iPS細胞で「人工血液」を大量生産!?

 世間を騒がせたSTAP細胞は、国際的にもその存在が否定されましたが、さまざまな細胞へと分化することができる万能細胞は他にもあり、研究が進められています。特に、京都大学の山中伸弥教授が作成に成功してノーベル賞を受賞した、iPS細胞の研究の進展は目覚ましく、臨床試験が始まっている研究もあります。


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iPS細胞を赤血球へ分化

 イギリスで頼もしい研究が大詰めを迎えています。海外メディア「Telegraph」などが伝えたところによると、iPS細胞から「人工血液」を作成し、実際に患者に輸血するという臨床試験の準備が始まったということです。

 エジンバラ大学のマーク・ターナー博士らの研究グループは、iPS細胞から赤血球を効率的に作成することができるようになったことで、2016年にも人体への「人工血液」の輸血を行う計画を立てています。

 ターナー博士らは、皮膚細胞や血液から作成したiPS細胞を、人体に似せた環境で1カ月間培養し、培養した細胞を赤血球へ分化させる研究を行っていました。これまでは、培養した細胞の一部しか赤血球へと分化しなかったのですが、この割合を50%ほどにまで効率化することに成功しました。作成された赤血球は遠心分離機によって他の細胞から分離し、2016年をめどに「サラセミア」という、正常な赤血球が作成できない病気の患者3人へ輸血する予定です。

 「似たような研究は他にもありますが、輸血できる品質と安全基準に達したのは今回が初めてです」と、取材に応じたターナー博士は語っています。この試験が成功すれば、人工赤血球輸血の重要な一歩となります。献血によらず赤血球の供給が行えるということになり、20年ほどで現在の献血に取って代わると考えられています。


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“鮮度”の高い血液を安定供給可能

 赤血球を人工的に作成するメリットは、第一に、献血によらずに赤血球が確保でき、安定した在庫を持つことができる点があります。他の血液型の人へも輸血できるO型の人から作成したiPS細胞で赤血球を大量に生産すれば、献血による赤血球がなくともやりくりできるようになります。

 また、感染症のリスクをなくすことができます。現在では献血の際にかなり厳密に感染症の検査ができますが、ウイルス感染直後にはどうしても感染を感知できない期間があり、完全に予防することはできません。その点「人工血液」であれば、感染症のリスクをなくせます。


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 さらに、現在よりも「生きのいい血液」をストックすることができるようになります。血液の成分には有効期間があり、例えば日本赤十字社では、赤血球の有効期間を21日間としています。通常の血液は、新旧の成分が混合して存在しているのに対し、「人工血液」は作成時期が一定なので、いつでも「生きのいい血液」を用意することができます。

 一刻も早く実用化したいところですが、まだ生産のコストを下げるという課題が残っています。研究所で行われている規模での生産と、全ての輸血需要をまかなうほどの大量生産では規模が違います。「血液工場」を建て、生産コストを大幅に下げることができて初めて実用化したといえそうです。


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10年後には献血への依存度は劇的に低下

 それでは、赤血球の大量生産ができれば献血は本当に必要なくなるのでしょうか。実は、そういうことでもありません。献血をされる方はご存知かと思いますが、献血では赤血球の他に、血小板や血漿を採取しています。赤血球の供給が人工的にできても、血小板や血漿の供給ができなければ、現在の輸血需要をカバーできません。

 しかし、それも近いうちに解決されるかもしれません。血小板については、今年の2月に理化学研究所が大量に供給する方法を開発したと発表しました。こちらも来年あたりから臨床試験を始める計画で、10年後の実用化を目指しているようです。あとは血漿成分を安定的に大量供給出来る見通しが立てば、献血に依存している部分をかなり減らすことができるかもしれません。

(Tocana、TABILABO、DailyMail、Telegraphより
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