的に取るのがいいといいます。

 炭水化物の摂取を抑えると、エネルギー源であるブドウ糖が減るので、代わりに肝臓と筋肉に貯めたグリコーゲンが分解されます。ただし、炭水化物を控える一方で、高脂肪食を取り続けると、一見痩せ型に見えても内臓脂肪の蓄積や脂肪肝にはむしろ拍車がかかります。三大栄養素のバランスは大きく失しないことが大切です。

 アルコールは種類を問わず控えます。アルコール自体のカロリーが高い上、飲酒によって食欲増進効果もあるので、ノンアルコールの飲料に切り換えます。脂は、青魚に含まれるω3脂肪酸がお勧めで、中性脂肪もコレステロールも貯まりにくくします。

 肥満が解消されるにつれて、肝機能も正常化していく人が多いのですが、ALTが100を超えていたり中性脂肪が高い人は、早めに服薬を開始します。フィブラート系薬剤は、肝臓に働きかけてリン脂質の胆汁への排出を促進します。その際に、コレステロールも同時に排出するので、両方低下します。また、スタチン系薬剤の一部は、肝臓におけるコレステロールの合成を阻害する作用に加え、脂肪酸の消費を高める作用を持っています。

 脂肪肝イコール肥満というわけではありませんが、体重に目配りをすることは重要です。最近5年間の体重の推移を見て、体重が5kg増えていれば、“病気のもと”が5年間で作られたと推測できます。5年前の体重になると、異常値も正常になることが多いといいます。

(Nikkei Goodayより要約)
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