自動車の「ながら運転」は危険だ!

本当に素晴らしいアイディアといえるのか

 スマートフォンのように操作できるダッシュボードのディスプレイは2つの問題を抱えています。「消費者がそれを望んでいる」、そして「自動車メーカーもそれを提供する」ということです。

 しかし、自動車メーカーの答えは、もちろん「イエス」です。スマートフォンをそのまま大きくして自動車のダッシュボードに表示させれば、売り上げを伸ばせ、客も集まってくると主張します。また、運転の安全性も高まると言います。音声操作を十分に統合させ、タッチ画面も大きくなれば、運転手は運転中にスマートフォンを操作する必要がなくなるためです。



ディスプレイと道路を同時に見ることはできない

 ダッシュボードのディスプレイはますます複雑化していきます。その一方で、自動車にいったいどれだけのテクノロジーが必要なのかという議論もあります。

 カリフォルニア州で、運転中の携帯電話使用規制法案を可決に導いたジョー・シミティアン元州議会議員は、「(新しい画面が) 深刻な公共安全問題へ繋がらないかと心配です」と語ります。「立法という視点から、議会ではこの先何年もこの問題について話し合うことになるでしょう」。

 「画面を見ながら同時に道路も見るのは不可能です」とユタ大学の認知神経科学教授デビッド・ストレイヤー氏は言います。同氏は、走行中の運転手がどのようなことに注意を奪われるかについて論文をいくつか書いています。「新しい画面が導入されると、道路を見ているべき運転手は画面上の動きへ目をやり、ほとんどの専門家が安全であるとみなす時間よりも長い時間を、画面を見ることに費やしてしまいます」。

 一部の画面にはテキストメッセージを受け取る機能も備わっていますが、ストレイヤー氏の研究によれば、平均的なテキストメッセージを読む時間は4秒、同氏が安全と考える時間よりもはるかに長と言います。

 しかし、自動車メーカーと消費者にとって、機能満載の新画面はかなり魅力的なもののようです。

 具体的な事例で見ると、例えばAudi A3では、運転手は電話と自動車を同期させ、ダッシュボード上でツイッターの自分に関するメンションやつぶやきを読むことができます。ただし、全体のタイムラインを見ることはできません。

 また、スマートフォンで撮影した写真をアップロードできます。撮影場所までの地図をリクエストすることも可能です。ダッシュボードにはテキストメッセージが表示され、それを読み上げる機能も付いています。



 Audiの広報担当者マーク・ダンケ氏は「ダッシュボードで使える機能を提供しなければ、運転手は結局スマートフォンを使用してしまいます。そのほうが運転手の気を逸らせてしまうため、はるかに危険であることは周知の通りです」と話します。

 これまでは、ダッシュボード関連の技術が自動車を選ぶ際にそれほど影響することはありませんでしたが、今後3~5年のうちにますます重要になって行くと自動車メーカーは予測しています。

 市場リサーチ会社J.D. Powerによる最近の研究では、約15%の消費者が、最新のテクノロジーが搭載されていない自動車は購入の際に検討の対象にしないと答えていることが分かりました。1年前には、この割合がわずか4%でした。

ダッシュボードには規制がほとんどない

 現在、ダッシュボード・ディスプレイに関しては規制がほとんど存在していません。多くの州では、車のバックを支援するバックカメラやその他の安全ビデオシステムなど、ナビゲーション関連以外のビデオ映像を走行中にドライバーが見ることは禁止されていますが、禁じられているのはその程度。連邦基準としては、ディスプレイの明るさを調節可能なものとしなければならない、などの少数の規制しかありません。

 米国道路交通安全局は、走行中の運転手がダッシュボード・ディスプレイにどこまで注意を払っても良いかに関するガイドラインを公表しています。

 まず、運転と関係のない写真や動画を表示させるべきではないとし、何らかの作業を完了させるまでにボタンやキーをタップするのは6回までとしています。しかし、ガイドラインは今のところ自発的なもので、自動車メーカーに従う義務はありません。



 自動車業界も独自のガイドラインを作成していますが、多くの場合、業界基準は政府の基準よりも緩やかなものです。例えば、業界のガイドラインでは、運転手が何かの作業を完了させるまでに、ディスプレイに目を置く時間が1回につき2秒未満、それを連続して合計20秒までとしていますが、政府のガイドラインでは、1回につき1.5~2秒のチラ見で合計12秒を越えるべきではないとしています。

 一部の専門家は、政府の基準ですら緩すぎると指摘しています。「安全のためには、4回のチラ見だけで作業を完了できるような設定にすべきです」

 保険会社などが資金を提供するワシントンDCの道路自動車安全支援会のヘンリー・ジャスニー副会長は言います。同支援会は、何の規制もないよりは不完全な規制でもあったほうがましであるとして、政府のガイドラインを法律化するよう求めています。法案が提出されれば、可決までの過程において、支援会がさらに厳しい規制を働きかける方針です。

進むスマホ機能の取り込み

 自動車メーカーは、さまざまな形で人気のスマートフォン機能をディスプレイに取り入れようとしています。

 現代自動車など一部のメーカーは、グーグルAndroidおよびアップルiOSと自動車のディスプレイとに互換性を持たせ、運転手はダッシュボードの画面上に簡略化した自分のスマホのディスプレイを見ることができる機能を開発しています。

 またテスラなど別のメーカーは、スマホとの同期に頼らずに、スマホを使って行う各種の機能、例えば近くのレストランを検索する機能を、ダッシュボードから行えるシステムを研究しています。

 運転手の視線を道路から画面へとそらす回数を最低限に抑えつつ、ダッシュボード内のディスプレイの反応性を高めることが最大の目標であると、Nvidia社の自動車部門の責任者ダニー・シャピロ氏は言います。同社は、AudiやTesla車に搭載されるディスプレイのハードウェアやソフトウェアを開発しています。 

 「わが社では、ジェスチャーを使ったり、スワイプやズームなど、直感で理解できるグラフィックの開発に取り組んでいるところです。そのような動きに反応し、しかも画面も大きければ、スマートフォンよりもはるかに安全なものになるはずです」とシャピロ氏は言います。

 今のところ、保険会社は新しいディスプレイに関して立場を表明してません。インシュランス・インフォメーション・インスティチュートの広報担当者は、ダッシュボード上の大きくてインタラクティブなディスプレイについて、盗難のリスクを高めるほど価値のあるものと判断されない限り、保険料の値上げや値下げの対象とはならないとしています。

(東洋経済オンラインより)
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