注目される食材“大麦”の知られざるパワーとは?

 最近の健康に関する2大キーワードといえるのが「血糖値」と「腸内細菌」です。血糖値は砂糖や精製された穀物をたくさんとることで急上昇し、そのような食事を続けると、肥満やすでに患者数が950万人におよんでいる糖尿病になるリスクが高まります。

 私たちの体を構成する細胞は約37兆個ですが、腸の中にいる腸内細菌はなんと100兆個以上で、この腸内細菌が、肥満や生活習慣病に大きくかかわっていることが明らかになり、注目が高まっています。私たちの体にいい影響を及ぼす腸内細菌を元気にするには、そのエサとなる食物繊維の摂取が重要になります。


大麦.jpg


 このように「血糖値」と「腸内細菌」という旬な健康キーワードに共通してかかわっているのが食物繊維で、中でも、野菜や玄米よりも食物繊維が多いことで知られる食材として「大麦」に関心が集まり、白米に大麦を混ぜて炊く「麦ごはん」の人気も高まっているといいます。


大麦の水溶性食物繊維が食後の血糖値上昇を抑える

 一方で、日本人の食物繊維の摂取量はずっと減少傾向にあり、「日本人の食事摂取基準(2015年版)」によると、1日にとるべき食物繊維は成人男性が20グラム、成人女性が18グラムですが、「平成25年国民健康・栄養調査」によると平均14.2グラムしかとれていません。大麦の水溶性食物繊維は食後の血糖値上昇を抑えます。

食物繊維不足の原因は、穀物繊維の摂取減


 白米は食物繊維が少ないのに、それでも主食として量を食べるので、日本人にとって最大の食物繊維の供給源になっています。もっと穀物から食物繊維をとろうとしたとき、第一選択肢は大麦です。白米は100グラム中に食物繊維0.5グラムしか含まないのに対し、大麦100グラム中には9.6グラムも含まれています。


身近な食材の食物繊維量(100g中)


 穀物からしっかり食物繊維をとると、糖尿病や脂質異常症など生活習慣病の予防に役立つことが分かっています。17の研究を統合解析した結果、穀物からの摂取量を多くしたほうが糖尿病のリスクが低く、野菜からの摂取量とは関連が見られなかったという報告もあります。

 糖尿病や脂質異常症といった生活習慣病の予防作用が食物繊維を多く含んだ穀物で顕著に認められる理由は、精製されていない穀物の性質によるところが大きく、精製前の穀物では、でんぷん(糖質)と食物繊維が一緒になっているため、糖質の吸収を抑え、血糖値を上げにくくします。一方、精製すると食物繊維が取り除かれてしまうので、白米や小麦粉を食べると血糖値が高くなります。

糖尿病のリスクを下げるのは野菜よりも穀物の繊維



 食物繊維には、水に溶けない不溶性食物繊維と、水溶性の食物繊維の2種類があります。不溶性食物繊維は便の量を増やし、便通を良くする機能がありますが、多くの効能が実証されているのは水溶性のほうです。糖質や脂質の吸収を抑えるとともに、腸内細菌のエサになって腸内環境を整えることが分かっています。

 野菜や玄米などに多いのは不溶性食物繊維で、水溶性食物繊維は少ないのですが、大麦100グラム中に含まれる9.6グラムの食物繊維のうち、実に6.0グラムが機能性の高い水溶性食物繊維です。

 今の日本人は水溶性食物繊維を野菜や果物から1日3グラムくらいしかとっていませんが、6グラムは必要です。大麦を50グラム食べれば3グラムプラスできます。

 大麦の水溶性食物繊維の大部分はβ‐グルカンで、オートミールに使われるオート麦や黒パンに使われるライ麦もβ‐グルカンは多いですが、日本人の食生活にはあまりなじみがありません。

 β‐グルカンには「食後の血糖値上昇を抑える」「コレステロール値を下げる」「心疾患のリスクを下げる」などの機能性表記が欧米で認められています。日本で行われた研究でも、白米に大麦を混ぜる割合が高いほど、食後血糖値が抑えられることが分かりました。


