フォルクスワーゲン事件で問題の「NOx」がもたらす健康被害

 独フォルクスワーゲン(VW)が、米国で販売したディーゼル車の一部に違法なプログラムソフトを用いて排ガス規制を逃れていたという問題が、世界中のメディアで取り上げられました。同社の傘下にあるアウディの車種を含めると、全世界で販売された排ガス不正車はおよそ1100万台に上るとされます。


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 今回のVWの一件がこれだけ問題視されているのは、世界的な自動車メーカーが不正行為に手を染めていたという事実もさることながら、自動車の排ガスに含まれる酸化窒素化合物「NOx」という化学物質が大気汚染や健康被害をもたらすため、世界中で排出を厳しく規制する方向に進んでいるからです。

 化学物質の怖さは、気管支の奥にまで入り込む粒子サイズです。主に化石燃焼が高温で燃焼する際に出る一酸化窒素(NO)が、大気中の酸素(O)によって酸化することで二酸化窒素(NO2)に変わります。これら主な窒素酸化物などを総称して「NOx」と呼びます。工場の排煙、自動車の排ガスなどに含まれ、大気汚染や健康被害の原因物質にもなることから、世界中で排出を厳しく規制する方向で進んでいます。


NOxは肺胞の奥まで届き、ぜん息やCOPDを誘発する恐れがある

 肺の末梢まで伸びる気管支は、線毛と気道液とで覆われた粘膜で守られていますが、小さな異物やウイルス、細菌などが入ると、それを捕えて体外に排出する機能を備えています。こうした生理機能が咳や痰(たん)などです。しかし、線毛は喉から気管までの『上気道』に比べて、気管支から細気管支を経て肺胞にまで伸びる『下気道』の方が少なく、つまり、吸入する物質が小さくなるほど肺胞の奥にまで潜りこみを自力で取り除くことが難しくなるわけです。

 春先に飛ぶ杉花粉を例にとると、そのサイズは20~40ミクロン(1ミクロンは1/1000mm)で、気管支に入り込もうとすると「くしゃみ」「鼻水」「咳」などによって、ほとんどが体外に排出されます。対して、大気中に浮遊するNOxなどの微小粒子状物質は、2.5ミクロン以下であるために、気管支の奥深くに入り込んでしまいます。

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 肺の末梢に有害な化学物質が蓄積されていくと、やがて炎症を起こし、気管支ぜんそくや、肺胞を破壊する重篤な疾患である慢性閉塞性肺疾患(COPD)の原因にもなりかねません。実際、京都で行われた学童1万人を対象にした4年間の追跡調査では、ぜん息の発症率と交通による大気汚染での暴露量とに関連が見られたとの報告が発表されています。呼吸器系に疾患を持つ患者には、主要幹線道路の近くに住居を構えているケースも少なくありません。


NOxは「マスク」「空気清浄器」「フローリング生活」で防ぐ

 では、こうした目に見えない化学物資を避けるために、我々は日常からどんな対策を講じればいいのでしょうか。

 花粉症対策と基本的には同じですが、屋外でできることは、やはりマスクをつけて直接の吸引を極力避けること。特に大気が黄色く霞んでいる日や、光化学スモッグなどが出ているような場合に着用するようにします。こうした心がけは排ガスの多い幹線道路や工場地帯にいるときも有効です。一方、室内では空気清浄器を活用し、できれば床面はフローリングにして、化学物質を生活用品などに付着させない方法も有効です。

 世界に冠たる自動車メーカーのフォルクスワーゲンが起こした今回の不正。規制を逃れた車による健康被害が生じれば、もはや企業としてのコンプライアンス問題にとどまりません。ぜん息はQOL(生活の質)に大きな影響を与える重大な病気で、COPDに至っては、現在の医学では治療が難しい疾患です。

(Nikkei Goodayより)
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