人間は偏見の塊である?

理性的であることを妨げる12の認知バイアス

 人間の脳は1秒間に1016回という現存するいかなるコンピューターよりも強力な処理を行うことができます。しかし人間の認知には偏りがあり、このおかげで、しばしば判断が狂い、誤った結論を下します。


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 これを認知バイアスといいますが、論理的誤謬(ごびゅう)の場合は、論理的な論証における間違いです。例えば、人格攻撃論法、すべり坂論法、循環論法、威力に訴える論証などが挙げられます。他方、認知バイアスとは、思考上の欠陥や制限、すなわち記憶の誤り、社会的帰属の誤り、記憶の誤りなどに起因する判断の欠陥のことです。

 社会心理学者の中には、認知バイアスは効率的な情報処理に役立っていると主張する者もいます。それでも、このせいで酷い間違いを犯すことはよくあります。認知バイアスは以下のように分類できます。


1. 確証バイアス


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 人は自分に同意する人物に同意したがります。人が自分と同じ政治的意見を持つサイトにばかりアクセスしたり、同じ価値観や趣味の持ち主とばかり付き合うのもこのためです。同様に、自分の価値観を揺るがすような人や集団、あるいは情報源からは遠ざかります。こうした選好が、行動心理学者バラス・スキナーが言う確証バイアスです。

 人は無意識のうちに、自分の偏った意見を増強する意見のみを参考にし、そうでないものはいかに正当なものであろうとも無視してしまいます。逆説的ではありますが、インターネットはこうした傾向をさらに助長しました。


2. 内集団バイアス


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 確証バイアスに多少似ているのが内集団バイアスです。これは生まれ持った部族的な傾向で、その大部分がいわゆる「愛情ホルモン」オキシトシンに関連しています。この神経伝達物質は、グループ内の人との絆の強化を促しますが、部外者に対しては逆の効果を発揮します。余所者を怪しく感じたり、恐れたり、軽蔑したりさせます。こうして、見知らぬ者を差し置いて、仲間の能力や価値を過大評価してしまいます。


3. 賭博者の誤謬(ごびゅう)

 誤謬というが、思考傾向のバイアスです。人は過去の出来事が未来の結果に影響を与えると考え過ぎてしまいます。その典型的な例がコイン投げです。5回連続で表が出たとしたら、人は次は裏が出る可能性が高いと考えがちです。しかし、確率的には裏も表も相変わらず50%で変わりません。統計学者が言うように、各回の結果はそれぞれ独立しており、表と裏が出る確率はそれぞれ50%なのです。

 これに関連して、ギャンブル依存症の要因にもなるポジティブな期待バイアスもあります。つまり、運の流れはやがて変わるはずで、幸運はそこまで来ていると錯覚させます。


4. 無駄遣いの正当化

 無駄遣いをしてしまったとき、その買い物がお買い得だったと正当化します。これこそが購入後の正当化という、買い物などでまずい決断をした後に気分を良くさせる一種の心理メカニズムです。

 買主のストックホルム症候群とも呼ばれ、特に高価な買い物をしてしまった後に無意識のうちにそれを正当化しようとします。社会心理学者によれば、一貫性を貫き、認知的な不協和音を避けようとする心理的欲求に起因するそうです。


5. 蓋然性(がいぜんせい)無視


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 車のドライブに恐れを抱く人は少ないのですが、飛行機恐怖症の人は結構います。空を飛ぶことは非常に不自然で危険な行為に思えますが、実際には交通事故で死ぬ確率は、飛行機が墜落して死ぬ確率よりもはるかに高いわけです。統計的には、交通事故に遭う確率は84回に1回であるのに対して、飛行機墜落事故に遭う確率は5,000回に1回です。にもかかわらず、人間の脳はこの明白な理屈が分かりません。同様にして、階段からの転落や食中毒など蓋然性の高い事故よりも、テロに巻き込まれることを恐れます。

 社会心理学者キャス・サンスティーンはこれを蓋然性の無視と呼びました。人間はリスク感覚はしばしば正確ではなく、比較的無害な行為のリスクを過大評価し、より危険なものを過少評価します。


