何を食べてもスナック菓子の味に感じる恐るべき味覚障害「ドリトー効果」とは?

 レストランでご飯を食べると提供された料理が全てタコスの味に感じられたり、時にはシーザーサラダ味やメープルシロップ味にしか感じられなくなるという奇怪な現象をThe New York Timesの記者が経験しました。記者のTamar Adler氏は長らくの間、一体なぜ味覚がおかしくなってしまったのか分からなかったのですが、栄養学の専門家であるMark Schatzker氏の著書「The Dorito Effect」に書かれた「ドリトー効果」という味覚障害ということが判明したそうです。



  過去70年間にわたって、アメリカ国内の農業や畜産業では「収穫量の多さ」「病虫害に対する抵抗力」「見た目」が重視されていて、「味」は二の次とされてきました。例えば1940年代に行われていた鶏肉の品評会「Chicken of Today」では、「肉の大きさの均一性」「胸肉のボリューム」「卵のふ化率」「エサの効率の良さ」が評価の対象であり、「肉の味」は重要ではありませんでした。2013年の統計によると、もしも人間がChicken of Todayに出品する鶏肉のように育てられたとしたら「体重3kgの赤ちゃんがたった2カ月で300kgに成長する」と例えられるほど、ニワトリたちは急激に体重が増えるように飼育されていました。



 このように味を犠牲にした安い肉が、1940年代以降にスーパーマーケットで大量に販売されはじめます。さらに、トマトやイチゴ、ブロッコリー、小麦、とうもろこしなどの農作物も同じように「大きさ」「成長の早さ」「抵抗力」「長持ちするかどうか」「見た目」に重点を置いて栽培されてきました。Schatzker氏は著書の中で「食べ物の味は栄養あってこそのものです」と語っていて、例えば魚介類に含まれるオメガ-3脂肪酸や、トマトに含まれる必須アミノ酸などの栄養成分には特有の味があります。人間は食べ物を摂取する際に、食べ物の味と、食べた後の体の変化を結びつけて記憶していくのですが、これらの記憶は消化器官にもフィードバックされることで、人々は必要な栄養を補給しています。



  1926年からシカゴの小児科医であるClara Davis氏が実施していた研究では、里子として育てられて子どもの頃から一般的な食事をとったことがない15人の子どもたちを対象に、「野菜や果物、肉、魚など34種類の食べ物の中から好きな物を好きなだけ食べてもらう」という実験を6年間にわたって行いました。子どもたちは次第に食べ物の味を覚えていき、体が無意識に味と栄養と結びつけることで自発的にバランスの良い食事をとれるようになったそうです。なお、一部の子どもは朝食にレバーとオレンジジュースを食べたり、くる病の治療で肝油を飲んでいた子どもが治療後も肝油を飲み続けるなど、一般的な食生活とは少し異なった食事をとっていたとのことです。

  食べ物の味と栄養を結びつけて記憶していくためには、自然な食べ物を自然に摂取する必要があります。つまり、合成香料を使えば味の薄い食べ物に風味を付けることはできますが、味と引き替えに、生の食べ物をそのまま食べて味と栄養を覚えるというメリットを失っているのです。生の味が薄まることと、人工香料を摂取することによって、生物的な食事の基本と食欲の変化が失われてしまいます。例えばトルティーヤチップスにスパイスなどの風味付けをしたドリトスチップスを食べることで、素材本来の味が分からなくなり、味覚障害が起こってしまうようです。また、シーザードレッシングをかけたラップサラダや、メープルシロップ味のスペアリブなども、野菜や肉の味を薄めてしまっていると言えます。



 「ドリトー効果」の対処法として、Schatzker氏は著書の中で「人工香料を使わない自然な食べ物のみの食生活に戻るのではなく、農業や畜産業の方法を見直すこと」を提案しています。Schatzker氏は、「害虫対策の農薬を減らしたり、賞味期限を伸ばしたりするのは必須ではない」として、肉や野菜の本来の味に重点を置いた飼育・栽培方法を提唱しています。

(GigaZine、The New Yorke Timesより)
スポンサーサイト
コメント
コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する