生肉を食べるのは死の危険!

 厚生労働省は、豚レバーなど豚の内臓や肉の生食について、食中毒やE型肝炎発症のリスクが高いとして、豚の食肉を生食用として販売することが6月12日から禁止されました。生食の提供が禁止されるのは牛レバーに続き2例目で、違反した場合は2年以下の懲役か200万円以下の罰金となります。

 厚労省によると、豚の内臓や血液はE型肝炎ウイルスや寄生虫などに汚染されていることが多く、牛肉などに比べ内部まで汚染されるため、安全に食べるには十分な加熱が必要となります。過去10年間に、豚レバーの生食が原因の食中毒で32人の患者が出ているほか、豚レバーが原因とみられるE型肝炎で死亡例も報告されています。

牛の代用品の豚も禁止に

 牛レバ刺しが食べられなくなり、残念がる人は多いので、禁止後の代用品として、豚のレバ刺しを提供する飲食店が出てきました。さらには、豚の刺身を看板メニューにする店まで登場し、全国に豚の生食料理を提供する飲食店が増えていました。


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生肉とは基本的に危険なもの

 厚生労働省が豚肉の生食を禁止したのは、E型肝炎ウイルスによる劇症肝炎や、サルモネラ属菌やカンピロバクターなどの細菌による食中毒のリスクが高いからです。豚レバーの生食による食中毒は2003年以降で5件発生しています。


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 国内での感染例はほぼないものの、豚やイノシシに寄生する有鉤条虫(ゆうこうじょうちゅう)などの寄生虫は、死に至るほどの重篤な感染症を引き起こすために、豚肉の取り扱いには注意が必要とされてきました。

 一方、牛や馬は、このような寄生虫感染のおそれが少ないので、生で食べられる場合があります。しかし、食中毒事件で死者を出した腸管出血性大腸菌は、特に牛の腸管に多く生息し、糞尿などを介して牛肉やほかの食品を汚染します。

 鶏肉も刺身などで食べる場合がありますが、鶏肉にも寄生虫や細菌がいます。食品安全委員会の調査によれば、小売店で販売されている肉の半分以上がカンピロバクターに汚染されていました。

 カンピロバクター属の細菌は、家畜やペットの腸管に存在する細菌で、特に鶏の保菌率が高いと言われます。汚染された鶏肉を生のまま食べれば、下痢や嘔吐、発熱などの症状だけでなく、神経まひや呼吸困難などを引き起こすギランバレー症候群を発症する可能性もあります。


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 魚についても、すべての種類を生で食べられるわけではありません。刺身は四方を海に囲まれ新鮮な魚がすぐに手に入る日本だからこそ味わえるものです。

 生食するのは主に海水魚ですが、腸炎ビブリオという細菌による食中毒のリスクがあるので新鮮なものに限ります。腸炎ビブリオによる食中毒は夏場に多く発生し、激しい腹痛と下痢を引き起こします。また、サケにはアニサキスなどの寄生虫がいますが、冷凍すると死ぬので、冷凍処理したものが刺身などで食べられています。

 一方、淡水魚には肝ジストマや横川吸虫といった寄生虫が多いため、生食は向きません。肉や魚の細菌や寄生虫は十分に加熱すれば死滅します。

肉の生食経験者は6割

 生肉は食中毒のリスクが高いので、十分に加熱して食べるのが当然だと考えられてきました。ましてや豚肉を生で食べるなどという発想はあまありませんでした。

 ところが、最近の消費者は、肉の生食への警戒の意識が薄れ、抵抗感もなく豚の刺身を食べています。外食ばかりでなく、新鮮なら大丈夫と野生の鹿や猪を刺身で食べたり、スーパーで買ってきた生肉をそのまま食べたりする人までいます。「若い知人が調理中に生肉を味見している姿を見て、唖然とした」という声も聞きます。

 東京都は、都民に対して「食肉の生食等に関する実態調査」を行いました。2011年度の調査では、消費者1000人に食肉を生で食べることがあるか尋ねたところ、「よく食べる」「たまに食べる」に「以前は食べていたがやめた」と回答した人を加えると6割を占めました。生肉による食中毒も多く発生しており、20~30代の患者が多いといいます。

東京都の食肉の生食等に関する実態調査


 もともと日本人は魚を生で食べる習慣があるので、その影響か食肉の生食も受け入れやすいようです。かつては、生肉を食べてはいけないと頻繁に言われたものですが、食品衛生や安全管理の質の向上が吹聴されるにつれて、そんな言葉は聞かれなくなってしまいました。B級グルメの流行なども手伝って、様々な飲食店が生肉メニューを提供するようになりました。若者を中心に生肉に対する意識は変化し、ここ数年生肉ブームが続いています。

焼き肉とともに広まった生肉食

 人類が火を使って、調理を始めたのはいまから200万年前のこと。火であぶることで肉を安全に食べられるようになりました。固い肉も食べやすくなり、消化もよくなり、さらに、様々な調理法によっておいしく食べる方法を編み出しました。

 日本人の肉食の歴史をひもとくと、縄文時代は狩猟で得た鹿や猪の肉を焼く、煮るなどして食べていました。仏教伝来以降、表向きでは肉食が禁止され、再び本格的に肉を食べるようになったのは明治時代以降のことです。

 内臓を食べるようになったのは、戦争による食糧難に肉の代用として使われたことによります。闇市で、在日韓国・朝鮮人が牛のハツ(心臓)を焼いて売り出したところ、人気が出たので、他の内臓類も工夫し、売られるようになりました。

 朝鮮半島には、内臓を食べる習慣はあまりありませんが、ユッケのような生肉を使った料理がありました。そこで、在日韓国・朝鮮人が、刺身の好きな日本人向けにアレンジしたことで、レバ刺しなどの生肉メニューが生まれたと考えられています。レバ刺しは、大阪の鶴橋のようなコリアンタウンから焼肉とともに広がったのでしょう。焼き肉店が増えるにつれて、生肉を食べる人も増え、ユッケやレバ刺しは人気メニューとなりました。

「新鮮だから安全」は間違い

 新鮮だから安全。信用できるお店ならレバーや豚肉を生で食べても大丈夫と考えている人がいるかもしれませんが、それは間違いです。いまはもうレバーや豚肉を生で提供する店はないはずで、新鮮だから寄生虫や細菌がいないわけではありません。

 バーべキューで生焼けの肉を食べたり、生肉をつかんだトングから食べ物が汚染して食中毒になることもあります。特に子どもや高齢者は重症になりやすいので気をつけましょう。肉を食べてスタミナをつけるつもりが、食中毒になっては元も子もありません。

(産経News,JB Press他より)
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