食物繊維を、人類は紀元前6000年から食べていた!

 大腸がんや生活習慣病の予防、ダイエットに欠かせない食物繊維を人類は、いつ頃から食物繊維を食べていたのでしょうか。そのルーツをたどると、紀元前6000~4000年頃に小麦の栽培が始まったメソポタミア河流域に行き着きます。古代の人たちが食べていたのは、小麦や大麦を粉に砕き、水を加えて薄くのばして焼くだけの、酵母を使わない平たい無発酵パンで、乾パンのような食感だったようです。



 パンの食文化は、エジプト人が偶然に発見した発酵法とともに、紀元前2000年頃には都市国家ギリシアへ伝わりました。地中海性気候のギリシアは、大河が少なく土地は痩せていたものの、小麦、大麦、エン麦、粟、レンズ豆などがたわわに実り、パン職人たちは、生地にハチミツやクリーム、卵やオリーブオイルを加え、ドライフルーツをあしらった発酵パンを、大きな焼き窯の前で手際よく焼いました。おびただしい市民、行商人、兵士、旅人で賑わう市場は、香ばしい香りで満たされました。

 ギリシアのパン職人たちが発酵パンに練り込んだ小麦は、硬い外皮、胚乳、胚芽

をもち、これらをすべて粉にした全粒粉は、胚乳を製粉した小麦粉よりも栄養価が高く、薄力粉のおよそ3倍の食物繊維や鉄分、ビタミンB1を含みます。粉の色はやや茶褐色ですが、独特の風味と食感があります。当時の人たちは、食物繊維の効用を知っていたのでしょうか?


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 小麦粉は、タンパク質の含有量によって、強力粉、中力粉、薄力粉に分かれます。今やパン生地の主役は強力粉ですが、強力粉は、胚乳から作られるタンパク質のグルテンを豊富に含むので、水を加えてこねると粘りと弾力が生まれます。しかも、酵母で発酵させると生地が膨らみ、柔らかく食感のいい美味なパンが作れます。

 時代は下って、19世紀末のアメリカ。セブンスデー・アドベンチスト教会のサナトリウム館長で医学博士のジョン・ハーヴェイ・ケロッグは、呼吸法、菜食主義、浣腸などの独自の健康法を実践していました。病人食用に、小麦粉を練り、ローラーで延ばした薄いパン生地を作っていましたが、ある日、乾燥した生地をローラーで引き延ばすとフレークになり、このフレークが便秘や大腸炎の患者に好評だったことから、後にシリアル食品として売り出します。これが牛乳や豆乳をかけて食べるコーンフレークです。

数々の研究データが指し示す食物繊維の長寿力&整腸力

 イギリスには食物繊維にまつわるエピソードが多く、マッカリソン博士は、小麦パン、豆類、果物を多食するパキスタンのフンザ人はなぜ長寿だろうと考えました。アフリカ住民と白人の疫学的研究を行ったウォーカー博士は、アフリカ住民が心臓疾患や動脈硬化症に罹りにくいのは、低脂肪、高繊維質の食事にあると発表します。その後、食物繊維をダイエタリーファイバーと名づけたのはヒップスレー医師でした。

 ウガンダなどで顧問医師を30年間も勤め、「アフリカ医学辞典」を編集したトロウェル博士は、食物繊維は、体内に吸収されない必要な栄養素を排出する食べ物のカスではなく、ヒトの消化酵素で分解されない植物細胞壁成分であると宣言。鉄分、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、銅などの栄養成分が豊富に含まれることを科学的に初めて実証しました。

 便の滞留時間とがん発症の研究に没頭し、1971年に食物繊維とがんの関連性を明らかにしたのは、バーキットリンパ腫の発見で知られるアイルランドの外科医デニス・バーキット博士です。アフリカに20年以上も住み込み、アフリカの農民は、大腸がんなどの病気が極めて少ないことに気づきました。

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 バーキット博士は、欧米人に多い大腸憩室炎や大腸がん、糖尿病、胆石、動脈硬化症、虚血性心疾患、肥満、痔、便秘がアフリカの住民に少ないのは、食物繊維をたくさん摂取するからだと結論づけます。大腸憩室症は、大腸の腸管内壁の一部が腸壁外に袋状に突出する病気です。

 バーキット博士は、アフリカの農民とイギリスの学生の1日排便量や排泄されるまでの消化管通過時間を測定。 アフリカの農民の1日排便量は平均470g、消化管通過時間は平均36時間、イギリス人の学生の1日排便量は平均104g、消化管通過時間は平均73時間。 食べ物が小腸を通過するまでの時間は両者に差はなかったが、イギリス人の学生は、アフリカの農民の約2倍に相当する73時間も大腸に便を溜めていました。

 長時間にわたって、大腸に便が滞留すると、悪玉菌が便を腐敗させ、発がん物質や有害物質、発がんを促す二次胆汁酸が大量に発生します。アフリカの農民は、食物繊維を1日に60~80gも食べていました。

 バーキット博士は、食物繊維の摂取が便秘の改善に効果があるだけでなく、食物繊維が不足すれば、大腸ガンの発症リスクが高まると世界に警告を発しました。こうして食物繊維の市民権は、20世紀に確立されました。

(Health Pressより)
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