6. 観測選択バイアス

 それまで気づかなかった物事に気づくと、その頻度が増加したと思い込んでしまう効果のことです。その格好の例が、新車を買った後で、同じ車種を色々なところで見かけるようなるケースです。

 妊娠すると、周囲に妊婦が大勢いることに気がつき出すのも同じです。私たちは心で選択した物事に意識を向けるようにできています。問題は、大抵の人がこのバイアスに気がついておらず、その物事が増えたのだと勘違いすることです。ある出来事が偶然のはずがないと思わせるのも、この認知バイアスのせいです。


7. 現状維持バイアス

 人間は変化を恐れる傾向にあります。こうして、なるべく変化が少なそうな現状を維持できる選択をするようになります。言うまでもなく、これは経済から政治まで様々な場面において当てはまります。選挙ではこれまでと同じ党に投票し、レストランでは毎回同じものを注文するのもこのせいです。このバイアスの問題点は、別の選択肢が劣っており、状況を悪くすると思い込ませることです。「壊れてないものを直すな」という諺にすべてが要約されています。


8. 負バイアス


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 人は悪いニュースにばかり目がいく傾向があります。また、悪いニュースをやたらと信用し、良いニュースは疑いの目で見ます。進化的には、悪いニュースに注目する方が適応的だったのでしょう。しかし今日では本当に良いニュースを無視して、悪いニュースの中で生活している恐れがあります。

 例えば、心理学者スティーブン・ピンカーは、犯罪、暴力、戦争などの不正義は確実に減少しているのに、人々は世の中が悪くなっていると考えていると論じています。これこそが負バイアスの典型例です。


9. バンドワゴン効果

 意識されることはあまりありませんが、人は右へならえが大好きです。世の中にあることが流行ると、個人の脳は機能を停止して一種の集合意識状態になり、それに追従しようとします。これは必ずしも大きな集団である必要はなく、家族や職場の同僚のような小さな集団でも起こり得ます。

 バンドワゴン効果とは、集団の中に普及した行動や社会規範、あるいはミームの原因となる効果です。これに証拠や動機などは関係ありません。世論調査が個人の意見を操作するものとして批判されるのもこのためです。このバイアスは周囲に順応したいという欲求に根ざしています。


10. 投影バイアス

 人は常に心に囚われているため、しばしば意識や選好の外にあるものを予測することが困難になります。つまり、殆どの人間が自分と同じように考えると根拠もなく想定しがちです。これは投影バイアスあるいは偽の合意効果という、他人が自分と同じように考え、自分に同意するはずだと思い込むことの原因になります。

 これによって、自分がごく普通であると勘違いをし、ありもしない総意があるかのように振る舞うようになります。過激派グループが自分たち以外にも同じ意見の人間が大勢いると考えたり、ある人が選挙の当選者や試合の勝者の予測に自信過剰になるのも、これが原因です。


11. 現在バイアス


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 人間は未来の自分を想像することが本当に苦手で、行動や予測はその影響を受けています。大抵の人間は楽しいことは今すぐ味わい、嫌なことは後廻しにしたがります。貯金をするより今すぐ使いたがるのも同じ例です。それゆえに特に経済学者や医療関係者に注目される理論です。1998年の研究では、被験者に今後一週間の食事メニューを決めてもらうと74%がフルーツを選択しましたが、その日のメニューを決めてもらうと70%がチョコレートを選択しました。


12. アンカリング効果

 相対性の罠とも呼ばれるこのバイアスは、人が限定的な要素しか比較しない傾向を指します。典型的な例は、セール中の商品を買い物するとき、その値段の違いは気にしますが、絶対的な値段自体はあまり気にしないケースです。

 レストランがメニューに非常に高価な料理とより手頃に見える料理を載せておくのはこのためです。高価過ぎず、安過ぎもない、中間の選択肢が良く選ばれる理由でもあります。

 というわけで、どんなに公明正大で偏見を持たずに判断しようとしても、脳にはなんらかのバイアスがかかっている事実を認める必要があります。いかに自分が理性的で理論的であると思っていても、実はそうでもないということを自身で理解する必要があるのかもしれません。

(原文:io9 The Future 翻訳:Karapaia)
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