ああ神よ、心の痛手いと多く(BWV58)

 今日は新年後の主日ですが、このカンタータは1727.1.5ライプツィヒで初演されました。新年後の主日は新年(1月1日)と公現祭(1月6日)に挟まれた日曜日なので、毎年あるわけではありません。BACのライプツィヒ時代では1724年以来2度目でした。
 

 

 福音書の章句は、ヨセフ一家のエジプトへの逃避行とヘロデの幼児殺害を語っています。この曲では福音書の章句に言及しつつ、ペテロの手紙の主題「キリスト教徒としての試練を喜べ」を扱っています。悩む「われ」に救いの道が示され、世の迫害と患難の中で、「われ」はすでに満ち足りて、神の指し示す天国に至る喜びを歌っています。この作品は、ソプラノとバスの対話で、合唱は用いられていません。


 鈴木雅明指揮、バッハ・コレギウム・ジャパン、キャロリン・サンプソン(S)、ペーター・コーイ(B)の演奏でお聴きください。




ああ神よ、心の痛手いと多く(BWV58)


1.コラール(バス)とアリア(ソプラノ)

  Ach Gott, wie manches Herzeleid

  ああ神よ、なんと多くの心の悩みが

Nur Geduld, Geduld, mein Herze,

ただ耐え忍びなさい、わが心よ、

  Begegnet mir zu dieser Zeit!

  今この時期のわたしを襲うことか。

Es ist eine böse Zeit!

これは悪い時なのです。

  Der schmale Weg ist Trübsals voll,

  細い道は悲しみに満ちている、

Doch der Gang zur Seligkeit

しかし至福への歩みは

  Den ich zum Himmel wandern soll.

  わたしが天国をめざして辿るその道は。

Führt zur Freude nach dem Schmerze.

苦しみの後の喜びへと通じている。

Nur Geduld, Geduld, mein Herze,

ただ耐え忍びなさい、わが心よ、

Es ist eine böse Zeit!

これは悪い時なのです。

2.レチタティーヴォ(バス)

Verfolgt dich gleich die arge Welt,

たとえよこしまなこの世はあなたを迫害しても

So hast du dennoch Gott zum Freunde,

それでもお前は神を友としてもっている、

Der wider deine Feinde

神はあなたの敵に逆らい

Dir stets den Rücken hält.

常にあなたの背後を支える。

Und wenn der wütende Herodes

そして怒れるヘロデが

Das Urteil eines schmähen Todes

悲惨な死の判決を

Gleich über unsern Heiland fällt,

我らの救い主に下しても、

So kommt ein Engel in der Nacht,

一人の天使が夜やってきて、

Der lässet Joseph träumen,

ヨゼフに夢で告げるのだ、

Dass er dem Würger soll entfliehen

殺人者から逃れて

Und nach Ägypten ziehen.

エジプトに行けと。

Gott hat ein Wort, das dich vertrauend macht.

神は、あなたを信じさせる言葉を持たれている。

Er spricht: Wenn Berg und Hügel niedersinken,

神は言われる。たとえ山や丘が沈み、

Wenn dich die Flut des Wassers will ertrinken,

大水があなたを呑み込もうとしても、

So will ich dich doch nicht verlassen noch versäumen.

わたしはけっしてあなたから離れず、

けっしてあなたを置き去りにはしないと。

3.アリア(ソプラノ)

Ich bin vergnügt in meinem Leiden,

わたしは苦難にあっても楽しんでいる、

Denn Gott ist meine Zuversicht.

神はわたしの避けどころだから。

   Ich habe sichern Brief und Siegel,

  わたしは確かな手紙と封印を手にしている、

  Und dieses ist der feste Riegel,

  そしてこれこそは.堅いかんぬき、

   Den bricht die Hölle selber nicht.

  地獄さえもそれを破ることがない。

4.レチタティーヴォ(ソプラノ)

Kann es die Welt nicht lassen,

この世がわたしを、

Mich zu verfolgen und zu hassen,

迫害し憎むことをやめないなら、

So weist mir Gottes Hand

神の御手はわたしに

Ein andres Land.

別の国を示してくださる。

Ach! könnt es heute noch geschehen,

ああ、今日にでも実現してほしい、

Dass ich mein Eden möchte sehen!

エデンの園をこの目で見ることが。

5.コラール(ソプラノ)とアリア(バス)

  Ich hab für mir ein schwere Reis

  わたしには辛い旅路が待っている

Nur getrost, getrost, ihr Herzen,

ただ安らかに、心のともがらよ

  Zu dir ins Himmels Paradeis,

  天のパラダイスのあなたのもとヘ

Hier ist Angst, dort Herrlichkeit!

ここには不安、かの地には栄光。

  Da ist mein rechtes Vaterland,

  そこはわたしの真の祖国

Und die Freude jener Zeit

そして約束の時の喜びは

  Daran du dein Blut hast gewandt.

  そのためにあなたは血であがなわれた。

Überwieget alle Schmerzen.

すべての苦痛にまさるもの。

Nur getrost, getrost, ihr Herzen,

ただ安らかに、安らかに、心のともがらよ、

Hier ist Angst, dort Herrlichkeit!

ここには不安、かの地には栄光。

                対訳:樋口隆一


福音書マタイ 2章 13-23

 占星術の学者たちが帰っていくと、主の天使が夢でヨセフに現れて言った。

「起きて、子供とその母親を連れて、エジプトに逃げ、わたしが告げるまで、そこにとどまっていなさい。ヘロデが、この子を探し出して殺そうとしている。」

 ヨセフは起きて、夜のうちに幼子とその母を連れてエジプトへ去り、ヘロデが死ぬまでそこにいた。それは、「わたしは、エジプトからわたしの子を呼び出した」と、主が預言者を通して言われていたことが実現するためであった。

 さて、ヘロデは占星術の学者たちにだまされたと知って、大いに怒った。そして、人を送り、学者たちに確かめておいた時期に基づいて、ベツレヘムとその周辺一帯にいた二歳以下の男の子を、一人残らず殺させた。こうして、預言者エレミヤを通して言われていたことが実現した。

「ラマで声が聞こえた。激しく嘆き悲しむ声だ。ラケルは子供たちのことで泣き、

慰めてもらおうともしない、子供たちがもういないから。」

 ヘロデが死ぬと、主の天使がエジプトにいるヨセフに夢で現れて、言った。「起きて、子供とその母親を連れ、イスラエルの地に行きなさい。この子の命をねらっていた者どもは、死んでしまった。」そこで、ヨセフは起きて、幼子とその母親を連れて、イスラエルの地に帰って来た。

 しかし、アルケラオが父ヘロデの跡を継いでユダヤを支配していると聞き、そこに行くことを恐れた。ところが、夢でお告げがあったので、ガリラヤ地方に引きこもり、ナザレという町に行って住んだ。「彼はナザレの人と呼ばれる」と、預言者たちを通して言われていたことが実現するためであった。

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