アルツハイマー発症リスク下げる「MIND食」

 米ラッシュ大学医療センターの研究チームによると、同チームが開発した野菜中心の食事療法を実践することでアルツハイマー病の発症リスクが低下する可能性があるといいます。

 マーサ・クレア・モリス博士ら研究者はMINDと呼ばれる食事療法を2年かけて開発。これを別の2つの食事療法と比較したところ、MIND食にアルツハイマー病の発症リスクを引き下げる効果があるとみられることが分かりました。研究結果は医学雑誌「アルツハイマーズ・アンド・ディメンシア」に掲載されました。

*MIND食:Mediterranean-DASH Intervention for Neurodegenerative Delay(神経変性疾患を先延ばしにするための地中海型DASH食介入)の略語

*DASH食:Dietary Approaches to Stop Hypertension(高血圧を防ぐ食事方法)の略語


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 比較対象となったのは心臓病に良いとされる人気の地中海式食事療法と、高血圧を抑制するためのDASHという食事療法。MIND食はこの2つの食事療法から多くの要素を取り入れており、野菜中心で高脂肪食品は少ないという点では3つとも同じですが、MIND食は緑色の葉物野菜やベリー類など「脳の健康に良い」とされる食品の摂取を特に重視しています。

 研究では、3つのうちどれか1つの食事療法を厳格に実践した場合、アルツハイマー病の発症リスクは低下しました。しかし、MIND食だけは部分的に実践しただけでも発症リスクが低下した可能性があります。

 研究は観察に基づいたもので、ランダム化比較試験は行われていません。そのため、研究結果はMIND食がアルツハイマー病の発症リスクを抑えた証拠にはならないが、アルツハイマー症の発症リスク低下とMIND食に関連があることを示しています。

アルツハイマー予防は30代から―食べ物にも注意

 専門家によると、遺伝的特徴だけでなく、生活習慣に関わる要素がアルツハイマー病の発症に大きく影響していることが理解され始めており、発症の可能性を下げる食事療法の考案は研究者の願いです。米アルツハイマー病協会によると、米国には現在、推定で510万人のアルツハイマー病患者がおり、2025年には710万人に増加すると予想されています。

 この研究の筆頭著者でラッシュ大学神経疫学教授のモリス博士はアルツハイマー病と食事の関連の研究が「心臓病や糖尿病、栄養と比べて比較的新しい分野」と述べ、「解明が進めば、最新の研究結果に基づいて(MIND)食事療法を修正することになる」といいます。

 MINDは「神経変性を遅らせるための地中海式食事療法とDASH食事療法による介入」を、DASHは「高血圧を防ぐための食事によるアプローチ」をそれぞれ意味する英語の頭文字です。

 MIND食では1日に少なくとも全粒の穀物3回とサラダ1回、さらにもう1種類以上の野菜を摂取します。ワインは1日グラス1杯。ナッツはほぼ毎日、豆類は1日おき程度に食べます。鶏肉とベリー類は少なくとも1週間に2回、魚は少なくとも1週間に1度摂取します。研究によると、アルツハイマーの発症リスクを抑えるには、指定された不健康な食品の摂取を制限しなければなりません。例えば、バターなら1日に大さじ1杯未満、チーズ、揚げ物、ファストフードの摂取量は3つのいずれかを週に1回未満としています。


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 モリス博士によると、MIND食では、認知低下の遅延や認知症防止の効果が認められたブルーベリーなどのベリー類を1週間に少なくとも2回は摂取するよう勧めています。これまでの研究で、緑の葉物野菜には他の野菜以上に脳を保護する効果があることもわかっており、MIND食では1日に1回、緑の葉物野菜と1種類か2種類の別の野菜を摂取するよう推奨しています。他にもナッツ類や豆類、全粒の穀物やオリーブオイル、それに1日にグラス1杯のワインの摂取を勧めています。

 研究には開始当時に認知症を患っていなかった923人が参加。年齢は58歳から98歳までで、中央値は81歳。平均で4年半の追跡調査を行い、144種類の食品の中から何をどの程度の頻度で摂取したかを1年に1回、回答してもらいました。その結果、MIND食を厳格に実践した参加者のアルツハイマー病発症リスクは53%低下したことがわかりました。地中海式食事療法の実践者のリスク低減率は54%、DASH食は39%でした。

 重要なのは、MIND食は部分的に実践した場合でもアルツハイマー病の発症リスクが35%下がったことです。地中海式食事療法とDASH食は部分的に実践しても、発症リスクに影響はなかったといいます。モリス博士は部分的に取り入れるほうが楽だと考える人が多いため、この点は特に励みになると述べました。

 MIND食に関する研究が発表されたのは初めてで、研究者は研究内容に今後、若干の追加があるとみています。モリス博士によると、研究が進めば、例えばココアやカフェインがMIND食に追加されるかもしれないといいます。


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 研究では、認知低下との関連で緑の葉物野菜についても分析を行いました。モリス博士によると、1日に1回から2回、緑の葉物野菜を摂取した参加者は摂取量が少なかった人と比べて、「認知低下の速度が劇的に低下」し、「年齢で言えば約11歳若かった」といいます。

 デューク大学医療センター(ノースカロライナ州ダーラム)の精神医学教授でアルツハイマー病専門家のムラリ・ドレイスワミー博士はMIND食について、認知症、脳卒中、心臓病のリスクを引き下げるという「3つの意味で思いがけない贈り物になるかもしれない」と述べました。ドレイスワミー氏は今回のMIND食の研究に関わっていません。博士はMIND食が認知症発症リスクを本当に抑えているか、運動や瞑想などライフスタイルへの介入と組み合わせた場合、プラスの効果があるかを確認するにはランダム化比較試験が必要と述べました。

(The Wall Street Journalより)
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