世界が認める大麦パワー

thumb_400_05_px400.jpg

ESFA:欧州食品安全機関


 「糖質制限食」のポイントは糖質を減らして食後の血糖値を上げないことでが、極端な糖質制限食は危ないといいます。

 人間が体を動かすためにはブドウ糖が必要です。極端な糖質制限食でご飯を抜くと、筋肉を分解してアミノ酸からブドウ糖が作られることになります。筋肉が減ると基礎代謝が落ちて、より太りやすくなります。糖質がないと脂肪も燃えません。

 また、糖質は乳酸菌やビフィズス菌といった、腸内のいわゆる善玉菌のエサになります。砂糖や果糖など甘いものは大腸まで届かず吸収されてしまうのでとりすぎないほうがいいのですが、食物繊維を含んだ穀物は必要です。


内臓脂肪を減らすメカニズムとは?

 大腸に入ったら便の一部となって出ていく不溶性食物繊維に対して、β‐グルカンのような水に溶ける食物繊維は腸内の善玉菌のエサになり、発酵を受けることで酪酸、酢酸、プロピオン酸といった短鎖脂肪酸が作られます。

 この短鎖脂肪酸が重要で、まず酸の刺激で腸の働きが良くなります。同じく酸が増えることで、悪玉菌が増えにくくなります。腸から出て血糖値のコントロールに役立つ消化管ホルモンGLP-1の分泌をうながす効果もあり、さらに、腸自体の防御機能も高めてくれます。

 最近、便秘がちの女性の間で増えている、非アルコール性脂肪肝が原因の一つは悪玉菌が作るLPSという毒素で、腸内で作られたLPSなどの毒素は腸のバリアを破壊し、体の中に入ることで悪さをします。β‐グルカンは腸で悪玉菌が増えるのを抑えるとともに、発酵することでできる短鎖脂肪酸が腸のバリア機能を高めて、これらの毒素を腸の外に出さないようにしてくれます。

 大麦はダイエット効果も確認されています。大麦に含まれるβ-グルカンは、血糖値を上げないので太りにくくなるだけでなく、消化管ホルモンGLP-1の分泌をうながすことで内臓脂肪も減らしてくれます。



大腸の奥まで届くレジスタントスターチ

 同じ白米のでんぷんでも、生米や冷えたごはんのでんぷんは消化されにくい形になっています。これをレジスタントスターチと呼びますが、オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)が開発したバーリーマックスという大麦は、加熱調理した後でもこのレジスタントスターチが多く含まれています。

 レジスタントスターチは水に溶けないにもかかわらず腸内細菌のエサになるという他の不溶性食物繊維とは異なる性質を持っています。レジスタントスターチはゆっくりとエサに利用されるため食べ尽くされずに、腸の上のほうにいる菌もエサにするβ‐グルカン以上に腸の奥まで届きます。


IMG_7027.jpg

「バーリーマックス」のシリアル


 日本では大腸がんが急増していますが、その原因は食生活の欧米化によって脂肪の摂取量が増えたためといわれています。脂肪をとりすぎると、吸収するために胆のうから腸に胆汁酸が大量に分泌され、大腸まで達した胆汁酸が悪玉菌の作用によってできる物質が大腸がんのリスクを高めます。β‐グルカンやレジスタントスターチは大腸に入り込んだ胆汁酸を体外に排出してくれます。大腸がんは直腸やS状結腸など大腸の奥のほうで発生することが多く、その意味でも、腸の奥まで届いてブロックするレジスタントスターチの意義は大きといいます。

 血糖値の上昇を抑え、内臓脂肪を減らし、腸内環境を整えてくれるという三拍子そろった機能性を持つ大麦は、まさに現代人にうってつけの食材です。大量に摂ろうと思うなら、主食にできる麦ごはんが最適です。5対5の麦ごはんに抵抗がある人は、とりあえず白米7対大麦3くらいから始めてみましょう。

(Nkkei Trendyより)
スポンサーサイト
コメント
コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する