危険な抗生物質乱用が横行!

EUで死亡者急増

 2002年から5年間、フランスでは風邪がはやる冬場になると「抗生物質を無条件に飲んではダメ!」「抗生物質を処方されたら、医師に『本当に必要ですか?』と尋ねましょう」と訴える抗生物質の乱用を戒めるテレビCMが頻繁に流されていました。

 スポンサーはフランスの社会保険省で、日本の厚生労働省に相当します。「麻薬をやめよう!」というCMなら世界各国で何度も流れたことがありますが、抗生物質をターゲットにしたCMはこれが初めてです。


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 フランス政府がここまで踏み込んだのは、このまま抗生物質の乱用を放置すれば、将来抗生物質の効かない人が大量に出るだけでなく、新たな耐性菌の出現や院内感染の増加などで医療費が増大し、政府が莫大な負担を強いられるという危機感があったからです。

 フランスに限らず、EU全体で抗生物質が効かない耐性菌に感染して死亡する人は急増しており、その数は毎年2万5000人を超えています。そのため、これまでごくマイナーな死因だと思われてきた「耐性菌感染死」は一気に重大な社会問題になりました。EUは、その対策に15億ユーロ(約2000億円)の支出を余儀なくされています。


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 そのEUで、最も抗生物質の乱用が顕著だったのがフランスでした。風邪をちょっとひいただけで、誰もが当たり前のように抗生剤を欲しがり、子どもにも平気で飲ませていました。

 医師も軽い中耳炎から症状の重い肺炎まで何にでも抗生物質を使うため、フランスはずっと欧州最大の抗生物質消費国でした。そこで当時のシラク政権は草の根の意識改革から取り組む必要があるということで、テレビCMを使ったキャンペーンを始めました。

 目標は5年間で国全体の抗生物質の消費を25%減らすことでしたが、最終的に26.5%減らすことに成功しています。

 EUでは、長い間、家畜のエサに混ぜて使われていた抗生物質の使用も06年に禁止されました。使われていた抗生物質は、テトラサイクリン系、アミノグリコシド系、マクロライド系などで人間に使われているものと同じですから、家畜は耐性菌ができる温床になっていました。


抗生物質乱用続く日本

 翻って、日本の現状を見るとどうでしょうか。

 抗生物質の乱用は収まる気配を見せておらず、『アエラ』(朝日新聞出版/2014年10月27日号)が行った新潟県の小児科医を対象にした調査では、48%が子どもの風邪の治療に抗生物質を使っていると回答しています。

 町のクリニックに行けば、炎症の指標のひとつであるCRP(Cタンパク反応性)の数値がちょっと高いというだけで自動的に抗生物質が処方されています。手術後などに予防目的として1週間くらい少量の抗生物質を服用させることも、頻繁に行われています。これは無意味な投与で、耐性菌を生む大きな要因になっています。


食肉にも大量に使用

 日本では、家畜のエサに抗生物質を混ぜて豚、肉牛、ブロイラーを飼育することが禁止されていません。EUだけでなく、米国も家畜に対する抗生物質の日常的な使用を禁止する動きが出ているので、数年後には抗生物質入りの飼料を家畜に与える国は、先進国では日本だけになるかもしれません。

 抗生物質をエサに混ぜるのは、病気予防という目的もありますが、それ以上に大きいのは「成長促進」が狙いです。胃や腸から悪玉菌が減って栄養の吸収がよくなります。


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 主婦を中心に、抗生物質やホルモン剤を投与した家畜の肉に対して、とても神経質になっている人が多くいますが、そのような人のうちでも、自分自身が病気になった場合に抗生物質を飲んでいるケースを見かけます。まるで、人間用の内服薬と家畜に投与されている抗生物質をまったく別物と考えているようですが、家畜用に開発された抗生物質などありません。どちらの抗生物質も同じものです。

 日本では家畜に人間の2倍以上の抗生物質が使われており、多剤耐性菌を生む温床になっているのが現状です。

 多剤耐性菌の代表格はMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)ですが、EUの調査機関であるEARSS(抗菌性の抵抗監視システム)の調査によると、黄色ブドウ球菌の多剤耐性率はオランダ、スウェーデンが3%以下、ドイツが20 %以下、イタリア、ギリシャが30~40%、イギリスが40~50%、米国が50%、日本が50%以上という数字が出ています(EARSS『年次報告2008』)。


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黄色ブドウ球菌


 結核菌、肺炎球菌、大腸菌なども高い割合で耐性化しています。欧州では多剤耐性菌による死者は2万5000人以上確認されており、このうちの5000人は英国です。米国は2万3000人です。一方、日本では一部のメディアで約2万人との推計を報道していますが、正式発表はありません。

 毎年、老人施設などで繰り返し問題となる多剤耐性菌による死亡事例。本当に必要な時に細菌に対する効果を発揮させるためにも、抗生物質の安易な使用は避けたいものです。

(一般社団法人国際感食協会HPより)

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